バタン石炭火力発電事業に反対する活動家へのインタビューを掲載

インタビュー

アリフ・フィヤント氏(グリーンピース・インドネシア)

Exif_JPEG_PICTURE

  • 1. 石炭火力発電所に対するあなたの活動について教えてください。いつ頃から取り組みを始めたのですか?

バタンだけでなく、グリーンピースとして石炭キャンペーンを担当している。チラチャップ、チレボン、ジュパラの石炭火発について、2008年末から取り組んできている。

  • 2. なぜ、この事業について反対することが特に重要なのでしょうか?

バタンについて:2011年初めに、インドネシアの石炭全般の状況を調べていたら、バタンで東南アジア最大の石炭火発の建設計画を知った。誰が関係しているかはわかっていなかったが、アダロ社のプロジェクトになるということはわかっていたため、グリーンピースは石炭鉱山のキャンペーンを進めようと考えており、アダロ社をターゲットに、南カリマンタンの鉱山問題を取り組もうとしていた。だが、バタンは、住民の健康に対しても問題があり、気候変動に影響があることから、この問題に取り組むことにした。

  • 3. インドネシアの国民は石炭火発についてどのように考えていますか?何かよく見られる誤解はありますか?

インドネシア政府は、石炭が最も安い燃料で、かつ豊富にあると考えている。政府は石炭火力発電こそが電力危機を解決する処方箋だと考えているが、この政府の見解は誤ったものである。第一に石炭は安いという主張は実際に石炭開発そのものだけでなくそれ以外の要素-例えば環境影響、社会文化への影響、健康被害―を考えると安くなく、むしろ高い。第二に石炭の埋蔵量があふれているという見解だが、これも間違いである。IEAの統計によると、インドネシアの石炭埋蔵量は世界の3%にしか過ぎない。アメリカやインド、中国の方が埋蔵量は多いが、皮肉なことにインドネシアは世界最大の輸出国である。インドネシアが現在のスピードで開発を進めるなら石炭は30年以内に枯渇すると見積もられている。輸入国に転じた石油と同じ状況だ。そして、カリマンタンやスマトラで甚大な環境破壊を引き起こすことになる。第三に、電力危機を解決するのが石炭だというのも間違いだ。枯渇燃料だし、深刻な環境・健康被害をもたらす。政府は再生可能で環境に優しく、住民に損害を与えないような再生可能エネルギーにシフトしなくてはならない。

  • 4.  インドネシアで再生可能エネルギーはどの程度適しているでしょうか?もしバタン火発が建たない場合、再生可能エネルギーのポテンシャルはどの程度あるのでしょうか?電力不足の問題は起きませんか?

もし石炭火発が建たないと電力不足になるというのなら、それは間違ったプロパガンダだが、実際、インドネシア政府もそのようなプロパガンダをしている。日本では再エネが限られるのかもしれないが、インドネシアでは再生可能エネルギーの可能性がたくさんある。例えば地熱。インドネシアには世界最大の地熱のポテンシャルがあり、世界の40%を占めている。インドネシアは島嶼国家で、すべての島で異なる再エネがある。それぞれの地域の特色を生かして開発することが可能だ。それ以外に、インドネシアはどこででも太陽光発電が可能。電力需要の大きくない島なら太陽光が適している。安いし早く設置することができる。もしくは小規模水力も考えられる。小規模なら内陸部で発展させていくこともできる。もし政府が本当に真剣に再生可能エネルギー開発を考えるなら、2025年までにインドネシアの電力の50%で賄える。

  • 5.  JBICがバタン事業の出資を中止することについては楽観視していますか?

この間私たちは3年近くこの運動にかかわり、住民の運動やグリーンピースや法律擁護協会がかかわってきたが、2回の融資調達期限の延期を勝ち取ってきた。事業費用も30兆ルピア(日本円で3000億円)から40兆ルピアまで上がっている。インドネシアのすべての省庁の前でデモを行ってきた。こういう状況でJBICや伊藤忠、電源開発はいかに住民が反対しているのかを理解せざるを得ないのではないか。というのも、まだ収容されていない20%の土地の所有者はいつになっても土地を売らないからだ。だからこそ、その人たちは逮捕されたりしているが、JBICが事業を中止することについては楽観視している。また、こうして活動を支えている日本の皆さんに感謝している。

