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インドネシア・チレボン石炭火力:「JBICの貸付停止は急務」 現地住民グループが書簡提出

1月14日、インドネシア・西ジャワ州で日本の官民が推進するチレボン石炭火力 発電事業(★)に反対の声を上げ続けている現地住民グループ・ラペル (Rapel Cirebon)が、国際協力銀行(JBIC。日本政府が全株式保有)に書簡を提出。拡張計画(2号機。100万kW)によって、地元の小規模漁業など生計手段や健康などに及ぶ悪響影がひどくなることを懸念し、これまでもJBICに同計画への貸付を行なわないよう求めてきましたが、昨年、同計画に係る贈収賄事件が明るみに出たことから、JBICの貸付停止はなおさら急務であると訴えました。

(写真左)2019年12月 来日したWALHIスタッフらのJBIC前抗議アクション。汚職案件への公的融資即時停止を求めた。(写真:FoE Japan)
(写真右)2019年7月 1号機の隣接地で進められている2号機の建設工事。住民の生活の糧である多くの塩田が奪われた。(写真:FoE Japan)

また、同書簡では、2号機の建設により、すでに小規模漁民など住民の生活がさらに苦しくなっていること、また、そうした従来の生計手段への甚大な影響のため、2号機の建設労働など他の仕事に依存せざるを得なくなっている状況のなか、十分な雇用機会が提供されていないことから、住民間で雇用をめぐる無用な争いが起きていることも指摘されています。

住民グループは、「事業会社だけでなく、JBICも私たちの環境や社会文化を破壊してきたことに対する責任を取るべき。」「大企業や政治家が巨大な利益を得る腐敗にまみれた汚い事業のため、私たち住民が日々の生活のなかでいかに困難に直面してきたかをJBICは熟考すべき。」と述べています。

チレボン石炭火力・拡張計画には、丸紅とJERA(東京電力と中部電力の合弁会社)が出資し、JBICと日本の3メガバンクが融資を行なっています。気候変動を加速するとして国際的にも批判の的となっている石炭火力発電事業ですが、住民の懸念や意見も真摯に受け止め、日本の官民は貸付停止や投資撤退など、早急にしかるべき対応をとるべきです。

書簡本文
(原文はインドネシア語。以下は、WALHI西ジャワによる英訳のFoE Japanによる和訳)

2020年1月7日

株式会社国際協力銀行(JBIC)
代表取締役総裁 前田 匡史 様

インドネシア西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業に係る
JBIC貸付実行の早急な停止要請
およびJBICとの会合に関する意見

私たちラペル(Rapel, Rakyat Penyelamat Lingkungan:環境保護民衆)は、貴行が依然私たちとの会合を持ちたいと思われていることをインドネシア環境フォーラム(WALHI)西ジャワおよびFoE Japanから知り、私たちの意見を貴行にお伝えしたく本書簡をお送りします。

私たちは会合に関する意見を述べる前に、まず、貴行が建設中のチレボン石炭火力発電所2号機(チレボン2。1,000 MW)に対する貸付実行を停止するという賢明かつ早急な決断を下すよう要請します。実際、これは私たちがチレボン2に強く反対してきていることから、これまでも継続して要求してきたことです。しかし、チレボン2に関連した贈収賄事件が公に明るみとなった今、私たちは益々、貴行がチレボン2に対するいかなる支援も停止しなくてはならないと考えています。

すでにお聞き及びのとおり、2019年4月以降、チレボン2のEPC契約者の一つである現代建設(HDEC)が前チレボン県知事に対して多額の不正資金を供与したという贈収賄疑惑が持ち上がっています。インドネシア汚職撲滅委員会(KPK)は、2019年10月、前チレボン県知事をチレボン2に関連した贈収賄を含むマネーロンダリングの容疑者として発表しました。そして、KPKは2019年11月15日、現代建設の元ゼネラルマネージャーであるヘリー・ジョンをチレボン2の許認可に関連した同じ贈収賄の容疑者として発表しています。現在、元取締役社長ヘル・デワントを含む、CEPR社(チレボン・エナジー・プラサラナ社)の2名の上級幹部も海外渡航禁止措置を受けています。

