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【プレスリリース】 更に求められる機関投資家のエンゲージメント 三井物産の新規ガス開発や石炭火力へのアンモニア混焼導入は1.5度と整合しない

【プレスリリース】
更に求められる機関投資家のエンゲージメント
三井物産の新規ガス開発や石炭火力へのアンモニア混焼導入は1.5度と整合しない

国際環境NGO FoE Japan
気候ネットワーク
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
メコン・ウォッチ
国際環境NGO 350.org Japan

環境NGO5団体は、三井物産株式会社(以下、三井物産)の主要株主38金融機関に、同社がパリ協定とネットゼロ目標にコミットしているにも関わらず、これと整合しない、液化天然ガス(LNG)やガス開発事業などの新規化石燃料ガス事業、ならびに石炭火力発電所へのアンモニア混焼導入を進めていることから、これらを見直すようエンゲージメントを求める要請書(※1)を8月30日に送付しました。10月14日までに7社から回答があり、うち2社はエンゲージメントについて回答を控えるというものでしたが、残り5社はエンゲージメントを行った、あるいは行う、との回答でした。

寄せられた回答の中には、確実な目標設定と化石燃料依存をどう減らすか実行プランを開示するようエンゲージメントをしているという趣旨のものもありました。

三井物産は社の方針(※2)として、新規油田・ガス田の開発を排除する、あるいは何らかの形で制限する方針を策定しておらず、ベトナム(ブロックBガス田-オモン・ガス火力)およびモザンビークで新規ガス事業の開発を進めようとしています。また、インドネシアで、ウダバリ・ガス田の新規開発とボルワタ・ガス田の増産を計画しており、タングーLNG事業を拡大する予定です(※3)。国際エネルギー機関(IEA)が示した経路(ロードマップ)では、2050年までのネットゼロを達成するにあたって2021年以降の新規の石油・ガス田開発は不要とされています(※4)。三井物産が進める化石燃料ガスの新規事業は、この経路から完全に逸脱しています。

また、同社は、LNGプロジェクトの新規開発を排除、制限する方針を持たず、むしろLNG事業をビジネスチャンスと捉えているようです。オーストラリアではバロッサLNG施設の開発を、また、ロシアではアークティックLNG 2プロジェクトを進めています。IEAの経路では、現在(2021年時点で)建設中または計画段階にある多くのLNG液化設備は不要と記されています。

加えて、同社の方針では、スコープ3の排出量目標が販売した製品の使用には適用されていないため、石油・ガス製品の最終消費における排出を制限するものになっていません。IEAの経路に沿うならば、石油・ガスからの排出の総排出量は、2020から2030年の間に23%減少する(石油27%、ガス17%)状況にないといけません。

また三井物産は、発電所の閉鎖時期を後ろ倒しし、温室効果ガスの排出をロックインしてしまう間違った対策であるアンモニア混焼を、モロッコのサフィ石炭火力発電所において導入しようとしています。

三井物産は、気候変動を加速させるような事業を中止すべきです。​​IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新の報告書(※5)では、「既存および現在計画中の化石燃料インフラを追加的な削減措置なしに稼働可能年数にわたって利用した場合の将来のCO2累積排出量の予測値は、温暖化を(50%超の確率で)オーバーシュートなしで、または限定的なオーバーシュートありで1.5℃に抑えられるCO2累積純排出量を上回る。また、温暖化を(67%超の確率で)2℃に抑制するCO2累積純排出量とほぼ同じである」ことが明らかになりました。つまり、パリ協定で合意された目標である1.5℃以下に気温上昇を抑えるためには、企業は石炭火力発電所を含む既存のインフラを段階的に縮小することに加え、新規の化石燃料事業の拡大や探鉱を停止しなければならないということです。

私たちは引き続き、三井物産がパリ協定1.5℃目標と整合するよう求めるとともに、機関投資家が同社が抱える気候変動関連リスクを深刻に受け止め、三井物産に対しエンゲージメントを実施・強化するよう求めていきます。

注釈
  1. 以下ウェブサイトに送付先リストも掲載。
    日本語要請書 https://sekitan.jp/jbic/2022/08/31/5589
    英語要請書 https://sekitan.jp/jbic/en/2022/08/31/5042
  2. 三井物産「気候変動」https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/environment/climate_change/index.html
  3. 三井物産(2021年8月30日)インドネシア タングーLNGプロジェクト インドネシア政府機関によるCCUS事業を含む開発計画の承認について https://www.mitsui.com/jp/ja/topics/2021/1241846_12154.html
  4. IEA (2021), Net Zero by 2050 – A Roadmap for the Global Energy Sector,
    https://www.iea.org/reports/net-zero-by-2050
  5. IPCC (2022), Climate Change 2022 Mitigation of Climate Change,
    https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/downloads/report/IPCC_AR6_WGIII_SPM.pdf

本件に関する問い合わせ先

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝、tanabe[@]jacses.org