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ミャンマー・石炭火力発電>カレン州でも市民団体が抗議声明

※この抗議声明は特定非営利活動法人メコン・ウォッチからの転載です。

ミャンマー・石炭火力発電>カレン州パアンの計画を許可しないと連邦政府大臣

(メコン河開発メールニュース2018年4月6日)

ミャンマー(ビルマ)の新しい電力・エネルギー大臣が、カレン州パアンで計画が持ち上がっていた石炭火力発電所について、許可を付与しないと3月14日に発表しました。
同事業については地元住民を中心に、強い反対が起きていたことは、お伝えしてきた通りです。(リンク

大臣の発表を受け、これまで粘り強く反対運動を展開してきた地元コミュニティと市民社会グループは「勝利」とし、4月4日に131の団体が署名する形で、声明が発出されました。そして、この声明の発出に合わせて、地元ではサッカー大会「No Coal Football Cup(ノー石炭杯)」が開催されています。


(写真:(左)ユニフォームにもNO COAL、(中央)参加したチーム、(右)住民はNO COALと書かれたハチマキをして観戦)

声明では、大臣の発表を歓迎する一方で、パアンの計画に加え、ミャンマー政府が大臣の発言に続き、すべての石炭火力発電所の計画を正式に中止するよう、そして再生エネルギー事業を実施する政策を打ち出すよう訴えています。

以下、ミャンマーの住民・市民社会グループ131団体による声明の和訳です。(PDF)

ミャンマー政府によるパアン石炭火力発電所の中止に関する声明

2018 年 4 月 4 日

ミャンマーのU Win Khaing電力・エネルギー大臣は、3月14日に開かれた記者会見で、ミャンマー政府がカレン州パアンで計画されている1,280 MWの石炭火力発電所に許可を付与しないことを発表しました。同石炭火力発電計画に対し、粘り強く反対運動を行なってきた地元コミュニティと市民社会グループは、この勝利を祝福し、新しいエネルギー大臣からのこの朗報を歓迎します。

「私たちは同事業が中止されたという連邦政府大臣の発表を聞き、大変嬉しく思うとともに、感謝しています。しかし、この喜ばしい結果とは裏腹に、私たちは引き続き注意を払っています。州レベルの政府代表らが連邦政府大臣の後を追って、同事業の中止を支持する発表を行なうことで、私たちの懸念が小さくなることを願っています。」と、Saw Aung Than Htweは述べました。

以下に署名した131団体・ネットワークは、ミャンマー政府が大臣の発言に続き、停止中のものも含め、すべての石炭火力発電所の計画を正式に中止するよう求めます。また、私たちは、ミャンマーの環境や人々に破壊的、かつ、修復不可能な損害を引き起こすことになる石炭火力発電所について、ミャンマー政府が全国的なモラトリアムの措置をとるよう求めます。さらに、私たちは、ミャンマー政府が、コミュニティのニーズや要求に一致した持続可能な再生可能エネルギー事業の実施を促進・規定する政策・法律をつくることを求めます。

2017年4月、カレン州政府(KSG)とトーヨー・タイ・パワー・ミャンマー社(TTCL)は、パアン石炭火力発電所計画の実行可能性調査を実施するための覚書に署名しました。2017年6月、カレン州を拠点とする市民社会グループ42団体とその他の市民社会グループ130団体は、同事業に反対する声明を発出しています。2017年10月には、カレン州政府とTTCLは合弁企業をつくり、815エーカーの土地について、コンセッション期間40年のリース合意を結びました。事業計画地は、サルウィン川沿いでした。地元の市民社会グループは、同事業に反対するカレン州住民の署名約2,980筆を集め、カレン州知事に提出しました。2017年11月には、地元コミュニティが同事業に反対する抗議集会を開きました。こうした反対を知っているにもかかわらず、パアンでの同事業に影響を与え、促進しようと、TTCLはカレン州政府にパアンの人々の訪問団を組織するよう説得し、日本の碧南石炭火力発電所の視察に連れて行きました。

「同事業は連邦政府レベルで中止を宣言されましたが、州政府レベルでは依然として不明確です。同事業に関して入手できる情報は依然限られており、最近も同事業地でTTCLが土地を購入していました。」と、Saw Nay Lin Htunは述べました。

TTCLは、モン州アンディンでの事業実施に失敗した後、カレン州のパアン事業を試みていたとの報道もありました。アンディンの地元コミュニティは、同事業に強く反対していました。2015年には約5,000人が同事業の抗議集会に参加し、この強く、絶え間ない反対の声の結果、アンディンでの事業は中止されました。

ミャンマーのコミュニティは、自分たちの土地からの強制移転、大気・水質汚染、その帰結としての生計手段の喪失、そして健康被害に対する深刻な懸念を示し、ミャンマー中で、石炭火力発電事業に継続して反対してきました。再生可能エネルギーの選択肢があることから、パアン(石炭火力)のような事業は不必要で、妥当ではないものです。発展途上国は、先進国のほぼ2倍の速さで再生可能エネルギー事業を整備してきています。この転換に寄与している要素として、部材のコストが低下していることや再生可能エネルギー技術の効率化が進んでいることがあげられます。また、再生可能エネルギー事業は、石炭火力や大型水力発電事業よりも、ずっと速く、ミャンマー中のコミュニティに電気をもたらすことができます。

ミャンマー農村部のコミュニティはすでに、地域のエネルギー・ニーズに調和し、そこにある自然資源を保全する形の持続可能な再生可能エネルギー事業をオフ・グリッド形式で3,500以上も実現し、成功しています。

「今はまさに、持続可能かつ分散型の、コミュニティが管理する代替エネルギーに向けた方法を話し合っていく好機です。そして、エネルギー・ガバナンスのために、明確で住民中心の計画を立てる場を切り開いていくときです。」と、Saw Tha Phoeは述べました。

石炭からの排出物が気候変動の主要な原因となっており、環境や人々の健康に破壊的な影響をもたらしていることを世界中のより多くの人々が知るところとなったことも、世界の流れが再生可能エネルギーへの転換に傾いている理由です。もし、ミャンマーが石炭火力発電事業の開発を続けるとしたら、再生可能エネルギーのリーダーになる機会を逸し、その代わりに、コミュニティの健康や環境を犠牲にすることになります。化石燃料を発電のために利用し続けることは、もう正当化できなくなっています。

※ミャンマー語の原文の英訳を和訳したもの。ミャンマーの住民・市民社会グループからの賛同リスト(131団体)は、PDFの中に記載されています。

(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)