パリ協定締結以降、世界で脱石炭・脱炭素への動きが加速している中、日本は未だに国内外で石炭火力発電所の建設を含む化石燃料関連事業を推進しています。JBIC、JICAおよびNEXIといった公的機関、日本の金融機関および民間企業が投融資あるいは支援を行っている(検討中を含む)化石燃料関連は世界に点在しており、気候変動を加速させ、現地の環境破壊、農業・漁業など現地住民の生活手段への影響、健康被害など、さまざまな問題の原因となって、国際的に問題視されています。
日本政府は高効率石炭火力発電技術の輸出を主張していますが、実際に海外で建設される石炭火力発電所に最新の汚染対策技術が導入されることは少なく、多くの汚染物質が排出されています。環境影響評価等の関連文書が入手できた14件(JICA検討見込み1件、JBIC検討中1件を含む)について、二酸化硫黄、窒素酸化物、ばい塵に係る公害対策、排出濃度を調べ、同様の関連情報を入手できた日本国内の石炭火力発電所4件と比較したところ、JBIC等の支援案件の発電所における各排出濃度が国内の発電所のものよりも非常に高い傾向にあることが明らかとなっています。
石炭火力発電所の建設以外にも、ガス火力発電所の新規建設、パイプライン建設、採炭および石炭運搬に関連するインフラ整備など、脱炭素の妨げとなる数々の化石燃料関連事業に日本が関与しており、中には深刻な環境破壊や人権侵害を引き起こしている事業もあります。
以下に、個別の事業の概要やそれぞれが抱える問題についてファクトシートをまとめます。
石炭火力発電所事業
地域 | 国名 | 事業名 | 融資機関 | 設備容量 | ファクトシート 更新日付 |
---|---|---|---|---|---|
アジア | インド | クドゥギ | JBIC、民間銀行 | 2,400MW | 2015/7 |
ダリパリ | JBIC、民間銀行→JBIC融資検討を撤退 | 1,600MW | 2016/1 | ||
メジャ | JBIC | 1,260MW | 2014/3 | ||
インドネシア | インドラマユ | JICA→日本政府が支援中止を発表 | 1,000MW | 2020/05 | |
チレボン2 | JBIC、民間銀行 | 1,000MW | 2019/4 | ||
バタン | JBIC、民間銀行 | 2,000MW | 2020/8 | ||
マリナウ炭鉱 | JBIC、民間銀行 | - | 2019/9 | ||
バングラデシュ | マタバリ | JICA→マタバリ2については日本政府が支援中止を発表 | 1,200MW | 2020/8 | |
統合エネルギー・電力マスタープラン策定プロジェクト(IEPMP) | 国際協力機構(JICA) | 2023/5 | |||
ベトナム | ギソン2 | JBIC、民間銀行 | 1,200MW | 2018/11 | |
ハイフォン1 | JBIC、民間銀行 | 600MW | 2015/4 | ||
ハイフォン2 | JBIC、民間銀行 | 600MW | 2015/4 | ||
バンフォン1 | JBIC、民間銀行 | 1,320MW | 2018/11 | ||
ビンタン3 | 中国系銀行(報道) | 1,980MW | 2021/1 | ||
ビンタン4 | JBIC、民間銀行、韓国輸出入銀行 | 1200MW | 2017/6 | ||
ビンタン4拡張 | JBIC、民間銀行 | 600MW | 2017/6 | ||
ブンアン2 | JBIC、民間銀行 | 1,200MW | 2022/1 | ||
モンゴル | ウランバートル | JBIC | 463.5MW | 2016/9 | |
ミャンマー | アンディン | JBIC、民間銀行 | 1,280MW | 2016/6 | |
ガヨーカウン | JBIC、民間銀行 | 600MW | 2016/6 | ||
タラブウィン | 不明 | 2,500MW | 2016/6 | ||
アフリカ | ボツワナ | モルプレB | JBIC、韓国輸出入銀行、民間銀行 | 300MW | 2017/10 |
南アフリカ | タバメシ | South Africa Public Investment Corporationなど | 630MW | 2019/5 | |
ヨーロッパ | クロアチア | プロミンC | →建設計画中止 | 500MW | 2015/1 |
南アメリカ | チリ | コクラン | JBIC、民間銀行 | 472MW | 2019/12 |
参考
JBIC支援(予定)の海外の石炭火力発電所と日本の石炭火力発電所との環境対策技術比較(PDF)
石炭以外の化石燃料関連事業
地域 | 国名 | 事業名 | 融資機関 | 設備容量 | ファクトシート 更新日付 |
---|---|---|---|---|---|
オセアニア | オーストラリア | バロッサガス田開発事業 | JBIC、JERA 韓国輸出入銀行、韓国貿易保険公社 |
2022/01 | |
北米 | カナダ | LNGカナダプロジェクト | JBIC、 日本の民間銀行一行(協調融資) |
2022/02 | |
北米 | アメリカ | キャメロンLNG事業 | 日本側: 国際協力銀行(JBIC)、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、農林中央金庫、新生銀行、あおぞら銀行、信金中央金庫、千葉銀行、静岡銀行11行を含む民間金融機関との協調融資(2014年) | 2023/09 | |
北米 | アメリカ | Rio Grande LNG(LNG液化供給トレイン建設) | 1〜3トレイン:三菱UFJ銀行、みずほ銀行を含む民間金融機関 4〜5トレイン:三菱UFJ銀行(トレイン4) |
2024/04 | |
北米 | メキシコ | San Luis Potosi、Salamancaガス焚複合火力発電プロジェクト | JBIC、NEXI | 2024/01 | |
東南アジア | フィリピン | イリハンLNG輸入ターミナル事業 | 注:出資機関としての関与 大阪ガス、国際協力銀行(JBIC)、Asiya(クウェートの上場ファンド) |
2022/04 | |
東南アジア | バングラデシュ | MIDI統合開発計画策定プロジェクト | 援助手法:開発計画調査型技術協力事業 事業費:5.8億円(日本側) 環境社会配慮カテゴリ分類:A |
2023/12 | |
アフリカ | モザンビーク | モザンビーク・モザンビーク LNG | 援助手法:プロジェクトファイナンス 総事業費:200億ドル(日本からの公的支援50億ドル) 関係機関:JBIC, NEXI, JOGMEC+民間企業 |
2024/10 |