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ドイツの環境団体Urgewald 「脱石炭リスト2022」を発表

ドイツの環境NGOのウルゲバルト(Urgewald)と40のパートナー団体が、11月6日からエジプトで開催される国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の開催に先駆けて、10月6日に石炭事業に関与する企業のデータベース『Global Coal Exit List(以下、GCEL)』2022年版 を公開しました。

本リストは、石炭関連事業に関する世界でも最も包括的な公開データベースであり、一般炭のバリューチェーンに関わっている1,000を超える企業とそれらの子会社・関連会社のデータを示すものです。この調査によって明らかになった点を、Urgewaldのリリース文書より要約します。

  • GCEL掲載企業の46%が依然として新規の石炭事業を推進している
  • 一般炭の生産の37%増に相当する新規の炭鉱事業が計画されている
  • 脱石炭の目標年を明確にした企業はGCEL掲載企業の3%を下回っている

掲載企業の46%が依然として石炭関連事業を推進

昨年、グラスゴーで開催された国連気候サミットは、「排出削減を講じていない(unabated)石炭火力発電所のフェーズダウン(段階的な削減)に向けた取り組みを加速させる」という合意で終了しましたが、GCELに掲載されている企業の46%は依然として世界的な脱石炭の流れに逆行している状況です。掲載企業1,064社のうち、490社が新規の石炭火力発電所や炭鉱、あるいは石炭輸送インフラの開発に関わっているのです。

石炭火力発電事業

世界の石炭火力発電所の新規計画による発電容量は、476ギガワット(GW)に及びます。これらの計画が実現した場合、世界の石炭火力による発電容量は23%増加することになります。すべての石炭火力発電所計画に占める中国の関与の割合は61%に及んでおり、GCELにリストされた石炭火力発電所開発事業者の上位4社を中国企業が占めています(中国華能集団、国家能源集団/チャイナエナジー、中国大唐集団公司、中国華電集団公司の4社)。

炭鉱事業

炭鉱事業においては、2021年の一般炭の生産で世界トップの企業は中国の国家能源集団、次にインドの国営石炭生産会社Coal Indiaが続いています。GCEL掲載企業全体を見ると、現在の世界の一般炭生産量の37%以上に相当する年間25億トン(Mtpa)を超える新規の一般炭採掘プロジェクトが進められようとしており、こうしたプロジェクトの大部分は、中国 (967 Mtpa)、インド(811 Mtpa)、オーストラリア(287 Mtpa)、ロシア(144 Mtpa)、および南アフリカ(91 Mtpa)に点在しています。

フェーズアウト(段階的廃止)すべき既存石炭火力:2,067GW

現在、世界中には6,500以上の石炭火力発電所があり、その合計発電容量は2,067GWとなっています。1.5℃目標を達成できるかどうかは、これらの既設の石炭火力発電設備をどれだけ早くフェーズアウトできるかにかかっています。GCELに掲載されている1,064社のうち、これまでに脱石炭の目標年を発表しているのは56社(5.3%)のみ、さらに1.5℃目標に整合する目標年を発表しているのは27社(2.5%)のみです。IEAの2050年ネットゼロシナリオによれば、高所得国の石炭火力発電所は2030年までに、それ以外の国の石炭火力発電所も2040年までに廃止しなければなりません。イタリア、フランス、英国などの多くのOECD加盟国は脱石炭の目標年を定めていますが、発電容量の大きさで世界3位の米国(約218GW)は、フェーズアウトの目標年を定めていません。米国は、今から2030年までの間、少なくとも年平均で30GWの石炭火力を毎年廃止していく必要があります。そして日本も同様に早期の石炭火力の廃止が求められている状況です。

効果が限定的な技術に依存する日本

脱石炭が求められる中、日本の電力会社は、限られたタイムフレーム内に石炭火力発電所を閉鎖するのではなく、高コストで、現時点では実証されていない効果が限定的な技術に依存する「ゼロエミッション(排出ゼロ)火力発電」を推し進めています。日本最大の石炭火力発電事業者であるJERA(東京電力FPと中部電力による合弁会社)は、石炭とアンモニアの混焼を目指しています。アンモニアは燃焼時にCO2を排出しませんが、温室効果係数ではCO2の298倍となる亜酸化窒素(N2O:一酸化二窒素)を排出しますし、JERAがアンモニアの製造方法(ほとんどのアンモニア製造は化石燃料によって行われていること)について言及していないことも問題です。

また、日本で2番目に大きな電力事業者であるJ-Powerもアンモニア混焼の早期実用化に向けた体制の確立に取り組むとともに、水素を発電燃料とすることを模索しており、丸紅や住友商事といった日本の商社と、豪電力大手AGLエナジー、その他の日豪の企業と連携し、オーストラリアの褐炭から水素を製造し、日本に輸送してきて国内で利用する実証事業に参画しています。石炭から水素を製造すると、単純に石炭を日本の石炭火力発電所で燃焼した場合と同じ量の CO2 が発生するとの指摘もあり、削減効果が疑問視されています。

今回のデータには、多くの企業がいまだに石炭関連事業に関わっている現状が示されています。多くの企業が石炭関連事業を継続し、多くの金融機関がこうした企業への投資を制限する方針を整えないまま投資を続けているのが現状です。

GCEL2022掲載の日本企業TOP10(掲載されている石炭火力発電所の発電容量の大きなものから)

関連リンク

UrgewaldのMedia Briefing「Urgewald’s 2022 Global Coal Exit List: No Transition in Sight」
Global Coal Exit List 2022