インドネシア・バタン石炭火力  緊急抗議アクション・声明「人権・環境・気候問題を無視したJBIC融資決定に強く抗議」 (2016年6月6日)

2016年6月6日

6月3日、国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)がインドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業(2,000メガワット。総事業費約45億ドル。J-POWER、伊藤忠商事出資)に対し、約20億5,200万ドル(約2,234億円)という巨額の融資契約を締結しました。

FoE Japan、気候ネットワークなど日本のNGOは、5年間、同事業に反対し続けている地元住民の声、また、同事業に伴う深刻な人権侵害や環境社会・気候変動への影響を指摘してきた国内外の市民社会の声を無視した今回のJBICによる融資決定に対し、強く抗議するため、6月6日、JBIC前で緊急抗議アクションを決行。抗議声明を発表しました。

  

現地でも、6月4日、事業者の進める海域での掘削作業が漁場にもたらす影響を懸念し、漁船に乗り込んだ漁民・農民らが抗議アクションを実施。同事業への反対の声をあげ続けています。

<現地からの写真>
  
写真左:5月中旬に海域で始められた掘削作業に反対する漁民ら。自分たちの漁場への影響を懸念
写真右:未収用の農地へのアクセスを遮断したフェンス傍にテントを張り、抗議を続ける住民
(2016年6月4日、現地より)

以下、4団体(※)からの抗議声明です。
(※国環境NGO FoE Japan、インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)、 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク)
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2016年6月6日

国際環境NGO FoE Japan
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク

【声明】 インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業
人権・環境・気候問題を無視したJBIC融資決定に強く抗議
日本の「質の高い」インフラ輸出の実態を露呈

6月3日、国際協力銀行(JBIC)はインドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業(J-POWER、伊藤忠商事が出資)に対して、約20億5,200万ドル(約2,234億円)の巨額融資を決定しました。

この決定は、5年間、同事業に反対し続けている地元住民の声、また、同事業に伴う深刻な人権侵害や環境社会・気候変動への影響を指摘してきた国内外の市民社会の声 を無視したものであり、私たちは強い抗議の意を表明します。また、JBICのプレスリリース では、同事業について「インドネシア初の超々臨界圧石炭火力IPPプロジェクトであり、同国における効率的かつ環境に優しい技術導入を実現するもの」と評されていますが、超々臨界圧であっても天然ガス火力の約2倍の炭素排出をもたらす他、SOx、NOx、PM2.5といった大気汚染や温排水など、その他の公害問題に対する懸念は払拭されていません。

さらに、日本政府は先月、G7伊勢志摩サミットに合わせ、「質の高いインフラ」輸出促進に向けた更なる巨額の資金供与の方針を打ち出しました が、今回のJBICの融資決定で露呈したように、人権・環境社会・気候変動問題をまったく無視した形で推進される日本の「質の高い」インフラ輸出方針に対し、私たちは深い憂慮を表明します。

インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業事業については、昨年7月29日、水田やジャスミン畑等の農地の収用により農業ができなくなる地元の地権者・小作農・農業労働者の代表、そして、生産性の高い豊かな漁場を奪われることになる漁民の代表が、JBICに異議申立書を手交し、生活悪化や人権侵害(軍・警察等による脅迫・暴力・不当逮捕を含む)等、同事業が多くの点で『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』(以下、ガイドライン)の規定に違反していることを指摘しました。しかし、同申立書の提出以降も、地権者が売却を拒否している未収用地の灌漑機能が国軍工兵隊の重機による土地造成作業で破壊されたり、インドネシア国有電力会社(PLN)が「立入・利用は刑法違反の恐れ」がある旨を記した一方的かつ脅迫的な掲示板を未収用地に立てたりと、現地の問題状況は改善するどころか、悪化の一途を辿ってきました。

また直近では、インドネシアの独立した政府機関である国家人権委員会から、事業者に対する勧告書(2016年5月11日)が新たに出されていました。同勧告書では、今年3月に住民の合意がないまま未収用の農地へのアクセスがフェンスの設置により封鎖され、農民の収穫が妨げられた件 について、「事業者とコミュニティーの間で、土地のアクセスと使用について、永久的な合意が形成されるまで、コミュニティーが稲やその他の作物を収穫できるよう、農地へのアクセスを提供すること」を事業者に要請していました。そして、同問題についてフォローアップがなされない場合には、インドネシアの人権に関する1999年法律第39号第36条第1項、および、第2項で規定される人権を侵害しうると明記していました。しかし、同勧告の後も、事業者による具体的な施策はとられず、結局、多くの農民が作物を収穫できないまま、損失を被った形となりました。こうした状況は、国家人権委員会が指摘するとおり、事業者が人権に係るインドネシア国内法に違反していることを示しており、「相手国の法令遵守」を規定したJBICガイドラインにも明確に違反します。

