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【プレスリリース】パリ協定以降、エクエーター銀行は少なくとも200件の化石燃料プロジェクト融資に関与

プレスリリース

パリ協定以降、エクエーター銀行は少なくとも200件の化石燃料プロジェクト融資に関与
〜邦銀大手3行の化石燃料プロジェクト融資件数は世界最多に〜

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大規模インフラプロジェクトへの融資に関する銀行独自の規定、「エクエーター原則/赤道原則(the Equator Principles)」の下で行われた化石燃料産業への融資について、新たな調査(全文・エグゼクティブ・サマリー和訳)が実施された。その結果、2015年末のパリ協定採択以降、エクエーター原則に署名した銀行が少なくとも200件の化石燃料プロジェクトへの融資に関与していることが確認された。同原則には、署名銀行が「パリ協定の目標を支持する」ことが謳われているにもかかわらずである。これらのプロジェクトは、世界の気候に著しい悪影響をもたらすばかりか、地域社会や環境に甚大な被害を与える典型となっている。

国際NGOバンクトラック(Banktrack)の新レポート「エクエーター遵守を謳った気候破壊〜エクエーター原則の下で銀行はいかに化石燃料に融資を行ったか〜(原題:Equator Compliant Climate Destruction: How banks finance fossil fuels under the Equator Principles)」では、パリ協定締結後の2016年以降、エクエーター原則の下で行われた、気候を破壊する化石燃料プロジェクト8件への融資を取り上げた。

調査対象の化石燃料プロジェクト融資で邦銀がトップに

8件には、ベトナムのブンアン2石炭火力発電所が含まれる。同発電所は、建設予定地住民の健康に影響をもたらす大気汚染物質を大量排出するだけでなく、発電所建設のため広大な森林伐採が行われ、また数千人の住民が移住を余儀なくされる。プロジェクトへの融資を行ったのは三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行である。

またカナダの先住民族ウェットスウェテン(Wet’suwet’en)の土地において、住民の同意なしで進められているコースタル・ガスリンク・パイプライン建設は、汚染やディーゼル燃料流出をはじめとした、多数の環境リスクを抱える。同プロジェクトに融資を行っていることを報告したエクエーター銀行はモントリオール銀行、スペインのカイシャバンク、カナダ帝国商業銀行、シティバンク、ナショナルオーストラリア銀行、カナダロイヤル銀行、ならびにスコシアバンクだが、これ以外に、融資しながら報告を怠っているエクエーター銀行が多数存在し、邦銀4行も含まれる。10月19日、ウェットスウェテンのギディムテン(Gidimt’en)・クラン(氏族)は、パイプラインプロジェクトに投融資した35以上の投資家および銀行に対し、支援撤回を求める書簡を提出した。

さらに年間およそ4,400万トンの二酸化炭素排出量が見込まれる、モザンビークLNGプロジェクトは、現在も武力衝突が続く困難な地域に立地する。武装勢力による攻撃により、また攻撃からプロジェクトの施設を守るため軍や民間警備隊が派遣されたことで、状況はますます悪化している。同プロジェクトには、仏クレディ・アグリコル銀行や南アフリカのファーストランド銀行が融資を報告しているものの、これ以外にも融資しながら報告を怠っているエクエーター銀行が多数存在し、邦銀5行も含まれる。

なお、チレボン石炭火力発電所2号機(インドネシア)、神戸石炭火力発電所、東アフリカ原油パイプライン(EACOP)などを含むケーススタディで取り上げられた8件全てに邦銀が関与し、調査対象200件のうちでも邦銀大手3行(三井住友・三菱UFJ・みずほ)の融資件数は1位〜3位を占める。
化石燃料拡大プロジェクトは1.5度目標と整合しない

また「Banking on Climate Chaos(気候カオスをもたらす銀行業務)」の調査結果を分析したところ、2016年から2020年にかけ、エクエーター銀行最大手の37行が各国の化石燃料プロジェクトおよび企業に2.9兆米ドルを提供、うち1.2兆米ドルは化石燃料産業の拡大を担う企業トップ100社に提供されていたことが判明した。この中には、化石燃料を新たに採掘するプロジェクトや新規インフラ建設への資金提供も含まれ、化石燃料依存からの脱却をより困難にしている。

化石燃料拡大プロジェクトに対して現在行われている融資は、最近の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国際エネルギー機関(IEA)、および国際連合(UN)機関からの緊急警告-化石燃料の新規開発は、地球の平均気温の上昇を1.5℃までに抑えることを目指すパリ協定の目標から乖離している-と、ますます反目するものになっている。(1)

エクエーター原則における気候関連要件の遵守状況は不十分

本レポートではさらに、ケーススタディで取り上げた8件について、エクエーター原則に定められた気候関連の要件が実際に満たされているかどうか分析した。要件には、気候変動リスクアセスメント(Climate Change Risk Assessment:CCRA)(2)を実施し公表すること、プロジェクトの操業期間中の温室効果ガス(GHG)排出量を毎年公表すること、GHGの排出量がより少ない選択肢を評価する代替案分析を実施することが盛り込まれている。
8件のうち、エクエーター原則に定められた気候関連の要件を完全に遵守したものは確認されなかった。いずれのプロジェクトも、CCRAを実施した証跡は確認されず、操業期間中のプロジェクトのGHG排出量は適切に公表されていなかった。またいずれも、同原則に従った適切な代替案分析が実施された証跡が確認されなかった。さらに、環境・社会影響アセスメントにおいて、地域住民との適切な協議が充足されていないケースが2件確認された。

