STOP 日本の化石燃料融資にNO!

JICA債保有者宛に「新規石炭火力への支援を準備中の国際協力機構(JICA)に対する投資姿勢に関する公開質問状」を送付

2022年3月30日
JICA債保有者の皆様

新規石炭火力への支援を準備中の国際協力機構(JICA)に対する投資姿勢に関する公開質問状

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ

私たち環境NGOは、国際協力機構(以下、JICA)の債券発行主幹事及びJICA債を保有している金融機関に対して、JICAが新規石炭火力発電事業への融資を行わないよう、エンゲージメント及びダイベストメントを行うことを求めてきました。この度、過去1年間においてJICA債の保有額を増額したとみられる金融機関19社(下記参照)に対して、本公開質問状を送付します。

JICAは、バングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業フェーズ2(600MWx2基)(以下、マタバリ2)及びインドネシアのインドラマユ石炭火力発電事業(1,000MWx1基)(以下、インドラマユ)の本体工事への融資に向けて準備を行っています。

しかし、2021年5月18日に国際エネルギー機関(IEA)が発表した報告書「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」によれば、発電によるCO2排出量を2040年頃までにネットで実質排出をゼロにする必要があります(※1)。そのため、マタバリ2やインドラマユ等の新規石炭発電を支援することは、パリ協定の長期目標と整合性が取れていません。

また、2021年6月13日、G7首脳は、「政府開発援助、輸出金融、投資、金融・貿易促進支援等を通じた、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の2021年末までの終了に今コミットする」(※2)との合意を発表しました。新規石炭火力発電事業への支援は、G7での約束にも反しています。

さらに、両国における電力の供給過剰状態の深刻化、財政負担の増加、再生可能エネルギーのコスト低下に伴う経済的合理性の欠如、両事業がJICAの「環境社会配慮ガイドライン」を満たしていないことなど、様々な問題が指摘されています。

​​JICA債は国連の持続可能な開発目標(以下、SDGs)の達成に貢献する目的で発行され、「SDGs実施指針改定版」(2019年12月改定)ではSDGs達成に向けた日本政府の具体的施策の一つとして位置付けられています。しかし、前述の2事業は、SDGsの目標13(気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る)に逆行し、目標16(持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する)も、ないがしろにしています。

2021年3月、12カ国の29団体は、JICA債発行主幹事及びJICA債を保有している金融機関39社に対し、JICAの両事業への支援停止に向けたエンゲージメントを求める要請書(※3)を送付しました。その結果、4金融機関からJICA及び債券インデックス・プロバイダーとエンゲージメントを行なった、もしくは行う予定があるとの回答を得ました。

実際に2021年2月〜2022年2月の間に、カリフォルニア州職員退職年金基金 (CalPERS)、りそなホールディングス、警察共済組合、三井住友トラスト・ホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ、Andra AP-Fonden (AP-2)、みずほフィナンシャルグループ、Lazard、野村證券グループの9金融機関において、JICA債保有額の減少またはダイベストメントが確認できました。他方、19金融機関がJICA債保有額を増加させていることが確認できました。

そこで、過去1年間において保有しているJICA債を増額したとみられる貴金融機関には以下の質問にご回答いただきたくお願い申し上げます。お忙しいところ大変恐縮ですが、4月30日までに下記の連絡先宛に、ご回答をお送りください。なお、頂きましたご返答はウェブサイト上で公開させて頂きますことをご了承ください。

【質問】

  1. 過去1年間に貴金融機関によるJICA債保有額が増加しているとの調査結果が出ておりますが、これは事実でしょうか。
  2. パリ協定の長期目標と整合しない事業に支援を行うJICAの姿勢は、貴金融機関の投資方針と整合していますか。
  3. 石炭火力発電への支援についてJICAに対してエンゲージメントを行ったことはありますか。また、今後エンゲージメントやダイベストメントを行う予定はありますか。

以上

脚注

※1: International Energy Agency (IEA), (2021), Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector, p. 114, IEA, Paris, https://iea.blob.core.windows.net/assets/0716bb9a-6138-4918-8023-cb24caa47794/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector.pdf
※2:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100200083.pdf
※3:http://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2021/03/965b9ad24bbb6bf6c2acaec264df6664.pdf

連絡先

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
プログラムディレクター 田辺有輝   tanabe@jacses.org

金融機関リスト

過去1年間にJICA債保有額を増額した金融機関(2022年2⽉時点、各種公開資料や⾦融データベース等から調査)

金融機関 JICA債保有額
2021年2月(100万米ドル)
JICA債保有額
2022年2月
(100万米ドル)
増加率
The Teachers Insurance and Annuity Association of America (TIAA) 3.05 22.55 639.3%
Danske Bank 7.5 15 100.0%
地方公務員共済組合連合会 9.17 16.55 80.5%
BlackRock 4.55 7.48 64.4%
Charles Schwab 1.35 2.1 55.6%
State Street 1.9 2.84 49.5%
Vanguard 58.17 68.63 18.0%
National Pension Service(韓国) 23.68 26.49 11.9%
東京海上ホールディングス 38.07 40.46 6.3%
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 112.4 115.42 2.7%
GAM Holding 1.44 1.45 0.7%
New York State Teachers’ Retirement System (NYSTRS) 0 19.09
Fidelity Investments 0 11.21
Safra Group 0 5.8
Florida State Board of Administration 0 1.01
Liechtensteinische Landesbank 0 0.5
Bank of New York Mellon 0 0.25
Pacific Century Group 0 0.2
Credit Suisse 0 0.2