ワヒュ・ナンダン・ヘラワン氏(インドネシア・リーガル・エイド協会)

nangdang

  • 1.  あなたの所属している法律擁護協会について教えて下さい。

もともと法律擁護協会とは、スハルト体制の時代に作られたもので、スハルトの権威主義体制に抵抗し、様々な人権侵害、権力乱用の中で、小さな民を支援するために作られた。最初は著名な弁護士がジャカルタの法律擁護協会を作ったが、インドネシア全体で活動が必要だとわかって、15か所に支部が作られた。その支部を束ねる組織として、インドネシア擁護協会財団というのがある。最初は、スマランの法律擁護協会におり、今はインドネシア擁護財団からスマランに出向している形。スマランには弁護士が5人いる。 法律擁護協会が扱う問題は、構造的な問題。構造的とは、1つ目は多数の人に多大な影響を及ぼす、環境破壊のようなもの。一人が被害を受けるのは構造的な問題には含まれない、2つ目は政府や企業と人々の間の不公正が起こっている問題。弁護士として住民を支援するときは無料。住民が法的支援にアクセスする権利を政府が補償しなかいから、それをやってきた。2つの部署があり、一つはプログラム、一つはオペレーション。オペレーション部門が住民に付き添いアドボカシー活動を行い、プログラム部門は資金を得ることが任務。そこで資金が得られれば、弁護士だけでなく活動費、人件費を出したりしている。

  • 2.  いつからバタン火発の反対運動に取り組みを始めましたか?

2012年8月です。

  • 3.  なぜ、現地住民を救済することに関心を持つのでしょうか?

最初は、バタンの住民が事務所に来て、彼らの反対運動に対して法的な支援を行ってほしいという要請があった。法律擁護協会は、石炭火発は構造的な問題だと考え、貧困層を支援することを決めた。構造的な問題とは、小さな民と政府の間で不公正が生じているということ。

  • 4.  バタンで発生した事件の中で、違法だと考えられる例を教えてください。

第一に、まったく何も罪を犯していない住民を逮捕してしまう問題が起こっている。第二に、海洋保護地区に関して石炭火力発電所を建設できるように、指定から解除し建設できるようにしたことが起こっている。ビマセナパワーが雇ったチンピラたちが暴力をふるうという問題もある。反対派の住民を殴ったり、石を投げつけたり、SNSで脅したりするということ。これらは刑法に違反する。さらに、ジャスミン畑が破壊されることもあった。こういった犯罪行為に対し、警察に通報するが、警察は何の措置もとっていない。ジャスミン畑を壊された住民も損害に対して、賠償も出ていない。脅迫が最も頻繁に行われている。会合を禁止したり、横断幕を掲げることを禁止したりすることなどは日常茶飯事。脅迫や嫌がらせは私自身も受けている。軍や警察部隊がやってくることはいつもであり、精神的なダメージを受けている。2013年9月は一番深刻で、直接住民に付き添う活動を止めなければ、チンピラに「殺すぞ」と脅された。最近では2014年3月にアリフと一緒に村にいたときに、チンピラに追いかけられることもあった。チンピラにというだけでなく、バタン県警察から出頭命令が出ることもある。これも脅迫の一種。警察はNGOのことを扇動者と考えている。環境問題に取り組む中でこういったことは頻繁に起こるが、治安部隊側は、住民達の運動を弱体化させるために、住民達に寄り添う人たちに脅迫をするというのを戦略だと考えていると思う。もちろん人間として恐怖がないわけではないが、リスクを負う覚悟はできている。自分の身をささげたのから。

  • ※   (補足説明)インドネシアの国内の脅迫・暴力の状況は日本の企業などとは関係ないとも考えられるが…?

インドネシアの場合、一般的に、エネルギー開発現場、鉱物資源、油やし農園開発などは、だいたい国家にとって重要なプロジェクトとみなされると、治安部隊が警備する。いくつかのケースで、企業が自分たちのプロジェクトを警備してくれるからと、国軍や警察にお金を払うことがある。バタンの件に関してもBPIが治安部隊に対してお金を払って警備している可能性が高い。インドネシアの治安部隊も企業の警備をすることをサイドビジネスにしてお金を稼ぐことをしている。結局、ODAなどの事業に対して、私たちが払う税金が、治安部隊、国軍を雇うことに使われ、反対住民を殺害するなどと言ったことに使われている。 国軍は、事業の中で警備するという権益をもっているが、大統領規則により、国軍の権限を制約することになった。国軍が事業の中で紛争が生じた場合や、警察や地方自治体が自分たちで解決できないと考えた場合、国軍の支援を求めることができる。紛争が起きるとそれを口実に軍の行動を正当化することができる。バタンについても、国軍の関与が拡大していくことになっても、驚かない。その時の理由は、住民達の紛争がひどいことになっていることをあげてくることになると思う。(解説:佐伯奈津子)

  • 5.  日本の法律家が協力できることがありますか?

どういった点に関してでも日本の弁護士との協力関係を築ければと思っている。これから環境影響評価を訴えることも計画しているし、様々な犯罪行為に対して告訴することも考えている。損害賠償も考えている。協力が得られればと思っている。