さらに、現代建設から前チレボン県知事への不正資金の流れの詳細は、前チレボン県知事が有罪判決を受けた別の贈収賄事件の判決文書(2019年5月22日)のなかで明確に記述されています。CEPR社、もしくは、現代建設は、確固たる証拠をもって、同判決文に書かれている内容が真実ではないと説明してきたでしょうか。もし、(そのような)説明がなされていないのであれば、貴行はそれを深刻に受け止め、KPKが依然捜査中で容疑者を起訴していないとしても、チレボン2に対する貸付実行をこれ以上行なってはなりません。贈収賄に関するいくつかの確たる証拠がすでに提示されているような事業への支援を継続するという貴行自身の決定について、貴行は説明責任を果たさなくてはなりません。これは、貴行のレピュテーションの問題でもあるはずです。

貴行との会合については、もし会合がジャカルタで行なわれ、同事業やCEP/CEPR社が提供しているCSRプログラムを受け入れるよう貴行の職員が私たちを説得しないのであれば、私たちは貴行の職員の方々とお会いすることができるでしょう。

仮に会合が石炭火力発電所の事業地近くやチレボン市内で行なわれるなら、会合の会場をCEP/CEPR社に知られないようにすることは不可能です。会場が事業会社の監視下に置かれるような可能性があることを私たちは好みません。

加えて、2017年10月に貴行とお会いした以前の会合での経験から、私たちは、貴行の職員が再びCSRプログラムを提案してくるだけではないかと恐れています。私たちが繰り返してきたとおり、CSRプログラムは私たちにとって真の解決策ではありません。私たちコミュニティーが必要としているのは、私たちの生活に必要なきれいな空気ときれいな水であり、より具体的には、漁業活動に必要な健全な沿岸環境です。

もし私たちの間で会合が持たれるなら、私たちの要求は依然としてチレボン2の建設中止であり、したがって、貴行に対する私たちの要求はチレボン2に対する貸付実行の停止です。チレボン1号機が健康、また小規模漁業や塩づくりを含む生計手段に及ぼした甚大な悪影響のため、私たちのコミュニティーがどれほど苦しんできたか、そして、現在進められているチレボン2の建設がすでに私たちのコミュニティー(の生活)をどれほど妨げ、小規模漁民の生活をより困難なものにしてきているかを私たちは貴行にお伝えしたいです。さらに、事業会社は同事業が地元のコミュニティーに開かれた雇用という良い影響をもたらすことができると主張していますが、現実には、新たな社会紛争が起こってきました。つい最近も、もっと正確に言うのであれば2019年11月末にも、2つの村のコミュニティーが雇用機会をめぐり事業地内でお互いに争いあっていました。(脚注1) 実際、そのような争いはチレボン1号機の建設が始まって以来、すでに起き始めていました。そうした争いによって引き起こされた問題は、短期的には解決されたように見えても、長期的にはそうではありません。それは新たな問題、つまり、コミュニティー間に復讐の感情を生み出し、コミュニティーの社会文化様式が影響を受けてきたのです。事業会社だけでなく、貴行も私たちの環境や社会文化を破壊してきたことに対する責任を取るべきです。

私たちは、大企業や地元の政治家が巨大な利益を得る腐敗にまみれた汚い事業のため、私たち地元コミュニティーが日々の生活のなかでいかに困難に直面してきたかを貴行が熟考してくれることを期待します。

貴行のご理解とご配慮に感謝致します。

(ラペル・チレボンのリーダー2名による署名)

Cc: 財務大臣 麻生 太郎 様
国際協力銀行 環境ガイドライン担当審査役 豊永 晋輔 様、星野 一昭 様

脚注1:https://jabar.pojoksatu.id/cirebon/2019/11/30/dugaan-penyebab-terjadinya-tawuran-di-pltu-ii-cirebon-terkait-penerimaan-pekerja-baru/

(★)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。
2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団(三菱UFJ、三井住友、みずほ、ING)が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では、アクセス道路の整備や土地造成作業などが終わり、本格的な工事が始まっている。2022年に運転開始見込み。

書簡のPDFはこちら

現地住民グループの書簡(和訳)PDF
現地住民グループの書簡(英訳)PDF