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Climate Home News記事(和訳):日本、「環境」ファンドでベトナム石炭火力発電事業に融資

日本、「環境」ファンドでベトナム石炭火力発電事業に融資

2021年1月19日
ジョー・ロー(Climate Home New)

国際協力銀行が「環境保全」を目的としたファシリティを通じ、物議を醸していたブンアン2石炭火力事業(以下、ブンアン2)への融資を承認した。

日本の公的金融機関が、ベトナムの石炭火力発電所に対する融資にグリーンファンドを活用したことに、「ひどいグリーンウォッシュ」だと非難の声が上がっている。

国際協力銀行(JBIC)は先月、物議を醸しているブンアン2に、成長投資ファシリティを通じて6億3600万ドルを投じると発表した。

この融資が「環境保全」を目的としたファシリティの一部を通じたものである点について、野党議員の福島瑞穂氏から受けた質問への回答の中で財務省が明かしていることを、クライメート・ホーム・ニュースが確認した。

2018年5月に同ファシリティを創設した麻生太郎財務相は、アジア開発銀行の総務会で、このファシリティでは公共交通機関や風力発電などの「環境保全に貢献する幅広いインフラプロジェクトを支援する」と語っていた。

しかし同行のプレスリリースをみると、「成長投資ファシリティ(質高インフラ環境成長ウインドウ)(QI-ESG)」により5件のガス火力発電プロジェクトが支援されたのに対し、風力発電は2件、ソーラーパネル製造が1件であった。財務省が福島氏に開示した情報によると、同ウインドウから2020年11月末時点で11のプロジェクトに合計2200億円(20億ドル)が拠出されていた。

2020年8月付のJBICの政策資料には、化石燃料の燃焼が地球温暖化の主な要因であるにもかかわらず、ガスと高効率の石炭火力発電が「環境」ファンドの対象として挙げられていた。

ブンアン2は、ベトナム中部で計画されている1,200MWの発電所で、既存のブンアン1の隣に建設される。地元メディアによると、地元住民が2017年に汚染と道路の損傷に抗議して、この発電所に石炭を輸送するトラックの通行を阻止した。

エネルギー・クリーンエア研究センター(Center for Research on Energy and Clean Air)の分析によると、ブンアン2は日本の発電所に求められている排出基準値に比べて数倍の二酸化硫黄、窒素酸化物、微粒子状物質を排出することになる。

FoE Japanのキャンペーン担当者である深草亜悠美氏は、「そもそも、JBICが新たな石炭火力発電事業を支援することは許しがたく、さらにそれが『グリーンで質の高いインフラ』として宣伝されたファンドを使っていることは容認できるものではない」と述べた。日本は2050年までに国内で実質ゼロ排出量に到達することを約束しているが、一方で海外の石炭に融資するのはダブルスタンダードだと述べた。

JBICの資金の一部は、日本政府保証付き債券の発行を通じて調達しており、これらの債権は安全な投資先とされている。

気候変動の観点から国際債券市場を監視する機関であるアンソロポセン・フィックスド・インカム・インスティチュート(Anthropocene Fixed Income Institute)を設立した元年金基金マネージャーのUlf Erlandsson氏は、投資家にJBICのボイコットを呼びかけた。

彼はクライメート・ホーム・ニュースに対し、「私たちは、石炭融資を継続しているJBICは国際債券ポートフォリオから除外されるべき(訳者注:各機関投資家の債券ポートフォリオにおける投資対象から除外するべき)だと主張してきた。 JBICが『ESG』と示された資金をはっきり石炭への支援に利用していることから、JBICを『この10年で最も悪質なグリーンウォッシュ』賞の最有力候補に据えるのにためらいはない」と述べた。

この「あるまじき」事例は、債券の発行者から債券購入者に対して、もっと説明責任を果たす必要があることを示している、と欧州エネルギー・気候政策研究所(Institute for European Energy and Climate Policy)のZsolt Lengyel事務局長は言う。

「金融の流れは、それが気候にどのような影響を及ぼすかも含め、実生活への影響を示さなければいけない。これらは検証可能な状態でなくてはならず、かつ独立した検証がなされなくてはいけないものだ。今回の融資は、私たちがそのようなシステムを欠いていることの証左だ。システムを迅速に構築しない限り、エネルギー転換が阻害され、巨大なグリーンウォッシュに流されてしまう」とLengyel氏は述べた。

ベトナムはこれ以上石炭火力を必要としないと、エネルギー経済・財務分析研究所(Institute for Energy Economics and Financial Analysis)のアナリスト、Simon Nicholas氏は話す。「JBICは、ベトナムが石炭を減らし再生可能エネルギーの設置を急増させている時に、古い電力技術で同国を悩ませている」「ベトナムは2019年にほぼ5GWに達する発電所規模の太陽光発電を設置し、2020年には驚くことに9GWもの屋上太陽光発電を設置した。同国では風力発電も急速に拡大している。このような再生可能エネルギーの成長は、石炭火力発電をさらに開発することの論理的根拠を覆すものだ」と述べた。

日本の公的金融機関はこれまでも、国の気候資金(訳者注:気候変動対策のための支援資金)に石炭火力発電プロジェクトを含めてきた。国際協力機構(JICA)は、バングラデシュの石炭火力発電所を支援するために14億ドルを融資し、この融資は「気候変動の緩和に貢献している」と主張した。他の石炭火力発電所よりも汚染が少ないためという説明だ。
日本は「気候資金」でインド、インドネシア、ベトナムの石炭火力発電所も支援してきたことを、2014年にAP通信が報じている。当時の日本の外務省は、「我々は何か隠したり誤魔化しているわけではない」とコメントしこのような気候資金の使い方を擁護した。

JBICの広報担当はコメントを拒否した。

*本記事は著者承諾のもとFoE Japanが翻訳したものもです。

脚注
  1. https://www.jbic.go.jp/en/information/press/press-2020/1229-014147.html
  2. http://gec.jp/jcm/jp/event/2020Thailand/S3-5_JBIC.pdf
  3. https://cafef.vn/ha-tinh-yeu-cau-tkv-tam-dung-van-chuyen-than-cho-nha-may-nhiet-dien-vung-ang-1-2017022310344273.chn
  4. https://www.marketforces.org.au/research/vietnam/vung-ang-2/
  5. https://www.climatechangenews.com/2020/10/26/japan-net-zero-emissions-pledge-puts-coal-spotlight/
  6. https://www.jbic.go.jp/en/ir/government.html
  7. https://www.jica.go.jp/english/our_work/evaluation/oda_loan/economic_cooperation/c8h0vm000001rdjt-att/bangladesh_190630_01.pdf

記事原文

Exclusive: Japan uses ‘environmental’ fund to finance Vietnamese coal plant(英語