インドネシア チレボン住民緊急来日報告ー 5月24日〜25日(異議申立書提出)

日本、韓国、インドネシアの合弁企業が進めている「インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電所事業」の拡張計画に反対している住民グループと彼らを支援してきた弁護士、NGOメンバーが、融資を決定した国際協力銀行(JBIC)に対して異議申立てを行うために緊急来日しました。5月24日と25日に行われた、記者会見・異議申立書等の提出、セミナー、抗議アクションの様子を報告します。

◎緊急来日の背景

日本の官民が推進してきた西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業は、2012年に商業運転が開始された第1号機(660MW)による生計手段への影響や環境社会配慮の問題が解決されないまま、2号機(1,000MW)を建設する拡張計画が進んでおり、住民たちは事業の中止を求め続けています。そして、住民たちがこの拡張計画に対して起こした行政訴訟で、4月半ばに住民勝訴の判決が出たにもかかわらず、JBICは融資を決定しました。こうした事態を受け、住民およびNGOがJBICおよび『経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針』に係る日本連絡窓口(NCP)に対し異議申立書等を直接提出するため、また、この事業の現状やリスクを報告することを目的として緊急来日することになりました。

※各国連絡窓口(NCP:National Contact Points)
『OECD多国籍企業行動指針』の実施に関連して生じた個別の問題解決に寄与し、同指針を効果的にするため、同指針の参加各国に設立。日本NCPは外務省、厚労省、経産省の各担当課で構成。

記者会見と異議申立書提出(5月24日)

24日の午前に記者会見を、午後にJBICおよびNCPへの異議申立書等の提出を行いました。

記者会見では、住民グループRAPELのメンバー2名から西ジャワ州政府を提訴するに至ったチレボン石炭火力発電事業の現状を訴え、現地裁判を支援してきた弁護士から訴訟内容と地裁判決の要旨を説明してもらったのに続き、現地NGO(WALHI)から本事業の抱えるリスクについての見解が述べられました。住民および彼らを支援する弁護士とNGOは、「現地国の法律遵守」や「環境許認可の提出」等を融資事業に求めるJBIC自身の環境社会ガイドライン違反を指摘するとともに、公的融資の貸付をしないように要請しました。また、NGO 2団体は同時にNCPに対して同拡張計画に出資する日本企業が、国内法の遵守等を企業行動の原則とする『OECD多国籍企業行動指針』に違反していることについて問題提起しました。

同日、午後には国会議員の立ち合いのもと、住民メンバーが異議申立書をJBICに提出しました。

写真:要請書を手渡すチレボン住民

 

住民グループRAPELからJBICへの異議申立書/NGO 2団体から日本NCPに対する問題提起書

  • 異議申立書:Objection Regarding the Cirebon Coal-fired Power Plant Project – Unit 2
    in West Java, Indonesia (英文PDF)
  • 同異議申立書の添付資料:Annex1(PDF)
  • インドネシア・チレボン石炭火力発電事業 拡張計画 JBIC異議申し立て制度に基づく住民の申立書 概要(PDF)

 

  • 問題提起書:Complaint Against Marubeni and JERA Regarding the Cirebon Coal-fired
    Power Plant Project in Indonesia (英文PDF
  • インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業 拡張計画 OECD 多国籍企業行動指針に基づく問題提起書 概要(PDF)

 

住民訴訟原告団 緊急来日セミナー(5月24日)

写真:都内でのセミナー

 

24日の夜には「【住民訴訟原告団・緊急来日セミナー】インドネシア・チレボンの生活を壊す石炭火力にNo! – 住民の権利、地裁判決、事業リスクについて考える-」を開催し、報告発表と質疑応答を行いました。以下に報告の要約をご紹介します。

1.チレボン石炭火力発電事業の概要と日本の関わり

本事業に関して概要とこれまでの経緯を説明。1号機の建設・操業に伴い、地域住民の生計手段に甚だしい被害が及んでおり、何ら有効な措置がとられないまま2号機が建設されようとしている。すでに2号機建設に向けた土地造成などが進められているが、行政訴訟で事業計画の根本である環境許認可の取得に違法性があると判断された。バンドゥン地裁による2号機の環境許認可取消判決の前日に、JBICが融資契約を締結したことは遺憾であり、本件の慎重な再考を求めていく。

2.チレボン石炭火力発電事業に関する現地報告と日本への警鐘

1)既設発電所から拡張計画に至るまでの住民の反対運動(RAPEL 住民リーダー)
1号機が建設されたアスタナジャプラ郡カンチ・クロン村では、生計手段が奪われた住民が困窮している上、住民間の対立など社会的影響も生じている。石炭灰による大気汚染に起因する健康被害(呼吸器疾患)も起きており、死亡者も出ている。RAPELは1号機事業の工事が開始された2007年から反対活動を続けているが、事業者側は住民を無視し、発電事業による環境影響はないと主張する。JBICに対しては書簡を送るなどチレボン発電事業の問題を訴えてきたが、何の返答も対応もなかった。3回目の書簡でやっと審査役を現地派遣してきたが、客観性に欠ける調査結果が出されたのみ。行政訴訟で住民が勝訴したにも関わらず融資決定が下され、工事も継続していることは現地の住民の権利を軽視している。

