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【要請書】バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電フェーズ2事業への公的支援を行わないことを求める要請書を送付

石炭火力発電事業への公的支援が問題になる中、日本政府がバングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業のフェーズ2(1200MW)の支援を検討しているとの情報を受け、国内外14カ国の環境NGO 28団体が共同で「バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電フェーズ2事業への公的支援を行わないことを求める要請書」を安倍首相、関係大臣、JICAに送付しました。

マタバリ石炭火力発電フェーズ2事業(1200MW)計画は、600MWx2 基の超々臨界圧(USC: Ultra Super Critical)石炭火力発電所及び関連施設(石炭輸入用港湾、送電線等)を設置し、電力供給を行うことを目的としたものです。環境NGOは今までも現地での浸水被害や住民への生計回復計画が不十分であることなど、さまざまな問題を指摘してきました。

さらに、本要請書では、新規の石炭火力発電はパリ協定の長期目標との整合性がないことなど4つの理由をあげて、この事業計画への支援を行わないように求めています。

要請書(本文)

バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電フェーズ2事業
への公的支援を行わないことを求める要請書

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ

 バングラデシュ政府は日本政府に対して、マタバリ石炭火力発電フェーズ2事業(1200MW)の支援を求めており、日本政府はフェーズ2事業への公的支援を検討しています。私たち14カ国の28団体は、安倍首相、関係大臣、JICAに対して、下記の理由から、同フェーズ2事業への公的支援を行わないよう要請します。

理由1:新規の石炭火力発電はパリ協定の長期目標との整合性がなく、日本政府の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」に反していること
日本政府は「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(2019年6月閣議決定)で、「海外におけるエネルギーインフラ輸出を、パリ協定の長期目標と整合的に世界のCO2排出削減に貢献するために推進していく」と定めています。パリ協定の長期目標を達成するためには、バングラデシュのような途上国であっても2040年までに石炭火力発電の運転を完全に停止する必要があるため、例え高効率であっても新規の石炭火力発電所建設はパリ協定との整合性がないことは明らかです。

理由2:バングラデシュにおいて石炭火力発電はコスト高であり、日本政府のエネルギー基本計画における4要件を満たしていないこと
バングラデシュにおいて、太陽光発電の想定される均等化発電原価(LCOE)が91ドル/MWhであるのに対し、石炭火力発電の平均は110ドル/MWhとなっており、同国において新規の石炭火力発電所を建設する経済的妥当性はなくなっています。また、国際協力機構(JICA)が支援しているマタバリ石炭火力発電のフェーズ1事業のコストは160ドル/MWhと想定されており、極めて高額な事業になっています。したがって、フェーズ2事業を支援することは、日本政府のエネルギー基本計画(2018年7月閣議決定)の石炭火力発電の輸出に関する4要件の1つである「エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざる得ない国に限り(支援を行う)」という要件に反しています。

理由3:バングラデシュに展開する製造業等のカーボンフットプリントを高め、同国企業及び同国に進出する日本企業の国際競争力を低下させること
バングラデシュにおいて新規の石炭火力発電所を建設することは、同国の炭素排出を長期間にわたってロックインすることになります。バングラデシュにおいて、これ以上石炭火力発電への依存度が高くなれば、同国企業及び進出企業にとって、製造過程における炭素排出量(カーボンフットプリント)が高くなります。その結果、サプライチェーンにおける脱炭素を求めるメーカーからの受注の機会を失う可能性があり、バングラデシュの国際競争力が低下することになります。さらに、RE100加盟企業のように再生可能エネルギーによる電力調達を目指す企業の事業進出を阻むこととなりかねません。

理由4:マタバリ石炭火力発電フェーズ1事業において深刻な環境社会影響が生じており、JICA環境社会配慮ガイドラインを満たしていないこと
マタバリ地域は人口密度が非常に高く、JICAが支援中のフェーズ1事業によって、多くの人々が直接的・間接的に負の影響を受けています。マタバリ石炭火力発電フェーズ1事業では、40世帯以上の住民移転が行われ、塩田やエビ養殖場の収容により、多くの人々が生活手段を失いました。しかし、補償支払の遅延や代替住宅提供の遅延などにより、「補償は、可能な限り再取得価格に基づき、事前に行われなければならない。相手国等は、移転住民が以前の生活水準や収入機会、生産水準において改善又は少なくとも回復できるように努めなければならない。」と定めたJICA環境社会配慮ガイドラインを満たしていません。また、灌漑用水路や水門の破壊に伴う浸水害の悪化、コミュニティ道路の破損、交通事故の増加、河川への土砂流入・堆積の問題が生じ、地元住民の生活に多大な負の影響を及ぼしています。地元住民はこれらの問題解決を実施機関及びJICAに繰り返し求めてきましたが、改善のスピードは極めて遅い状況です。

したがって、日本政府は、マタバリ石炭火力発電フェーズ2事業を支援するべきではありません。

*賛同団体リストはPDF版をご参照ください。

問い合わせ先:

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、担当:田辺
電話:03-3505-5553、メール:tanabe@jacses.org

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バングラデシュ・マタバリ石炭火力発電フェーズ2事業への公的支援を行わないことを求める要請書(PDF)
マタバリ石炭火力発電所事業計画ファクトシート(PDF)