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インドネシア・インドラマユ石炭火力 生計手段の喪失に直面している住民が環境許認可の取消を求め、行政訴訟

7月5日、国際協力機構(JICA)が事前調査・基本設計等をすでに支援し、これから建設のための本体借款の供与を検討しようとしている「インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業」(※)について、住民3名が原告となり、
バンドゥン行政裁判所に環境訴訟を起こしました。

(写真左)バンドゥン地裁に訴状を提出した原告住民3名(2017年7月) (写真右)アクセス道路の工事が耕作を続ける農民の生活を脅かしている(7月)

 

同訴訟では、同事業の拡張計画(1,000 MW×2基)に関する環境アセスメントの策定にあたり住民の参加や情報公開が不十分であった点、既存の発電所(330 MW×3基)が稼働した後の環境状況を評価していない点、環境許認可が法律に定め
られた手続きを踏まずに発行された点などを指摘。インドラマユ県が拡張計画への環境許認可を不当に発行したとして、同許認可の取消しを求めています。

同事業では、既存の発電所による影響で、住民が漁業・農業への被害や健康被害にすでに直面しており、この発電所の隣接地に建設される新規の発電所で被害が拡大することを懸念してきました。

(写真左)4月初頭に始まったアクセス道路の工事(5月)(写真右)5月下旬に同事業予定地内に立てられた掲示版。公有地への立入/利用禁止と刑法による処罰内容が記されている(7月)

しかし、こうした住民の声は無視され続け、4月初頭には、同拡張計画用のアクセス道路の工事をインドネシア国有電力会社(PLN)が開始。今回の訴訟の原告らが農業労働者として耕作している農地も、重機による土地造成埋め立てが今に

も始められようとしており、農民は生計手段を失うか否かの非常に切迫した状況に追い込まれています。

また、5月下旬には、同事業予定地内の土地収用が完了した農地に「公有地に侵入/利用すると、刑法で処せられる可能性がある。刑法167条 禁固9カ月、刑法389条 禁固2年8カ月、刑法551条 罰金。」と記載された掲示がPLNによって立てられました。小作や農業労働者は7月の田植え期に入り、農作業をより活発に継続していますが、いつ強制立退きにあってもおかしくない状況となっています。

今後、同環境訴訟については、来月から公判が始まり、11月頃までには判決が下される見通しです。

日本政府・JICAは、日本の政府開発援助(ODA)による被害住民を再び生み出さないためにも、住民の反対・懸念の声にしっかりと耳を傾け、同事業に税金を投じぬよう、賢明な対応が求められています。

※ インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
2,000 MW(1,000 MW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(1,000 MW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。
すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、エンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を2013年3月に締結。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。

現地NGOのプレスリリース(和訳:原文はインドネシア語)

プレスリリース
2017年7月6日(木)

西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
地元住民、環境許認可を不当に発行したインドラマユ県を提訴

インドラマユ県パトロール郡ムカルサリ村の住民らは、7月5日、同県がインドラマユ石炭火力発電事業の拡張計画に関して発行した環境許認可についてバンドゥン行政裁判所に提訴した後、インドネシア環境フォーラム(WALHI)西ジャワ州事務所を訪れた。彼らは、WALHI西ジャワに、自分たちが直面している訴訟に関する助言や支援を求める書簡を届けに来た。

住民の一人であるタニマン氏は、「影響住民であるにもかかわらず、環境許認可の発行に関する情報は一切なく、参加の機会も一切なかった。」と述べた。彼らは大気環境の悪化を懸念しており、自分たちや子供たちを含むコミュニティの健康リスクが高まるのではと心配している。また、彼らが耕作している農地がなくなることによる生計手段の喪失も起こる。地元では、すでに2010年から(注:試運転期間を含む)稼働している発電所1号機による海洋汚染や大気汚染がみられるが、状況は悪化するだろう。

「現在、ジャワ-バリ系統の電力システムには多くの強みがある。すなわち、33 GWの発電設備容量がある一方で、ピーク需要は18~24 GWであり、9~15 GWの余剰電力がある状態だ。また、電力需要増加率はたった3%である。これは5年後まで、電力供給に依然余剰があることを示しており、これに加え、現在建設中の発電所が幾つかあることを考慮する必要がある。8年前に計画されたインドラマユ石炭火力発電事業の拡張計画は、今日や今後10年の状況にもはや適していないものだ。」と、WALHIの都市・エネルギーキャンペーン担当のドゥウィ・サウンは述べた。

「気候正義のための提言チーム」のウィリー・ハナフィは、インドラマユ県知事が2015年5月26日付でインドネシア国有電力会社(PLN)第8ユニットに対して発行した西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業の拡張計画(1000 MW×2基)に係る環境許認可(No. 660/ Kep. 51 A-BLH/2015)が法律に則っていないと、述べた。

一つには、インドラマユ石炭火力発電事業の拡張計画に係る環境許認可が、環境アセスメント(AMDAL)は依然として改善/改良されなくてはならないという、環境アセスメント評価委員会の合意文書に基づき発行されていることにある。つまり、インドラマユ県政府は(改善等が必要であるとしている)同合意文書を基に許認可を出したということだ。

一方、訴状では住民たちが環境アセスメント作成のプロセスに関与していないという手続き上の欠陥があることを指摘しており、この訴状の提出は、(環境許認可に関する)2012年政令第27号、および、(環境アセスメント住民参加および環境許認可に関する)2012年環境大臣規則第17号に基づいている。

加えて、AMDALの文書自体に法的欠陥や誤り、文書や情報の誤用があり、相当な欠陥を孕むものとなっている。まず、AMDALは2010年に準備されたが、環境許認可は2015年に発行されている。これは、環境に係る分析が有用なものでなく、適切な分析が示されたものでないことを暗示している。

AMDALが有用でない例としては、大気環境のデータが不完全であり、情報やデータの有効性に疑問があること、また、インドラマユ石炭火力発電所1号機(330 MW×3基)の稼働後の状況を評価していないことから、海洋の水質のデータが不完全であることがある。その他、AMDALの内容については多くの疑問点が見られる。インドラマユ石炭火力発電事業の環境許認可に係る住民の(取消)要求の取り組みは、手続上の欠陥、法的欠陥、内容上の欠陥から非常に根本的な問題を指摘したものである。

連絡先:
気候正義のための提言チーム
インドネシア環境フォーラム(WALHI)

参考

現地住民の声 ”インドラマユでの炭素との闘い “ (インドネシア環境フォーラム/WALHI西ジャワ制作)