国会審議: 世界の脱石炭の流れに反する石炭火力発電所の輸出に対し、日本は公的支援を中止すべき

6月19日、気候変動問題の観点から世界で脱炭素社会への動きが広がるなか、石炭火力発電所の輸出に公的支援を続ける日本政府の姿勢について、参議院・経済産業委員会で審議がなされました。

同審議では、政府出資100%の国際協力銀行(JBIC。財務省管轄)や日本貿易保健(NEXI。経済産業省管轄)が支援する、もしくは、支援を検討している石炭火力発電事業が地元住民の生活や環境を脅かし、人権侵害が引き起こされている事例も取り上げられました。

一つは、インドネシア・チレボン石炭火力・拡張計画。また、もう一つは、ベトナム・ギソン2石炭火力発電所事業です。それぞれの案件の問題について、財務省およびNEXIから答弁がなされました。

以下、2018年6月19日の参議院・経済産業委員会での関連質疑の内容です。

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参議院・経済産業委員会(2018年6月19日)
インターネット審議中継の映像はこちら  [発言部分 01:41:00~]http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

●岩渕友議員(日本共産党):
気候変動対策の観点から海外の石炭火力発電所への公的支援の問題について質問する。資料2をご覧いただきたい。2013年から2016年のG20各国の海外石炭発電事業の公的金融機関の支援額である。日本は中国に次いで2番目の支援額となっている。JBICの支援額はG20中3番目のドイツと4番目のロシアを足した額より多くなっている。また、NEXIはロシアとほぼ同じ額である。国際的に見ても断トツに多いということがわかる。新たな石炭火力の建設支援は気候変動の国際合意であるパリ協定の目標と整合性がないということは明らかであって、化石燃料関連企業から投資を撤退するダイベストメントが世界では大きな流れになるなかで、海外での新規の石炭火力発電所建設を推進する役割を果たしている日本に対して国際的な批判が集まっている。日本は海外の石炭関連事業への融資など公的支援を止めるべきである。大臣いかがか。

●世耕 経済産業大臣:
この問題はまさに国際的にOECDという場で、今から3年前に議論された整理がついている。当時、公的金融を石炭火力に対しては行なうべきではないという国もあったが、当時OECDで議論をした上でコンセンサスを得て、引き続き、公的金融を質の高い石炭火力には当てはめていくという合意がなされた。その心は、やはり、各国によってエネルギー事情がある。特に途上国は。途上国でいきなりLNG火力を導入できればいいが、LNG火力というのは非常に出力も高く、それなりに送配電網が整備されいないとまったく設置しても意味がないし、非常に設置コストも高い。また、風力や太陽光といった再生可能エネルギーだけで国のエネルギーを全部賄うわけにもなかなかいかない。そういったところに配慮しながら、しかし一方で、CO2はしっかり削減をしなくてはいけないということで、原則世界最新鋭の超々臨界圧以上の発電設備について導入を支援するということ。これは国政的にOECDで確認をされたわけなので、我が国もそれに沿った対応をしている。ただ、このままでいいとは思っていないので、当然、石炭火力を脱炭素電源にするためには、特にCO2の回収貯留技術CCS、こういったことも非常に重要なので、そういった面の技術開発もしっかり進めていきたいと思っている。

●岩渕議員:
相手国の要請に応じてということを言っているが、現地では一体どんなことが起きているか。インドネシア西ジャワ州チレボンでは、石炭火力発電所の2号機建設計画をめぐって、地元住民やNGOによる反対運動が起きている。運動をしている住民の皆さん、現地NGOの皆さん、弁護士さんが何度も来日して、毎回、直接会って実態を聞いてきた。1号機の建設によって、地域住民の生活の糧である小規模漁業、農業、塩田などで、漁獲量の減少や塩田の黒ずみなど、甚大な影響を受けて、多くの住民が事業前より厳しい生活を強いられている。さらに、拡張計画に反対する住民グループや支援者に対する嫌がらせや監視といった人権侵害も起きている。拡張計画の環境許認可をめぐっては、2016年12月に地元住民による行政裁判が提訴された。しかし、2017年4月にJBICはその判決が出る1日前に融資契約に調印。その後、地裁は住民の訴えを認めて2号機の環境許認可の取消判決を行なった。そして、住民・NGOが知らない間に2つ目となる環境許認可が出されて、これに対して住民が訴訟を再び起こすことをしりながら、JBICは拡張計画への貸付実行を行なっている。再び行政裁判が行なわれて地裁は訴えを棄却したが、現在、控訴審中となっている。資料3をご覧いただきたい。これは5月18日に出されたものだが、日本政府はチレボン石炭火力発電所への融資を停止するべきだという要請書を受け取っている。環境を壊し、地域住民から生業を奪って人権侵害まで起きていることは環境社会配慮のためのJBICガイドラインに違反しているとともに、控訴審中の案件に融資を決定して貸付実行を行なうリスク、これは大きいと思うが、財務省いかがか。

