STOP 日本の化石燃料融資にNO!

「東京海上に対して化石燃料事業の保険引受を停止するようエンゲージメントを求める要請書」を金融機関50社に提出

東京海上ホールディングス株式会社の株主の皆様

東京海上に対して化石燃料事業の保険引受を停止するようエンゲージメントを求める要請書

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
Insure Our Future

6月27日、石炭・石油・ガスのエネルギー事業に保険サービスを提供している世界10大保険会社の一つである東京海上ホールディングス株式会社(以下、東京海上)の年次株主総会が開催されました。日本の環境NGOスタッフも株主として参加し、新規化石燃料事業の保険引受を停止するよう要望しました。しかし、同社経営陣からは、段階的に方針を強化していくとの回答のみで、気候危機が深刻化しているにもかかわらずスピード感と具体性に欠けたものでした。そこで、この度、東京海上の大株主である金融機関50社の皆様に、同社に対してパリ協定の長期目標と整合化を図り、化石燃料事業の保険引受及び投融資を停止するようエンゲージメントをお願いしたく、本要請書をお送りさせて頂きます。

東京海上は、以下の点において、世界の金融機関に遅れをとっています。

1.石油・ガス事業の停止方針がない

東京海上は、1月に環境NGOの国際ネットワーク「Insure Our Futureキャンペーン」が発表した報告書(※1)によると、ブラジルのオフショア石油採掘事業に主要な引受者として保険を提供していることが判明しています。また、米国では先住民族のグイッチン等の現地コミュニティーにとって重要なアラスカ州の北極野生生物保護区での石油・ガス採掘事業についても、今だに現地コミュニティーの求めに応えておらず(※3)、今後保険の引き受け手になる可能性があります。

世界ではアリアンツやスイス再保険を含む保険・再保険会社10社が、すでに石油・ガス事業への包括的な制限を設けています。先月6月26日から28日に亘りドイツのエルマウで開催されたG7サミットでは、「1.5度目標およびパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の2022年末までの終了にコミットする」との合意がなされました(※4)。

2021年5月18日に国際エネルギー機関(IEA)が発表した報告書「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」によれば、新規の化石燃料採掘事業は行うべきではなく、発電セクターにおいては世界全体で2040年に排出量をネットゼロにする必要があります(※5)。したがって、2050年ネットゼロを達成するためには、石炭事業のみならず、石油・ガスを含めた新規の化石燃料事業に対する保険引受・投融資を行うことはできません。

2.石炭火力発電所・炭鉱開発及び運営への新規保険引受・投融資について例外規定を設けている

東京海上は2021年9月に「石炭火力発電所および炭鉱開発(一般炭)については、新規および既設にかかわらず、新規の保険引受およびファイナンスは行わない」と発表しました(※6)。しかし、「但し、パリ協定の合意事項達成に向け、CCS/CCUSや混焼などの革新的な技術・手法を取り入れて進められる案件については、慎重に検討の上、対応を行う場合があります」としており、排出削減効果が限定的でパリ協定の目標達成に整合しない可能性の高いアンモニア混焼等を用いる石炭火力発電所についても、将来的に保険を引き受ける余地を残しています(※7)。東京海上は例外なく、保険引受及び投融資を停止する方針にすべきです。

3.石炭関連企業への保険引受・投融資を停止する方針がない

東京海上のライバル企業であるSOMPOホールディングス株式会社は6月28日に、2025年1月までに温室効果ガス(GHG)削減計画の策定がない「収入の30%以上を石炭火力発電、一般炭鉱山、オイルサンドの採掘から得ている企業、または30%以上のエネルギーを石炭で発電している企業」の保険引受および投融資の停止を発表し(※8)、日本の金融機関で初めて保険引受・投融資対象を企業単位で排除する方針を掲げました。しかし、東京海上は企業単位では何も制限を設けておらず、引き続き保険引受・投融資を行う余地を残しています。

4.石炭事業の既存契約に関するフェーズアウト目標がない

6月9日に発表された環境NGOの国際ネットワーク「Insure Our Futureキャンペーン」と、韓国の環境NGO「Solutions for Our Climate(SFOC)」による報告書「Exposed: The Coal Insurers of Last Resort(※9 )」によると、東京海上はベトナムのブンアン2石炭火力発電所の建設等に約5億6,900万ドルの保険を提供しており、ブンアン2の第2位の保険引受者であることが判明しています。今後、ブンアン2が稼働期間に入った場合にも引受者になるかはわかりませんが、東京海上は石炭事業の既存保険契約に関するフェーズアウト計画を持っていません。すでにアクサ、スイス再保険、アリアンツ、アクシスキャピタル、チューリッヒ等の保険会社が、自社のポートフォリオから石炭事業のエクスポージャーを世界全体で2040年までにゼロにする方針を掲げています。

