インドネシアの石炭火力発電事業
インドネシアは、東南アジアにおいて最大の人口(2018年時点で2億6,502 万人)を有するとともに、最大のエネルギー需要国となっている。
インドネシア国営電力会社(PLN)のデータによれば、2018年10月時点の発電設備容量はインドネシア全体で56,509.53 MWで、そのうち石炭火力発電所は約47%を占めている(表1)(純設備容量は51,185.88 MWで、石炭火力の比率は48 %)。【1】
年 | 単位 | 石炭 | ガス | 石油 | 水力(小水力含む) | 地熱 | バイオマス | 太陽光 | その他の再エネ | 合計 |
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2018 | MW | 26,410.70 | 16,424.41 | 6,657.67 | 4,938.64 | 1,814.30 | 167.54 | 25.19 | 71.07 | 56,509.53 |
% | 46.74 | 29.06 | 11.78 | 8.74 | 3.21 | 0.30 | 0.04 | 0.13 | 100 |
現ジョコ・ウィドド大統領は、2015 年から2019 年までに35 GWの発電設備を新たに建設する電力計画を進めてきた。しかし、エネルギー・鉱物資源省(MEMR)の電力総局長によれば、2018年12月時点で、35 GW計画のうち商業運転に至ったのは2,899 MW(8 %)にとどまっており、同計画の完了は2024年と見込んでいるとの発表がなされている。【2】同35 GW計画においても石炭火力が占める割合は52.3 %(18,739 MW)と最大になっている。【3】
PLNのインドネシア電力供給事業計画(RUPTL)2019-2028によれば、電力需要の伸び率を6.42 %と予測し、10年間で56,395 MWの設備容量の増設が計画されている。その内訳は、以下のとおり、やはり、石炭火力が最大となっている。
- 石炭火力27,063 MW(48 %。山元5,690 MWを含む)
- ガス12,416 MW(22 %)
- 地熱4,607 MW(8 %)
- 水力(小水力含む)9,543 MW(17 %)
- 石油201 MW(0.4 %)
- 再生可能エネルギー2,564 MW(5 %)
こうした増設により、2028年の電源構成は、石炭54.4 %、再生可能エネルギー23.2%、ガス22.0 %、石油0.4 %を目指すとされており【1】、国内で調達できる石炭への依存度は依然高く設定されたままである。(注:RUPTLにおけるこの再生可能エネルギーの数値には、本来は再生可能エネルギーに含まれるべきでない大型水力が含まれている。)
ジャワ‐バリ系統の電力開発状況
電力供給事業計画(RUPTL 2019-2028)において開発が計画されている56,395 MWのうち、約46 %に当たる25,902 MWはジャワ‐バリ系統での計画で、そのうち約54 %(14,046 MW)は石炭火力の新設計画である。【1】
しかし、ジャワ‐バリ系統は近年、その電力供給予備率が30 %前後と電力供給の過剰状態が指摘されてきた。2018年の実績値をみても、純ピーク需要が27,070 MWであるのに対し、純設備容量は34,519 MWであり、供給予備率は28%となっている。【1】
また、RUPTL(2019-2028)の数値を基に、ジャワ‐バリ系統における2019~2028年の電力供給予備率を計算すると、26~45 %と電力供給の過剰状態は解消されないままとなっている(表2)。【1】
年 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 |
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純需要ピーク(MW) | 28,291 | 29,852 | 31,541 | 33,397 | 35,236 | 37,086 | 38,981 | 40,951 | 43,194 | 45,661 |
純設備容量(MW) | 35,748 | 42,126 | 43,585 | 46,487 | 49,559 | 52,910 | 56,494 | 57,494 | 58,154 | 59,154 |
供給予備率(%) | 26.4 | 41.1 | 38.2 | 39.2 | 40.6 | 42.7 | 44.9 | 40.4 | 34.6 | 29.6 |
運転開始予定の日本が支援する石炭火力 | ロンタール4 | バタン | TJB 5, 6 | チレボン2 | インドラマユ |
日本が支援するジャワ-バリ電力系統での石炭火力発電事業
ジャワ‐バリ系統で計画されている新規の石炭火力発電所14,046 MWのうち、約44 %に当たる6,139 MW(5案件)【1】は国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、国際協力機構(JICA)といった日本の公的機関の支援を得て進められている(図1)。
表2で示したとおり、2019年にはロンタール石炭火力発電所4号機、2020年にはバタン石炭火力発電所、2021年にはタンジュンジャティB石炭火力発電所5、6号機、2022年にはチレボン石炭火力発電所2号機、そして、2026年にはインドラマユ石炭火力発電所が各々商業運転を開始する予定とされているが、電力の供給予備率を考慮した場合、これらの石炭火力発電所の必要性には疑問符が付く状況である。なお、各事業とも、気候変動対策の観点から国際的な批判を受けてきた他、バタン、チレボン、インドラマユでは、農業・漁業など生計手段への影響や健康被害を懸念する現地住民が強い反対の声をあげており、事業の進捗に遅延が見られる案件もある。
図1 ジャワ-バリ系統で日本が公的支援を続ける新規の石炭火力発電事業4案件(6,140 MW*)**
- * 図中4案件の各設備容量は、各事業の環境アセスメント文書に記載されている数値
- ** 本図では、バンテン州ロンタール石炭火力発電事業4号機(315 MW。住友商事がEPC契約をとり、JBICが輸出金融支援。)は記載していない。
参考資料
- 【1】インドネシア電力供給事業計画(RUPTL)2019-2028(インドネシア国営電力会社(PLN)。2019年2月)。表1は同計画のデータよりFoE Japan作成。
- 【2】https://www.rambuenergy.com/2019/01/indonesia-govt-now-expects-35-gw-project-fully-completed-in-2024/
- 【3】平成29年度海外炭開発支援事業 海外炭開発高度化等調査「インドネシアにおける長期電力計画の進捗と石炭輸出動向調査」(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構。2018 年3 月)