プレスリリース: 【報告書公開】投資家の利害はパリ協定と敵対するものなのか

【報告書公開】投資家の利害はパリ協定と敵対するものなのか
-世界の新規石炭火力発電建設を進める120企業に対して
銀行融資の1位、2位に邦銀、機関投資家の2位にGPIFがランクイン-
Banks/Investors vs. the Paris Climate Agreement

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年12月11日、ドイツの環境NGOのウルゲバルト(Urgewald)と国際環境NGOのバンクトラック(Bank Track)を中心とした国際NGOのグループが、新規石炭火力発電への投融資を続けている銀行等を明らかにするレポートと、機関投資家を明らかにするレポートを発表しました。

これら2つのレポートは、11月に発表されたウンゲバルトのデータベース『Global Coal Exit List(脱石炭リスト)』に掲載された世界の新規石炭火力発電所の建設計画の3分の2を担っている企業120社への投融資を分析したものです。この120社には、日本企業として中部電力、中国電力、J-Power、関西電力、丸紅、東京電力が含まれています。うち最大の新規発電規模の計画(13,620MW)を持っているのが丸紅です。

2つの調査結果から、2014年1月から2017年9月までの期間に大手銀行等からは石炭関連企業120社に対して6300億USドルもの資金が流れ、機関投資家は同120社に対して1400億USドルもの投資をしていたことが見えてきました。この巨額の資金を元に、これら120社は世界の石炭火力発電所の多くに関与し、合計で550,000メガワット(MW)を超える発電規模の発電所を新たに建設しようとしているのです。

誰がいまだに石炭火力事業に投資しているのか?

銀行等

  • 2014年1月から2017年9月までの期間、大手銀行からは約6300億USドルの融資および引受が行われているが、この合計金額のうち68%が中国と日本の銀行より拠出されていた。パリ協定締結後も銀行からの資金供与は続いており、2年間で2750億ドルが120社に流れている。
  • 120社に投資(債券および株式保有)している上位20銀行等のうち17銀行を中国の銀行が占めている。
  • 融資額では1位にみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、2位に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がランクインしており、それぞれ115億USドル、102億USドルを融資している。
  • 石炭火力発電所建設への資金提供を続けている上位20銀行の中でも大半の割合を占めるのは、ING(オランダ)、Citi(アメリカ)、Societe Generale(フランス)、HSBC(香港)、Deutsche Bank(ドイツ)などの欧米系銀行である。しかも、2016年にパリ協定が発効した後も大手金融機関9社は石炭火力発電事業者への支援額を増やしている。

機関投資家

  • 1455の国際的な機関投資家が120社に対して、約1400億USドルもの投資を行っている。
  • 本レポートでリストされた上位7機関投資家による石炭関連企業120社への投資が、合計額の約3分の1を占めている。
  • 120社に対する世界最大の投資家はアメリカに本拠を置く世界最大の資産運用会社BlackRock(株式および債券保有額は115億USドル)で、2位に日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)(同70億USドル)が続く。他、アメリカやマレーシア、韓国などの投資信託会社などが名を連ねている。
  • 機関投資家を国別に見ると、1位は米国37%、2位は欧州と日本が並んで13%、3位はマレーシア9%、4位は中国7%、5位はインド6%となっている。

 

それぞれのレポートには、大手20の銀行等と100の機関投資家からの新規石炭火力発電に関与する120社へのお金の流れを分析してスコアを付けたリストが示されています。銀行等のリストには、日本の銀行も含まれており、みずほFGと三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)がD-、MUFGはFと野村ホールディングス(HD)がFと低い評価が示されています。なお、100機関投資家のリストにも日本の金融機関が含まれていますが、ここには債券及び株式の保有額が示されています。こちらのリストにはGPIF、みずほFG、MUFG、日本生命、三井住友トラストグループ、野村HD、明治安田生命、オリックス、三井住友FG、大和証券、高知信用金庫が含まれています。

脱石炭に向けた動き

欧米の銀行の中には、石炭火力発電事業に対する投融資を規制する動きが広がっており、今や国際的な銀行14行が新たな石炭火力発電所への直接的な融資は行わないと表明しています。そして、アクサ生命保険のようにウルゲバルトのデータベースを活用して新規石炭火力発電関連企業からの投資撤退方針を示した機関投資家も出てきました。これにより、丸紅やJ-Power等からの投資撤退が見込まれています。

「気候変動における石炭問題」あるいは「気候リスク情報の開示を求める投資家」などといった言葉が大手新聞社の見出しを飾ることが多くなっており、21兆ユーロを超える運用資産を有する「気候変動に関する機関投資家団体」(Institutional Investors Group on Climate Change; IIGCC)のような機関投資家の団体が、各国政府に対して低炭素経済への早期移行を加速するよう促し続けています。投資家は、気候変動がポートフォリオにおよぼすリスクを重視していますが、本来問うべきは、どのポートフォリオが気候に影響をおよぼすリスクを有しているかなのです。

パリ協定で定められた目標に到達できるかは、時間との戦いです。1.5℃の目標を範疇に置くのであれば、2020年までに世界の二酸化炭素(CO2)排出量を減少に転じさせ、続く10年で50%以上削減させなければなりません。そのためには現在稼働している石炭火力発電所(発電容量1,964,000MW以上)を早急に廃止していき、世界の石炭火力発電所からの排出を2025年までに少なくとも30%削減していなければならないのです。

● 出版情報

Published by urgewald
In cooperation with BankTrack, Les Amis de la Terre, Rainforest Action Network, Re:Common

● レポートへのリンク

Banks and investors jeopardising the Paris climate goals(リンク
Bank Trackレポート(銀行):Banks vs. the paris agreement Who’s still financing coal plant development? (リンク
Urgewaldレポート(機関投資家):Investors vs. the Paris Climate Agreement(リンク

● 問い合わせ先

田辺有輝(「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、プログラムコーディネーター)tanabe@jacses.org

プレスリリースのダウンロード

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