本レポートに続いて、バンクトラックはエクエーター銀行に、地球の平均気温の上昇を1.5℃までに抑えるため支援すると明示することで、「パリ協定の目標を支持する」とのコミットメントを果たすよう求めている。それには、エクエーター原則は新規化石燃料プロジェクトやインフラ建設への融資を認めてはならない。またエクエーター原則協会は、先住民族の権利をはじめとした、人権を侵害するプロジェクトへの融資は、同原則下において決して許されないことを明確にしなければならない。

<執筆団体およびパートナー団体によるコメント>

国際NGOバンクトラックのエクエーター原則キャンペーン・コーディネーター兼本レポート執筆者、ハナ・グリープ(Hannah Greep)は「グラスゴー気候サミット(COP26)の開催に伴い、銀行がポートフォリオをパリ協定の1.5℃目標と整合させることは、かつてないほど急務となっています。本レポートにより、環境および社会リスクを管理するツールとして機能するはずのエクエーター原則の全体的な目的と、同原則を採択している銀行による化石燃料プロジェクトへの継続的な融資との間に、深い溝があることが明確にされました。エクエーター原則協会は、同原則のもとこれ以上気候破壊が助長されることのないよう、直ちに対策を講じるべきです」とコメントしました。

国際環境NGO 350.org日本支部ファイナンスキャンペーナー、渡辺瑛莉は「パリ協定以降、エクエーター原則の下で実施された化石燃料プロジェクトへの融資件数は、世界の中でも日本の銀行が最多となっています。『パリ協定の目標を支持する』という原則に反し、邦銀による化石燃料プロジェクトへの融資額は、パンデミック前から一貫して上昇を続けています。この間にも、強化された石炭ポリシーの『例外』規定に当たるとして、ベトナムのブンアン2石炭火力発電所への融資を行うなど、邦銀が掲げる原則と実際の行動との間には大きな隔たりがあります。COP26が開催されている今、影響を受けている人々や将来世代の権利を尊重し、気候崩壊を回避するため、邦銀は化石燃料の段階的支援停止に着手し、代わりに持続可能なソリューションを支援するべきです」と述べました。

国際環境NGO 350.org グローバルキャンペーン・アソシエイトディレクター、ジョンスン・レイリム(Cansin Leylim)は「気候変動によってもたらされる物理的リスクのさらなる証拠が必要だというのならば、今年はドイツの洪水で死者が出たほか、欧州で観測史上2番目に熱い夏を記録、その後トルコ、イタリア、ギリシャで森林火災が急増しました。毎年至るところで目の当たりにするこうした破壊に対し、銀行は責任があります。パリ協定や1.5℃目標を支持すると言いながら、銀行はいまなお化石燃料開発に数兆ドルもの資金を提供しています。銀行が化石燃料プロジェクトに提供した資金のせいで、大勢の人々に破壊がもたらされましたが、その資金を脆弱な地域の人々が気候危機に立ち向かうための活動に投入することもできたはずです。だからこそ人々は立ち上がり銀行に要請します。責任ある行動として化石燃料融資を打ち切り、その分を気候を守るアクションに回してください」とコメントしました。

女性による地球・気候行動ネットワーク(Women’s Earth and Climate Action Network:WECAN )事務局長、オスプレイ・オリエラ・レイク(Osprey Orielle Lake)は「世界が気候カオスに突入するという未曾有の困難を前に、エクエーター銀行や全ての金融機関に求められていることは、生態系の持続可能性と人権・先住民族の権利を尊重することへのリーダーシップと献身を示すことです。汚染を招く化石燃料採掘やインフラ事業への融資を引き揚げることにより、パリ協定で定められた1.5℃目標と人類の未来のために取り組んでいる姿勢を示すことになります。国際社会がCOP26に臨む中、金融機関は化石燃料との親密な関係を断ち切らなければいけません。そしてエクエーター銀行は正義と説明責任を求める声に応じ、化石燃料の代わりに万人のための再生可能な自然エネルギー、公正な経済および生態系、健全な地域社会のための投資を積極的に行うべきです」と述べました。

脚注
  1. バンクトラック主導のプラットフォーム「Fossil Banks No Thanks(化石燃料融資を行う銀行は、もういらない)」で展開中の署名「Global Call on Banks(銀行に対するグローバルな要請)」には、パリ協定の1.5℃目標に整合したポートフォリオを策定するよう銀行に求める市民社会からの期待が込められている。
  2. CCRAは、2020年10月1日に発効したエクエーター原則の最新版である第4版(EP4)に基づく新たな要件であるため、この日以降に融資契約を締結したプロジェクトにのみ適用される。ただし、エクエーター銀行は、義務付けられてはいないものの、発効前から原則の最新版(公表は2019年11月)を取引に適用することが推奨されていたため、本調査は、2019年11月から2020年10月までの間に融資契約を締結したプロジェクトについても、評価対象とした。

関連情報

  1. レポート本文(英文
  2. エグゼクティブ・サマリー和訳(PDF
  3. メディア向け参考資料(国別情報・ケーススタディ)(PDF

連絡先

国際環境NGO 350.org Japan japan@350.org (担当:渡辺瑛莉)

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