STOP 日本の化石燃料融資にNO!

インドネシア・チレボン石炭火力・拡張計画 地裁での棄却判決を受け、原告団は控訴へ。JBICは融資見直しを!

昨年12月に現地住民・NGOが2度目の行政訴訟を起こしていたインドネシア西ジャワ州・チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(※)。日本の官民が推進する同事業に対して発行された2つめの環境許認可の取消しが求められていましたが、5月2日、バンドン地方行政裁判所は原告の訴えを棄却する決定を下しました。

同訴訟については、今年1月からバンドン地裁での審理が続けられていましたが、この判決を受け、住民・NGO原告団は、すでに同日、ジャカルタ高裁への控訴の意思を表明。汚染を伴う石炭火力発電所の建設から住民の生活環境を守るためにも、法廷闘争を続ける重要性を訴えました。また、開発利益が優先されるなか、本来、環境を守るためにある法規定や許認可が形骸化していることに対しても警鐘を鳴らしています。

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(写真左)2017年12月 国際協力銀行(JBIC)前で、住民・NGOが融資撤回を求める抗議アクション
(写真右)2016年10月 拡張計画のため、塩田での土地造成が始まった

同事業では稼働中の1号機により、小規模な漁業や塩づくりなど住民の生計手段にすでに甚大な被害がもたらされてきました。住民はさらなる被害を食い止めようと、2016年12月、拡張計画(2号機)に反対する環境訴訟を地元で開始。その結果、2017年4月の判決で2号機の環境許認可は取消され、拡張計画が違法であることが一度確定しました。

しかし、丸紅やJERA(東京電力と中部電力の合弁会社)が出資する事業者は、2017年7月に住民・NGOが知らぬ間に発行された2つめの環境許認可を根拠に、拡張計画の建設作業を継続。また、住民勝訴の判決一日前に融資契約を締結という前代未聞の決定を行なった国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資))と民間銀行は、2つめの許認可に対する住民訴訟が再び起こされることを知りつつ、2017年11月に拡張計画への融資の支払いを始めました。

日本政府やJBICは、依然として違法リスクを伴う同拡張計画への融資貸付をまずは控えるべきです。また、訴訟で一度勝利し、それでも計画が止まらず、さらに現在、2つめの許認可の有効性を問う環境訴訟を再び起こしている住民の意見・権利を尊重し、住民の生活空間の保護の観点からも同拡張計画への融資供与を早急に見直すべきです。

現地NGOのプレスリリース(和訳)

インドネシア環境フォーラム(WALHI:FoEインドネシア)
プレスリリース

2018年5月3日

チレボン石炭火力発電事業・拡張計画
―環境許認可の再発行に対する訴訟の地裁判決は環境訴訟や気候変動問題にとって悪例となる

ジャカルタ発 ― チレボン県の発電所(1000 MW)建設に対し、西ジャワ州投資・ワンドア統一サービス局の局長が再発行した2つめの環境許認可について、カンチ・クロン村住民とWALHIが起こしていた訴訟の件で、判事団は原告の訴えを棄却する判決を下しました。判事は、バンドン行政裁判所には同訴訟を審問・裁決・審査する権限がないと述べました。(原告弁護団である)気候正義のための提言チームは、判事団の決定に対してすでに控訴することを宣言しています。

チレボン石炭火力発電事業・拡張計画の建設は、35GWという非常に野心的な国家エネルギー計画の一つですが、インドネシア政府が掲げる温室効果ガスの排出削減に係る国別目標(NDC)に矛盾するものです。新規電力事業の60%近くを主要電源として依然石炭に依存する計画になっており、少なくとも今後20年間、エネルギー・セクターの炭素排出は一層悪化することになります。

気候正義のための提言チームは、今回の判決について、空間計画に違反するとして環境許認可が取り消された事例が国家戦略事業の類であることを理由に進められてしまう悪しき前例になると考えています。空間計画は、単に行政手続上の要件としてのみ解されるべきではなく、住民の生活空間の保護をなすための要素として捉えられるべきです。

『国家空間計画に関する2008年政令第26号の改定に関する2017年政令第13号』は、石炭という汚染を伴うエネルギー事業の実施を促進するための口実として使われています。同政令は、地方空間計画と矛盾する国家戦略事業の推進のために付与される(関連省庁大臣の)「推薦」について規定しており、長時間かかる郡/市や州の空間計画の改訂に対し、国家戦略事業を促進するための解決策であると考えられています。

しかし、2017年政令第13号は、空間計画の規定を損なう可能性のある国家の組織的な努力によるもので、これは、特にチレボン県の、そして国家レベル全般における生活空間の破壊につながりうるものです。特に(同政令の)第114 A項は、環境社会配慮やコミュニティレベルの生活空間との調整を省みることなく、単に開発の利益のみを根拠に策定されたものです。

開発の範囲や場所が、グッド・ガバナンスに反する規定や許認可の発行を含む、さまざまな手段によって正当化されてしまっています。これは、本来、環境を保護する手段であるべき環境許認可が行政手続上の要件としてのみ捉えられていることを示すもので、法による保護にとって危険な状態です。

今回の判事団の決定に対する控訴は、農民や漁民、そしてその他の影響を受ける市民を含む、あらゆる人々が良好な環境を求める権利を保護するものであり、インドネシア政府が気候変動を引き起こすとともに、汚染を伴う石炭火力発電事業をこれ以上推進せぬよう求めるものです。

連絡先:
・WALHI西ジャワ事務局長Dadan Ramdan
・気候正義のための提言チームLasma Natalia
・WALHI都市・エネルギー担当Dwi Sawung

 

(※)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められており、2022年に運転開始見込み。