●宮原 財務省 国際局 審議官:
国際協力銀行JBICにおいては、同行が定める環境社会配慮確認のためのガイドラインに則って融資を行なうことになっている。本件においても、このガイドラインに則った適切な環境社会配慮確認がなされた上で融資が実行されているものと理解している。現在、環境許認可に関して訴訟が提起されていることは承知しているが、判決が出たら、JBICにおいて、その内容を精査し、ガイドラインに基づき適切な対応がなされるものと考えている。財務省においても、引き続き所管官庁としてJBICがガイドラインに基づき、適切に環境社会配慮確認を行なうよう監督していく所存である。

●岩渕議員:
世界の流れに反して、日本が石炭火力への融資を行なっていることへの批判はすごく高まっている。現地の事業者からの報告を鵜呑みにするのではなく、融資を行なったJBICの責任として、自ら現地で実態を把握し、そして第三者の意見・情報を求めるように指導するべき。そして、このような状況で、2回目の融資実行は許されないということを厳しく指摘しておく。
JBICは今年4月13日にベトナム・ギソン2の石炭火力発電所への融資も決定した。日本は世界最新鋭である超々臨界以上の発電設備について導入を支援すると言っているが、ギソン2は超臨界になっている。ベトナムでは大気汚染の悪化、住民の健康被害が拡大することが懸念されている。また、漁民をはじめとして、地元住民との合意ができておらず、JBICの融資決定に批判の声があがっている。同時に、NEXIが5月31日にWEBサイト上で同プロジェクトの情報等の情報公開を始めたことで丸紅の出資に対して付保するのではないかという懸念の声があがっている。6月8日、NEXIは緊急要請書を受け取っていると思うが、現地で事業者がどんな対応をしているか、住民がどういう反対をしているのかを現地に行って実態をつかむ必要があると思うが、緊急要請書を受け取って以降、現地に行っているか。

●坂東 NEXI社長:
ギソン2案件に関して、ご指摘どおり、現在、私どもは環境社会配慮面の審査を含む引受審査中の状況である。本年4月下旬に環境の現地実査を行なっているが、6月8日以降については特に行なっていない。ただ、今まさに全体の環境社会配慮面の審査を行なっている最中なので、今後必要に応じて、再度現地実査の実施も視野に入れて検討させていただく。

●岩渕議員:
事業者と住民の関係がどうなっているかをつかむことが大事なので、現地に行って実態を把握すべきだということを指摘するとともに、ギソン2の石炭火力発電所について付保するべきではないということも指摘をし、さらに大臣にも、こうした地元の住民の生業や生活、環境を壊して、住民の反対を受けているような石炭火力発電所への公的支援を根本から見直すべき。これが世界の流れだということを指摘して質問を終わる。
(※)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。
2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められており、2022年に運転開始見込み。
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(※)ベトナム・ギソン2石炭火力発電事業
目的:600メガワット × 2基の発電所(超臨界圧)
事業者:丸紅 (50%出資)、韓国電力公社(KEPCO) (50%出資)
総工費:26億7千万米ドル
公的融資: 国際協力銀行(JBIC)、韓国輸出入銀行(KEXIM)
民間融資:DBS、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、OCBC、三井住友銀行、新生銀行、Maybank
付保:日本貿易保険(検討中)
稼働開始予定:2019年(遅延の見込み)