STOP 日本の化石燃料融資にNO!

フランス大手保険会社アクサが化石燃料からの投資撤退(ダイベストメント)の強化を表明~丸紅、住友商事、電源開発(J-Power)等が新たに投資撤退の対象に〜

12月12日、気候変動対策について話し合いを行う「ワン・プラネット・サミット」がパリで開催され、フランスの大手保険・金融グループのアクサが化石燃料へのダイベストメントの強化を表明しました。
フランス政府、国連、世界銀行が主催となって開いたこのサミットは、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の補完的な取り組みとして、パリ協定採択後の気候変動対策への資金提供をはじめ、持続可能な経済にむけた計画などを討議するものです。アクサは、以前より気候変動対応策として化石燃料へのダイベストメントなどに着手していましたが、今回、「Unsustainable business is un-investable and uninsurable business(持続不可能なビジネスは、投資するおよび保険をかける対象とすべきではない)」として方針を強化し、グリーン投資(地球に優しい投資)を拡大する一方で、石炭・オイルサンド関連からのダイベストメントの対象を広げるとともに、石炭・オイルサンド関連企業への保険サービスの引受に関する規制を強化することを発表しました。これにより、丸紅、住友商事、電源開発(J-Power)等が新たにダイベストメントの対象になりました。

グリーン投資

2020年までに、今までの投資の4倍にあたる120億ユーロを、グリーンインフラ、グリーンボンド、厳しい環境基準をクリアした不動産ならびに商業不動産などへの投資に振り分けます。このグリーン投資によって、4メガトンを超えるCO2排出抑制につながると試算しています。

石炭産業へのダイベストメントの拡大

アクサは、Ulgewaldのデータベース『Global Coal Exit List(脱石炭リスト)』の3つの基準に準じ、新たな石炭産業からのダイベストメントを以前の目標の約5倍となる24億ユーロに拡大することを決めました。
脱石炭リストにおける3つの基準は以下となっています。

  • 設備容量3GW以上の新規の石炭火力発電開発計画を進めている企業 :日本企業でこの基準に該当するのは、丸紅、住友商事、電源開発(J-Power)。
  • 発電容量の3割以上が石炭火力発電である電力会社または企業利益の3割以上が石炭由来である石炭採掘会社:日本の電力会社のうち、中国電力、九州電力、東北電力、四国電力、北陸電力、沖縄電力、北海道電力、神戸製鋼、宇部興産はこれに該当。
  • 年間2千万トン以上の石炭を産出している石炭採掘会社:当リストにおいてこれに該当する日本企業はなし。

企業利益の30-35%を石炭火力発電事業で賄っている電力会社であっても、健全なエネルギーシフト計画を持っている会社はダイベストメント対象から除くなど、多少の例外はあるものの、以前より厳しい基準が適用されることになります。

オイルサンドへのダイベストメント

オイルサンドも炭素集約度の非常に高いエネルギー原料である上、その生産において重大な人権問題を引き起こし、地域に深刻な環境汚染を引き起こす原因となるため、アクサは大規模なオイルサンド生産からのダイベストメントを行うことを決定しました。また、オイルサンドの産出量はパイプラインの開発に大きく依存しているため、オイルサンドパイプライン事業者からもダイベストメントを行うとしています。結果、オイルサンド生産業者13社およびパイプライン事業者3社からのダイベストメント規模は7億ユーロに達することになります。

保険/引受業務の制限

アクサは、石炭およびオイルサンドに関連する事業への保険サービスの提供を制限すると表明しています。これにより、新規の石炭事業(石炭火力発電所、炭鉱)の建設工事保険、および既存の石炭火力発電所や炭鉱の損害保険はカバーされないことになり、この引受方針によれば、既存の石炭火力発電所の性能を向上させるための改築・改修もダイベストメント対象に含むとしています。
今回の「ワン・プラネット・サミット」では、世界銀行もパリ協定の目標実現に向け、再生可能エネルギーの普及を促進すべく、石油と天然ガス事業への資金支援を2019年に打ち切る方針を表明しています。世銀も以前から石炭火力発電事業への支援の絞り込みを行っていましたが、今後は対象が化石燃料全体に拡大されることになります。
さらに、石炭火力発電所の全廃および新設の制限を目指すためにCOP23で発表された国際イニシアチブ「Powering Past Coal Alliance」が広がっています。このアライアンスには、COP23の時点で25の国や州政府が参加し、企業やNGOへも参加を呼び掛けていましたが、今回、企業約20社が参加を表明し、脱石炭に向けた取り組みが官民で加速していることが示されました。

アクサのダイベストメント対象拡大のアプローチは、エネルギー変換におけるパラダイム・シフトであり、石炭火力発電事業者として名を連ねる企業の多くがポートフォリオから外されることになるでしょう。アクサのダイベストメント方針が強化された影響力は大きく、他の金融機関がアクサに追随していくことが期待されます。

アクサのプレスリリース

AXA accelerates its commitment to fight climate change (link)
December 2017 A new climate ambition “Unsustainable business is un-investable and uninsurable business” (PDF)

参考

AXA Sets Milestone for Fossil Fuel Divestment(BankTrack
Analysis of AXA’s 12th December commitment on divestment and underwriting(英語PDF
仏保険大手アクサ 化石燃料からのダイベストメントを発表(日本語PDF