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EU(欧州連合)の新方針は化石燃料への公的支援停止に不十分

本プレスリリースは、Both ENDS(オランダ)、ReCommon(イタリア)、Oil Change International(アメリカ)が英語で発表したもので、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が日本語に翻訳しました。

2022年3月16日

プレスリリース:
EU(欧州連合)の新方針は化石燃料への公的支援停止に不十分

ブリュッセル ー 3月15日、EU理事会は、全てのEU加盟国が化石燃料エネルギーのプロジェクトに対して輸出信用を通じた国際的な公的支援を終了することを約束する声明[1]を承認しました。EU理事会は、欧州委員会に対しても、経済協力開発機構(OECD)において、石炭だけでなく石油・ガスを含めた化石燃料への支援を停止するための交渉を始めるよう要請しています。目標は、地球温暖化を1.5度以内に抑えるために必要なエネルギーの移行を加速させることです。しかし、化石燃料支援の終了に向けた具体的な期限を設けていないため、EUの方針はこの目標を達成するには不十分です。

期限のないコミットメント

昨年、英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、12のEU加盟国および19のOECD加盟国を含む39の国と機関が、2022年末までにCO2排出対策が講じられていない化石燃料プロジェクトに対する国際的な公的支援を終了する共同コミットメント[2]に合意しました。この短期的な期限は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)の調査が、全ての化石燃料の生産と使用を2030年までに大幅に減少する必要があることを示していることに鑑み、化石燃料から移行する緊急性を反映するために設定されました。しかし、EU理事会は、この時間枠をEUレベルと今後のOECDでの議論に反映するのではなく、OECDでの議論を保留し、EU加盟国が2023年以降の化石燃料プロジェクトへの輸出信用の供与停止に向けた各国独自の「科学的根拠に基づいた」期限を設定するという異なるアプローチを提案しています。また、同声明では、EUタクソノミーがグリーンな輸出支援の指針として活用できると提案していますが、EUタクソノミーは一方で、ガスと原子力をグリーンに分類していることでEU自身の専門家グループを含め広く批判されています。

「科学的根拠に基づく」期限

石油・ガスの輸出支援停止に向けた時間枠を統一しないことは、気候危機の緊急性への対応に効果がなく、また、輸出信用機関(ECA)にとって通常第一の関心事である公平な競争の場を確保しません。1.5度シナリオではこれ以上の化石燃料インフラの拡大の余地はないと科学は明らかにしています。したがってOECD諸国による化石燃料輸出支援の即時停止への努力は極めて重要です。2018年から2020年の間に、G20諸国のECAは、再生可能エネルギー支援の11倍の支援を化石燃料に提供し、再生可能エネルギー支援額のわずか35億ドルと比較して、化石燃料プロジェクトには年間400億ドル[3]の資金が流れています。プーチン大統領によるウクライナへの軍事侵攻によってさらに、エネルギー効率と再生可能エネルギーへの支援を強化し化石燃料への依存を減らす必要性が高まっています。意外なことに、ロシアは2018年から2020年の間、G20諸国から化石燃料に対する国際的な公的支援を受けた金額は世界2位でした。

世界中の市民社会団体のネットワークであるECA-watchは、EU理事会とOECDに対し、輸出支援を気候目標に整合させる努力を気候危機の緊急性と一致させることを求めています。つまり、2022年末までに石油・ガスの輸出支援を終了する期限を採用することを求めています。これは、OECD加盟国の50%がすでに合意している期限です。

Oil Change InternationalのGlobal Public Financeの共同マネージャーであるLaurie van der Burgは、「人間が生活できる惑星を確保できる可能性が急速に狭まり、プーチン大統領が化石燃料支援によって支えられているウクライナとの戦争を繰り広げている一方で、EU諸国は公的資金によって化石燃料生産を支え続けています。EUが、OECDにおける石炭の輸出支援の制限に関する議論が進展した後、石油・ガスの輸出支援の制限についてもOECDに提起したことは良いことですが、時間厳守が重要です。COP26でOECD加盟国の半分の国々が化石燃料への公的支援を2022年までに終了することに合意しました。石油・ガスの輸出支援の段階的廃止に向けた時間枠を統一しないEU提案は、気候やエネルギー安全保障のための目標と本質的に矛盾しています」と述べています。

Both ENDSのシニアポリシーアドバイザーであるNiels Hazekampは、「COP26で、12のEU加盟国が2022年末までに化石燃料への公的支援を終了することに合意しました。EU全体が同様の措置を講じないことは残念なことです。COP26でのコミットメントに沿って、化石燃料支援の段階的廃止に向けた具体的な道筋と期限を設定することは、必要不可欠です。EU加盟国に対策を先延ばしにする余地を残すことは気候変動を1.5度に抑える機会を著しく失うことになります」と述べています。

Friends of the Earth フランスの、気候と公正な移行キャンペーナーであるAnna-Lena Rebaudは、「EUが石油・ガスに関するOECDでのルール策定交渉を進めようと努力していることは歓迎すべきことです。しかし、化石燃料事業拡大を即時に止める必要がある中で、EU加盟国が2024年までに段階的に廃止する方針を採用することに合意したことを残念に思います。私たちには時間も生半可な手段を取る余裕もありません。化石燃料支援によって支えられているウクライナとの戦争は、化石燃料への依存によって引き起こされる私たちの社会の脆弱性をいま一度明らかにしています。また、毎年数十億ドルを化石燃料プロジェクトに投資することで、私たち自身でその依存度を高めていることを喚起させます。各国政府は化石燃料に対する全ての公的支援を止めるべきです」と述べています。

Urgewaldのエネルギー・ファイナンスキャンペーナーであるRegine Richterは、「加速する気候危機の中で、ほんのわずかな一歩のための時間はありません。(同声明は)EUによる優れたイニシアティブですが、より迅速かつ大胆で、明確な時間枠を設定した行動をとる必要があります」と述べています。

ReCommonのプログラム・ディレクターであるAntonio Tricaricoは、「ロシアの新規かつ大規模な化石燃料インフラを支援してきたヨーロッパのECAは今、化石燃料拡大への融資に終止符を打つという明確なコミットメントをとることを避けています。EU経済財務相理事会(ECOFIN)の弱い決断は、ヨーロッパの化石燃料企業に、私たちをさらに化石燃料に依存させる裁量を与えてしまいます。今こそ組織的な見て見ぬふりに終止符を打つ時です」と述べています。

脚注

[1] https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-6500-2022-ADD-1/en/pdf
[2] https://ukcop26.org/statement-on-international-public-support-for-the-clean-energy-transition/
[3] http://priceofoil.org/content/uploads/2021/10/Past-Last-Call-G20-Public-Finance-Report.pdf

本件に関するお問い合わせ先

<日本語でのお問い合わせ>
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝、tanabe@jacses.org

<英語でのお問い合わせ>
Niels Hazekamp, Senior Policy Advisor Both ENDS, +31 6 81 9062 81
Antonio Tricarico, Programs Director, ReCommon, +39 328 8485448
Bronwen Tucker, Campaign Manager, Oil Change International, +1 587 926 7601