【プレスリリース】環境団体が財務省・JBICに緊急要請書提出 パリ協定に矛盾し、かつ旧態依然とした低効率技術での ベトナムへの石炭火力発電支援は許されない

本日、下記環境団体は連名で、財務大臣及びJBIC総裁に対し「国際協力銀行はベトナム・ギソン2石炭火力発電所への融資申請を拒否するべき」とする緊急要請書を提出しました。

気候変動を止めるため、気温上昇を産業革命期以降から1.5度/2度未満に抑えることを明記したパリ協定が2015年に成立し、世界は脱炭素、とくに石炭火力からの撤退を加速させています。にもかかわらず、日本は公的資金を使い、いまだ石炭火力輸出を積極的に進めています。パリ協定の目標達成のためには、新規の石炭火力発電所の建設は許されません。あまつさえ、国際協力銀行(JBIC)は現在、「超臨界圧」という効率の劣る技術を利用予定のギソン2石炭火力発電所事業(ベトナム中部での600MWの超臨界圧2基の建設。丸紅と韓国電力公社が5割ずつ出資)に対する融資を検討中です。

少なくとも日本政府は「世界最新鋭である超々臨界圧以上の発電設備について導入を支援する」との方針を示しています[1] 。もちろん、気候変動の原因である人為的な温室効果ガスの排出は、一部の先進国や途上国に大きな責任があり、日本は率先して温室効果ガスを削減する義務があり、高効率(超々臨界圧以上)であっても支援すべきではありません。しかしながら、本事業にJBICが融資すれば、超臨界圧の技術を利用予定であるため、日本政府の方針にすら反することになります。

[1]  中川環境大臣記者会見録、2018年1月30日(ギソン2要請書

詳しくは、下の緊急声明をご覧ください。

要請書連名団体:
FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
350.org Japan
メコン・ウォッチ

緊急要請

財務大臣 麻生 太郎
国際協力銀行(JBIC代表取締役総裁 近藤

【緊急要請】国際協力銀行はベトナム・ギソン2石炭火力発電所への融資申請を拒否するべき

 

国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
350.org Japan
メコン・ウォッチ

国際協力銀行(以下JBIC)は、2018年2月6日からベトナム中部で計画されているギソン2石炭火力発電所事業(600MWの超臨界圧2基の建設。丸紅と韓国電力公社が5割ずつ出資)への融資を検討しています[1]

2015年に策定され、日本も批准しているパリ協定では、地球の平均気温上昇を1.5度/2度に抑える目標が書き込まれました。そのためには、新規の石炭火力発電所建設は認められないことは、様々な調査で明らかとなっています。さらに、この事業は超臨界圧という旧態依然とした低効率な技術を利用しており、「超々臨界圧以上の発電設備について導入を支援する」という日本政府の方針にも矛盾します。

したがって、私たちはJBICに対して本事業の融資契約を締結しないよう強く求めます。JBICが以下に示す本事業の問題点を精査し、融資申請の拒否という賢明な対応をとるよう要請します。

  1. 石炭火力発電事業への支援はパリ協定と整合性が取れない
    国連環境計画(UNEP)は2017年の排出ギャップレポートにおいて、パリ協定の5 度目標達成のためには、新たな石炭火力発電所の建設は許されず、既存の石炭火力発電所も廃止していく必要があると発表した[2]。 本事業への支援は、パリ協定の目標に整合しないことは明らかである。
  2. 超臨界圧への支援は日本政府の方針に反する
    日本政府は「世界最新鋭である超々臨界圧以上の発電設備について導入を支援する」との方針を示している。本事業は超臨界圧であるため、この方針に反している。[3]
  1. ベトナム現地の大気汚染を悪化させる
    ベトナムでは大気汚染が深刻で、2011年には石炭火力発電所由来の大気汚染が、4300人の早期死亡につながったと推定されている[4]。ハーバード大学の研究によると、早期死亡者の数は2030年までに現在の5倍の約2万人にまで到達すると試算されており[5]、大気汚染対策が喫緊の課題だ。
    一方、ギソン2石炭火力発電所の大気汚染物質の推定排出濃度は、以下の表に示すとおり、高性能な大気汚染対策技術が整備された日本の石炭火力発電所のものと比べて相当高く、大気汚染悪化および住民の健康被害拡大が懸念される。

表:ギソン2と日本の石炭火力発電所との環境対策技術の比較

ギソン2[6] 磯子2[7] 磯子1 碧南5
所在地 ベトナム 日本
出力(MW) 600×2 600 600 1000
運転開始時期 2019(予定) 2009 2002 2002
効率(蒸気条件) SC USC USC USC
SOx対策(ppm) 200 10 20 25
NOx対策(ppm) 50 13 20 15
PM対策(mg/Nm3) 50 5 10 5
  1. 環境アセスメントに不備が見られる
    ベトナム環境保護法(2014年)第20条によれば、プロジェクトオーナーは、環境アセスメント(ESIA)の承認から24ヶ月を超えてプロジェクトが開始されていない場合、ESIAをやり直す必要があると規定している[8]。JBICが参照しているギソン2石炭火力発電所の ESIAが実施されたのは2015年2月、同ESIAが承認されたのは2015年3月4日であり、すでに3年以上経過している[9]。現地法に準ずれば、ESIAのやり直しが必要になるとの指摘が現地NGOによりなされている。
    また、ギソン2石炭火力発電所の建設予定地近辺には、その他の石炭火力発電所、ギソン(ニソン)製油所など、環境負荷の大きいインフラが存在するが、その累積影響が考慮されていない。

脚注

[1] 国際協力銀行 環境影響評価等について入手済みのプロジェクト(リンク
[2] 国連環境計画「排出ギャップレポート」2017(リンク
[3] 中川環境大臣記者会見録、2018年1月30日(リンク
[4] Shannon Koplitz, Daniel Jacob, Melissa Sulprizio, Lauri Myllyvirta, and Colleen Reid, “Burden of disease from rising coal emissions in Asia”, Environ. Sci. Technol., 2017, 51 (3), pp 1467–1476.
[5] Ibid.
[6] 2018年2月16日のJBICによるFoE Japanへの電話回答
[7] 磯子1、2については、電源開発の年次報告書2009年。碧南5については、CCT Journal創刊号(財団法人 石炭利用総合センター、2002年5月)。
[8]Project owners must repeat the report on the environment impact assessment when: a) The project is not executed within a period of 24 months as from the date on which the decision on approving the report on environmental impact assessment is made;” Law on Environmental Protection 2014, No 55/2014/QH13
[9] 投資ライセンスの発行、電力購入合意(PPA)はそれぞれ2017年6月と2017年11月。

■ギソン2石炭火力発電所について
概要:二基の600メガワットの超臨界圧建設
出資:丸紅 (50%)、韓国電力公社(KEPCO) (50%)
民間融資(未定):DBS、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、OCBC、三井住友銀行、Standard Chartered
公的融資(未定): 国際協力銀行(JBIC)、韓国輸出入銀行(KEXIM)
総工費:26億7千万米ドル
稼働開始予定:2019年

要請書のダウンロードはこちらから

【緊急要請】国際協力銀行はベトナム・ギソン2石炭火力発電所への融資申請を拒否するべき(PDF)

連絡先

国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
tel: 03-6909-5983  fax: 03-6909-5986 担当:深草