2)既設発電所と拡張計画による住民の生活への影響(RAPEL 住民メンバー)
発電所が建設される前から船を使わない小規模沿岸漁業(歩ける範囲の魚貝類を採る漁業)をしてきたが、漁獲量が激減し漁場を移動する必要に迫られ、今は基本的な生計手段を奪われた状態。発電所の建設前は1日25~50kgの漁獲量だったが、発電所が建設された後は1日1kgしか獲れない。発電所ができても電気は地元の村に供給されない。地元の電気は足りている。この上、チレボンには、今回の拡張計画以外にも、あと2つの発電所計画があるが、これらがすべて建設された場合、さらに生活環境が悪化することが懸念される。

3)チレボン石炭火力発電所の環境許認可に関わる訴訟(訴訟担当弁護士)-発表資料参照
西ジャワ州バンドゥン地裁での行政訴訟において住民の代理人を務めた。本件で主張したい論点は3つ。
①チレボン県には、チレボン1号機に加えて3つの拡張計画があり、1つの県内にこれだけの発電所が密集した場合の環境負荷は大きく、住民への影響は避けられない。次々に建設されると環境破壊、健康被害が続出すると想定される。
②インドネシア・チレボン県の空間計画条例では、火力発電所の建設が認められるのは県内の1つの郡のみにもかかわらず、同事業の計画は3郡にまたがっている点で条例に違反している。空間計画条例を無効にすることはできず、住民訴訟でもこの条例に反して3郡にまたがる建設を許可する合理的理由は示されていない。
➂チレボン石炭発電所拡張事業のリスクは大きい。実際に住民の反対が続いていること、この事業計画が人口過密地域で進められていること、今後も健康被害などで訴訟が起こる可能性があることなどから、本事業計画そのものが環境社会的なリスクを抱えているのは明白である。
さらに、空間計画法では、空間計画に違反した者に対し、禁固3年、5億ルピアという刑事罰が課される条項もある。そうなると、裁判の当事者ではないものの、JBICおよび日本の融資銀行も刑事罰に加担していることになる可能性は捨てきれず、企業、ひいては、国としての評判にも悪影響を与えることになる。

4)私たちに必要ない発電所-ジャワ・バリ系統の石炭火力発電所(WALHI)-発表資料参照
ジャワ-バリ系統の発電設備容量の実績(2017年4月データ)は32GW なのに対し、ピーク電源需要は25GW(2016年10月データ)でありピーク時においても余剰が出る状態である。したがって、ジャワ-バリ系統にこれ以上の電力は不要。発電所が建設されて稼働を開始した場合、テイク・オア・ペイ契約により発電される電気が使われても使われなくても電力会社は事業者に支払いをする必要があるが、これが政府の財政を圧迫し、巡り巡って住民の電気料金上昇に跳ね返っている。2号機が稼働すれば状況は悪化すると予測される。また、石炭関連事業ではないが、チレボン同様に環境許認可取り消しを求めた訴訟が起きたセメント工場のケースでは、セメント工場側が最高裁でも敗訴となり工場を稼働できないまま巨額の損失を抱える結果となった。空間計画の変更も困難であるため、このまま建設を進めればチレボン事業も同様の損失を被るリスクがある。

3.質疑応答

 

抗議アクション(5月25日)

25日(木)は、インドネシア西ジャワ州のチレボン石炭火力・拡張計画に反対するチレボン住民、彼らを支援している弁護士、現地NGOのメンバーに加えて日本のNGOメンバーが集まり、JBIC前で抗議アクションを行いました。

写真:JBIC前での抗議アクション

 

 

 

 

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セミナー発表資料(掲載確認)

  • チレボン石炭火力発電所の環境許認可に関わる訴訟(訴訟担当弁護士
  • 私たちに必要ない発電所-ジャワ・バリ系統の石炭火力発電所(WALHI)

関連文書

  • インドネシア・チレボン石炭火力発電事業(ファクトシート)(PDF)
  • 【緊急声明】 インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業・拡張計画 現地地裁が環境許認可の取消判決  JBIC は違法事業への融資決定を早急に見直し、撤回を!―現地国の司法判断を無視した JBIC の拙速な融資決定に厳重抗議―(2017年4月19日)(PDF)
  • 現地NGO(WALHI)プレスリリース「チレボン発電所に係る環境許認可の取消判決に対する政府の控訴は不当、かつ、地方条例の明確な違反」住民グループと環境団体が批判(2017年5月4日)(PDF)
  • インドネシア・チレボン石炭火力発電事業 OECD多国籍企業行動指針に基づく問題提起書 概要(PDF)
  • JBIC環境社会配慮ガイドライン異議申立手続の概要(PDF)
  • OECD多国籍企業行動指針の問題提起手続の概要(PDF)
  • 件名:日本政府はインドネシア・西ジャワ州チレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への融資を拒否すべき(NGOから内閣総理大臣他への要請書)(2017年3月23日)(和訳PDF)
  • Re: Japanese Government must Reject Financing the Cirebon and Indramayu Coal-fired Power Plants, West Java, Indonesia (2017年3月23日)(英文PDF)

関連リンク

Court orders government to revoke Cirebon coal power plant permit – JBIC should respect Indonesian law and drop financing plans 2017/4/20(link to WALHI