STOP 日本の化石燃料融資にNO!

環境社会配慮ガイドラインに違反する豪州バロッサガス開発事業への国際協力銀行(JBIC)の支援拒否を求める要請書を送付

財務大臣 麻生太郎様
国際協力銀行総裁 前田匡史様

環境社会配慮ガイドラインに違反する豪州バロッサガス開発事業への
国際協力銀行(JBIC)の支援拒否を求める要請書

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
350.org Japan

現在、国際協力銀行(JBIC)が融資検討中の豪州バロッサガス開発事業については、すでにオーストラリアの市民団体から様々な懸念があげられてきた※1。まず、本事業は、オーストラリアで最もガス生産単位当たりのCO2排出量が多い洋上ガス田開発との指摘がなされており、気候危機に取り組む国際社会の努力を反故にするものである。また、本事業に伴い新規に建設されるオーストラリア本土に接続予定のパイプラインは、先住民族であるティウィ族が暮らすティウィ諸島から6km以内のエリアに敷設される計画だが、事業者によるティウィ族のコミュニティとの協議プロセスが不十分であることが懸念されている。同パイプラインの建設により、絶滅危惧種のヒメウミガメとヒラタウミガメの生息地を破壊する可能性など、生物多様性への悪影響も危惧されている。

JBICは上述のような市民社会からの意見・情報も踏まえながら、本事業に係る環境レビューを実施中と理解している。しかしながら、上述のような重大な環境社会影響に加え、本事業においては、下記の通り、『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』(以下ガイドライン)の明らかな違反が認められる状況である。

問題1:先住民族計画が作成・公開されておらず、十分な情報が提供された上での自由な事前の合意の取得が確認されていない。
ガイドラインでは、プロジェクトが先住民族に影響を及ぼす場合、先住民族計画の作成・公開が要件となっており、「プロジェクトが土地及び資源に関する先住民族の諸権利に影響を及ぼす場合、」「十分な情報が提供された上での自由な事前の合意(FPIC)」の取得が要件となっている。本事業のガス輸送パイプラインは、上述の通り、先住民族であるティウィ族が伝統的な漁業を行っている海域を通過することになり、ティウィ族の生活への悪影響が懸念されている。一方、JBICは、Offshore Project Proposal(OPP)における分析結果、つまり「先住民族への影響は限定的である」という情報に基づき、先住民族計画書の作成は必要なく、FPICの取得も不要であると、NGOとの会合で説明している。しかし、事業者がティウィ族と行った協議の記録は公開されておらず、ティウィ族との協議がそもそも行われたか定かでない。またステークホルダーからOPPの内容とは異なる情報が提供されたにもかかわらず、JBICがティウィ族からヒアリングを行うなど、当該影響への配慮確認を適切に行った形跡もない。

問題2:影響回避・緩和策・住民協議の記録等が含まれるEnvironmental Plan(EP)を環境レビュー上不要の文書であるとして、環境社会影響評価報告書等から除外し、情報公開していない。
ガイドラインでは、第2部1において「環境社会配慮の検討の結果は、代替案や緩和策も含め独立の文書あるいは他の文書の一部として表されていなければならない」と規定されている。また、第2部2の「カテゴリAに必要な環境影響評価報告書」において、住民協議の記録作成を原則とし、OECDコモンアプローチに規定される事項が記述されることが望ましいとされており、その中には緩和策や管理計画が含まれている。しかし、JBICが本事業についてウェブサイト上で公開しているOffshore Project Proposal(OPP)では、住民協議の記録は含まれていない。したがって、本来であれば、住民協議の記録、影響回避・緩和策が含まれているEnvironmental Plan(EP)が公開されなくてはならないが、JBICはEPが環境レビュー上不要の文書であり、環境影響評価報告書ではないとして公開していない。EPはガイドラインにおける多くの要件を確認する上で必要な文書である。また、環境レビューにおける必要性の有無で公開の可否が判断されるべきものでもない。

問題3:環境社会影響評価報告書等以外の文書でプロジェクトの実施国で一般に公開されている文書をJBICが公開していない。
ガイドラインでは、「環境社会影響評価報告書等以外に当行が環境社会配慮確認のため借入人等から入手した文書のうち、プロジェクトの実施国で一般に公開されている文書の入手状況及び当該文書」を公開することが要件となっている。JBICがEnvironmental Plan(EP)を環境社会影響評価報告書に含めていなかった場合であっても、ガス輸送パイプラインに関するEPは豪州当局のウェブサイト上で公開されていることから、公開する必要がある。JBICは当該文書を入手したものの公開はできないと、NGOとの会合で説明したが、これはガイドラインの規定を順守していない。

したがって、下記の条件を満たし、ガイドラインの遵守が適切に確保されるまで、JBICが本事業の融資契約締結を拒否することを強く要請する。

  1. JBICは本事業によるティウィ族への影響について、ティウィ族との適切な対話を含む丁寧な確認を行い、本事業によってティウィ族への環境・社会・文化的な影響が生じないことを確認すること。確認の結果、ティウィ族に対する影響が生じる可能性がある場合は、FPICの取得と先住民族計画の作成・公開等についてガイドラインの遵守を確認すること。
  2. JBICは、現在入手済みのEnvironmental Plan(EP)を環境レビューに用い、環境影響評価報告書等に該当する文書として公開すること。

※1: Barossa Area Development Offshore Project Proposal – Submission to the Japan Bank for International Cooperation, https://www.jubileeaustralia.org/storage/app/media/uploaded-files/jbic-submission-on-santos-barossa-project-2021.pdf

本件に関する問い合わせ先

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺
tanabe@jacses.org