日本の官民がインドネシアの中ジャワ州で建設を進めるバタン石炭火力発電事業(200万kW)の現場から、連日、漁業被害の写真や動画が届いています。
漁民がいつも通り漁に出たところ、引き揚げた漁網に混じる黒い塊。魚や貝、イカなどを押し潰さんばかりに網に入っていた物の正体は石炭でした。収穫した魚介類だけでなく、漁網などへの被害も出ています。
【現地からの写真】左から2020年12月17日、18日、20日の漁業被害の様子。一番右は12月22日に石炭が原因で破損した漁網
地元の漁民らによれば、12月17日を皮切りにほぼ毎日、石炭が漁網にかかり引揚げられるケースが報告されているとのことです。石炭の重量で漁網が破れたり、収集不能になったりするケースもあり、漁獲量の減少だけでなく、漁網の修理や買替えなどの追加的費用で漁業者の負担は増すばかりです。
同発電所の試運転の開始を受け、12月初旬からバタン海域に石炭運搬船が往来していたとの情報に鑑みれば、同発電所の試運転に伴う石炭の運搬・搬入過程で、発電所の関連施設や石炭運搬船等から石炭が海に落下し、今回の漁業被害につながった可能性は否めません。
バタン石炭火力発電事業については、地元の農家や漁業者が自分たちの生計手段への影響を懸念し、計画当初から強い反対の声をあげてきました。建設工事が進むにつれ、そうした住民の懸念が次々と形になって彼らの生活に追い打ちをかけています。
その一つは、工事の浚渫作業により出た土砂が海洋に不法投棄されていた影響で、今回と同じような被害を漁民がすでに受けてきたことです。現地の漁民グループが被害状況を一部調べたところ、浚渫土の投棄が始まった2016年12月以降、2019年1月までに少なくとも444の漁網が土に絡まるなどして破損、もしくは、収集不能となっており、漁網の修理費用や新たな漁網の購入費用は、計426,835,000ルピア(約340万円)にのぼっています。
こうした漁網被害は、同事業の建設工事が始まる以前はなかったものです。試運転が終わり、発電所が本格的に稼働すれば、さらに多くの石炭の運搬・搬入が行なわれるため、漁業被害がさらに深刻化することが懸念されます。
同発電所用の石炭の運搬・搬入過程で発電所の関連施設や石炭運搬船等から石炭が海に落下し、漁業被害が起きているのであれば、それは当然あってはならないことです。
事業者であるJ-Power及び伊藤忠商事、また融資を続ける国際協力銀行(JBIC)や民間銀行は、
・今回の問題状況が発生した原因の究明
・再発防止策の策定・実施・モニタリング
・石炭落下によって生じた環境社会/海洋生態系への影響調査
・海洋生態系の原状回復に向けた対策の策定・実施・モニタリング
を含む早急な対応をとるとともに、影響を受けている漁業者らへの説明責任を果たすべきです。
現地からの動画はこちら
グリーンピース・インドネシアのTwitterに投稿されている現地の動画(2020年12月21日)
Ada spesies baru di perairan Batang, Jawa Tengah, warnanya hitam, merusak jaring nelayan dan ancam ekosistem lautan. Buah dari pembangunan PLTU energi kotor batubara Batang yang sejak awal pembangunannya saja sudah menimbulkan berbagai konflik sosial dan kerusakan lingkungan. 😡 pic.twitter.com/YGtAgwRU59
— Greenpeace Indonesia (@GreenpeaceID) December 21, 2020