さらに、同勧告書のなかでは、同事業に伴い、以前からコミュニティーに対する多くの人権侵害が起きてきたことも再喚起されていました。昨年12月21日付で国家人権委員会が日本政府宛てに提出した書簡のなかでも明記されていたとおり、同事業では、「2013年以降、コミュニティーに対する脅迫や身体的・精神的脅威など、土地買収手続に関するさまざまな人権侵害がみられる」など、民主的なプロセスを著しく妨げる重大な人権侵害が過去に繰り返されてきました。今回のJBICの融資決定は、同事業におけるこれまでの住民の合意や計画策定にあたり、ガイドラインの規定する「適切な参加」が確保されている環境になかった点を日本政府・JBICが無視したことを示しています。

いみじくも同勧告書で言及されている『国連 ビジネスと人権に関する指導原則』 では、「人権を尊重する企業の責任」とならび、「人権を保護する国家の義務」が明記されており、輸出信用機関の支援を受けている企業による人権侵害に対する義務も規定されています。同事業の推進にはJBICの巨額の融資供与が不可欠であったことからも、日本政府・JBICは同事業に係る人権保護について大きな義務を有していると考えられます。しかし、日本政府・JBICは、国際的に求められている人権保護の義務を果たすのではなく、同事業への融資供与によって、第三者であるインドネシア国家人権委員会も指摘する同事業に伴う深刻な人権侵害に加担したことになります。また、昨年7月29日に住民が同事業について、『経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針』日本連絡窓口(NCP)に同指針の違反点を指摘し、日本企業への適切な対処の奨励を求めたにもかかわらず、日本NCPは3ヶ月で終えるべき初期評価調査を現在も完了しておらず、この点においても、日本政府は同事業に係る人権保護の義務を著しく怠っています。

現場では、事業者が設置したフェンス傍で、反対派住民が3月下旬からテントをつくり、そこで今日まで事業反対と土地売却反対の意思を示し続けてきました。また、漁民も5月中旬に地元の海域で始まった事業者による掘削作業に対して、漁場への影響を懸念し、6月4日に抗議活動を行なうなど反対の声をあげ続けています。今年5月11日には、約3,500人がジャカルタの日本大使館前で、同事業を含む、日本の支援するインドネシアでの石炭火力発電事業に対して抗議活動を行ないました。このように、同事業に対する「社会的合意」形成がしっかり確保されていない状況のなか、インドネシア土地収用法の下での住民の意思を無視した強制執行をJBICが容認し、同事業への融資を決定したことは、明らかにJBICガドラインに違反しています。

JBICガイドラインでは、「環境レビューの結果、適切な環境社会配慮が確保されないと判断した場合は、適切な環境社会配慮がなされるよう、借入人を通じ、プロジェクト実施主体者に働きかける。適切な環境社会配慮がなされない場合には、融資等を実施しないこともありうる。」と規定されています。しかし、JBICは「適切な環境社会配慮」がなされていない状況を反対派住民、さらには、インドネシア国家人権委員会等への面談のなかで直接聴取したにもかかわらず、今回の融資決定を下しました。これは、JBIC自身がガイドラインを適切に運用する意思・能力に欠けることを国内外に示す結果となりました。また今後、JBICがモニタリングを実施するにあたり、住民の生活悪化や人権侵害が起きた場合でも、JBICが環境社会配慮面での確認を適切にできるのか、多大な疑問を抱かざるを得ません。

日本政府・JBICは、これ以上、影響住民の生活・社会状況が悪化することのないよう、上述した住民や国内外の懸念の声を真摯に受け止め、早急に同事業への融資供与を見直すべきです。

以上

連絡先:国際環境NGO FoE Japan(担当:波多江) Tel:03-6909-5983

(以上)

>バタン石炭火力発電事業の詳細については、こちら