共同声明:
ODA案件のバングラデシュ石炭火力事業で汚職により現地関係者逮捕
~JICAは速やかな実態解明と貸付実行停止を~
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
気候ネットワーク
日本の政府開発援助(ODA)で過去最大規模の約6,000億円を支援中のバングラデシュ・マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業において、現地電力会社役員が汚職の疑いで逮捕されたと複数の現地メディアが報じた(1)。私たち環境NGOは、外務省及び国際協力機構(JICA)に対して、汚職事件の実態解明が進み適切な再発防止策が講じられるまで、本事業の貸付実行を停止する等、適切な措置を速やかに講じるよう要請する。
現地メディアによれば、マタバリ超々臨界圧石炭火力発電所の運営を行う公営企業バングラデシュ石炭火力発電会社(CPGCBL)の役員、アブル・カラム・アザド氏を、石炭輸入業者の選定において不正を行った疑いがあるとして9月1日に逮捕したとのことである。また、同発電所において電気ケーブルを横領した疑いで事業関係者7名も同日に逮捕され、さらに焼却灰の処理業者入札における不正についても内部告発を受けているとのことである。
JICAは、マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業に対して2014年6月に最初の貸付契約に調印して以降、計7回、総額6,000億円以上の貸付契約を締結してきた。発電所の設計・調達・建設は住友商事、東芝、IHIが請け負ってきた。JICA環境社会配慮ガイドラインでは、支援事業において法令違反等が生じた場合、貸付停止や期限前償還を求めることが可能となっている。同事業では、塩田やエビの養殖で生計を立てていた多くの住民が失業し、補償支払の遅延や代替住宅提供の遅延などにより地域住民が苦しい生活を強いられるなど、ガイドライン違反が指摘されてきた(2)。
したがって、JICAは汚職事件の実態解明が進み適切な再発防止策が講じられるまで、本事業の貸付実行を速やかに停止するべきである。また、不正腐敗行為が明らかになった場合は、「独立行政法人国際協力機構が実施する資金協力事業における不正行為等措置規程」に基づいて関係者の一定期間の契約排除を行うべきである。
脚注
- デイリーサンレポート及びCountry Todayの関連記事
https://www.daily-sun.com/post/764923
https://dailycountrytodaybd.com/story/massive-corruption-against-of-pd-azad-of-matarbari-coal-power-project-alleged - マタバリ石炭火力発電事業(バングラデシュ)のモニタリングhttps://jacses.org/%e3%83%9e%e3%82%bf%e3%83%90%e3%83%aa%e7%9f%b3%e7%82%ad%e7%81%ab%e5%8a%9b%e7%99%ba%e9%9b%bb%e4%ba%8b%e6%a5%ad%ef%bc%88%e3%83%90%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%87%e3%82%b7%e3%83%a5%ef%bc%89%e3%81%ae/
本件に関する問い合わせ先
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org