株主総会当日、会場の外では東京海上に化石燃料事業の保険引受・投融資停止を求めて、環境NGOによるアクションが行われました。世界の保険会社に対して化石燃料関連事業への引き受けや投融資を停止するよう求めるInsure Our Futureキャンペーンは、株主総会に向けてこれまでにキャンペーンサイト(※10)の立ち上げ、東京海上のグループCEOに対する公開書簡(※11)の送付、そしてフィナンシャル・タイムズ紙への全面広告(※12)の掲載などを行なってきました。

よって私たちは、東京海上の大株主の皆様に対して、保険の引受方針をパリ協定の長期目標と整合的にするために、石油・ガスを含む新規化石燃料事業への引受停止方針の策定、石炭事業に関する例外規定の廃止、石炭関連企業への保険引受・投融資の停止、既存の石炭事業に関するフェーズアウト目標の策定を求めて、東京海上にエンゲージメントを行うよう要請します。

大変お忙しい中、誠に恐縮ではございますが、本要請に対する貴機関の方針および東京海上に対するエンゲージメントの結果を下記の担当者宛に9月16日までに頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。また、上記の点に関して対話をご希望の場合はオンラインで会合を持つことも可能ですので、お知らせ頂けますと幸いです。

※脚注
  1. http://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2022/01/2778bedf0776ccb21474257b1f0de751.pdf
  2. https://ourarcticrefuge.org/wp-content/uploads/2022/03/FINAL-arctic-scorecard-2022.pdf
  3. https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100364051.pdf
  4. International Energy Agency (IEA), (2021), 「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」, p. 20,
    https://iea.blob.core.windows.net/assets/0716bb9a-6138-4918-8023-cb24caa47794/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector.pdf
  5. https://www.tokiomarinehd.com/release_topics/release/l6guv3000000dffl-att/20210930_Climate_Strategy_j.pdf
  6. https://www.kikonet.org/info/publication/hydrogen-ammonia
  7. https://www.sompo-hd.com/-/media/hd/files/news/2022/20220628_1.pdf?la=ja-JP
  8. http://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2022/06/kepcoreportjp.pdf
  9. https://pollutingtheplanet.com/ja/
  10. https://pollutingtheplanet.com/ja/open-letter-to-the-tokio-marine-holdings-group/
  11. https://pollutingtheplanet.com/ja/climate-campaigners-protest-aig-lloyds-of-london-and-tokio-marine-as-coal-insurers-of-last-resort/

本要請書に関するご返答・お問合わせ先:

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org

本要請書の送付先金融機関リスト(2022年7月27日)

年金積立金管理運用独立行政法人
株式会社みずほフィナンシャルグループ
野村ホールディングス株式会社
The Vanguard Group Inc.
Norges Bank
BlackRock Inc
明治安田生命保険相互会社
株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループ
三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
株式会社大和証券グループ
バークレイズ銀行
State Street Corp.
FMR LLC
ドイツ銀行グループ
JP モルガン・チェース銀行
ゴールドマン・サックス証券株式会社
カナダロイヤル銀行
T Rowe Price Group Inc.
Schroders PLC
Olive Street Investment Advisers LLC
株式会社静岡銀行
株式会社八十二銀行
Charles Schwab Corp.
Dimensional Fund Advisors LP
Canadian Imperial Bank of Commerce
Teachers Insurance & Annuity Association of America
Swedbank AB
株式会社 ほくほくフィナンシャルグループ
FIL Ltd
UBS AG
abrdn plc
Capita PLC
Janus Henderson Group PLC
Zuercher Kantonalbank
Geode Capital Management LLC
株式会社京都銀行
WisdomTree Investments Inc
Ruffer LLP
日本生命保険相互会社
CI Investments Inc/Canada
農林中金全共連アセットマネジメント株式会社
Nordea Bank Abp
AXA SA
スパークス・アセット・マネジメント株式会社
Allianz SE
りそなアセットマネジメント株式会社
Danske Bank A/S
DekaBank Deutsche Girozentrale
The Bank of New York Mellon Corporation
Storebrand ASA