STOP 日本の化石燃料融資にNO!

インドネシア・西ジャワ州チレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への 融資拒否を求める国際要請書(47ヶ国280団体署名)を提出

インドネシア西ジャワ州インドラマユ住民来日報告につづき、住民が日本政府関係各省およびJICA(国際協力機構)、JBIC(国際協力銀行)に提出した要請書につき、詳細をお伝えします。

3月23日、インドネシアおよび日本の市民団体の呼び掛けにより集められた47カ国280団体からの署名とともに、インドネシアから来日したインドラマユ石炭火力発電事業への反対を続ける住民3名と、チレボン石炭火力発電事業の問題に住民と取り組んできたインドネシア環境フォーラム(WALHI)のスタッフが、これから融資を行なおうとしているインドネシア西ジャワ州のチレボン石炭火力・拡張計画(1,000 MW)およびインドラマユ石炭火力・拡張計画(1,000MW)について公的融資を早急に拒否するように求める要請書を外務省、財務省、JICA、JBICにそれぞれ手交しました。

外務省に要請書を手交する住民

JICAに要請書を手交する住民

 

 

 

 

 

 

 

日本政府が関与するインドネシア・ジャワ島の新規石炭火力発電所の発電容量は、すでに融資が決定された中ジャワ州バタン石炭火力発電事業(2,000 MW)とタンジュンジャティB石炭火力・再拡張事業(2,000 MW)を含め、合計6,000メガワット(MW)以上にものぼります。しかし、ジャワ・バリ系統の供給予備率の余剰がすでに30%以上に達しているなか、事業の必要性や代替案の検討についても徹底した分析・議論が必要な状況です。

日本政府は、住民が望まず、国際社会からの批判も大きい石炭火力発電事業への融資をこれ以上行なわないことが求められています。

要請書本文(和訳)

2017年3月23日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
外務大臣 岸田 文雄 様
経済産業大臣 世耕 弘成 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 近藤 章 様
国際協力機構 理事長 北岡 伸一 様
日本貿易保険 理事長 板東 一彦 様

件名:日本政府はインドネシア・西ジャワ州チレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への融資を拒否すべき

世界各国からの以下の署名団体は、パリ協定が2015年に採択され、また、2016年に発効されたにもかかわらず、インド、インドネシア、ベトナム、ボツワナ、モンゴルを含む海外での新規の石炭火力発電所の建設を推進する役割を果たしている日本に対し、深い憂慮の念を抱いてきました。私たちは、パリ協定の実現に向けて、地球の気温上昇を2°C未満に抑えるため、新規の石炭火力発電所の建設はもはや許されないと理解しています。

直近では、インドネシア・中ジャワ州タンジュンジャティB石炭火力発電事業の再拡張計画(5、6号機。総容量2,000 MW)について、フランスの民間銀行が自身の石炭融資を削減する公約に沿って同計画への(融資)銀行団から撤退した後も、今年2月、国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)が融資供与および付保を決定したことを私たちは強く非難します。この決定は、同じく中ジャワ州のバタン石炭火力発電事業(2,000 MW)に対し、2016年6月、JBICが融資供与を決定してから1年も経たぬうちになされています。

また、日本が現在、インドネシア・西ジャワ州において新たに2つの石炭火力発電所への融資を検討していることは大変注意を喚起するものです。すなわち、JBICとNEXIが支援予定のチレボン石炭火力発電事業・拡張計画(1,000 MW)と国際協力機構(JICA)が融資予定のインドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(1,000 MW)です。私たちは、日本政府がこれら2つの石炭火力発電所への融資を早急に拒否するよう求めます。そうした融資を行なうことは、パリ協定や温室効果ガス排出量削減目標となる2°C目標に沿って、世界が劇的な炭素排出削減を行っている努力を蔑ろにするものだからです。さらに、これら2つの事業は以下の環境社会面での懸念を伴っていることから、日本の公的機関は各々のもつ環境社会ガイドラインに則り、両事業への融資を拒否すべきです。

チレボンでは、JBICとNEXIが融資供与、および、付保を行なった既存発電所の影響を受けてきた住民らが、2016年11月、JBIC 環境ガイドライン担当審査役に異議申立書を提出しました。同申立書のなかで取り上げられている主な問題の一つは、既存発電所に伴う生計手段および収入機会の喪失でした。チレボン発電所の拡張計画は、同様の影響が生計手段に及ぶのではないかという懸念を喚起するものです。しかし、現在のところ、小規模漁業や製塩業、農業等に携わっている住民に対し、彼らの生計手段を改善、もしくは、少なくとも回復するための適切かつ効果的な対策は欠如したままです。したがって、生計手段への影響から地域住民の生活の悪化が繰り返し起きるでしょう。これは、「プロジェクト実施主体者等は、移転住民が以前の生活水準や収入機会、生産水準において改善または少なくとも回復できるように努めなければならない。」と規定するJBICおよびNEXIの環境社会ガイドラインに明確に違反しています。

また、同拡張計画の影響を受ける住民らは、西ジャワ州政府を相手取り訴訟を起こしています。州政府が、チレボン県空間計画が未修正のままであったり、環境影響評価の策定過程でコミュニティーの参加が確保されていなかったりと、不当に環境許認可を発行したためです。同訴訟では、環境許認可の無効を行政裁判所に法的に求めています。公判は今年1月11日に開始され、現在も継続中です。日本政府は、同環境許認可の無効が法的に確定した場合、同チレボン拡張計画が「相手国及び当該地方の政府等が定めた環境に関する法令の遵守」や「相手国政府等の環境許認可証明書の提出」を要件とするJBICおよびNEXIの環境社会ガイドラインに明確に違反することになるという点を十分心得ておくべきです。

インドラマユでは、地域住民が昨年から5回にわたりJICAに要請書を直接送付し、石炭火力発電所の拡張計画への強い反対を表明してきました。同書簡のなかで、住民らは漁業や農業など生計手段、また、健康への影響に対する懸念を繰り返し伝えてきました。このように、同拡張計画について、JICA環境社会ガイドラインで要件としている「社会的合意」が確保されていないことは明白です。

また、インドラマユ拡張計画に関する環境アセスメントや土地収用・補償措置において、インドネシア政府当局が適切かつ透明性のあるプロセスの確保を怠ってきたことが報告されています。

一例をあげると、すでに昨年12月から政府当局が地権者への補償金を支払っており、この3月にも同拡張計画の土地造成作業が開始される予定のようですが、土地収用・補償計画書や生計回復計画書は草稿版も最終版も完成しておらず、今日まで依然公開されていない状況です(3月中旬時点)。当局からの補償金を受領後、小作農家への作物に係る補償金を手渡す役割を割り当てられた地権者らが、通常、一切の文書提示や適切な説明を行なわないなか、小作農家は作物補償に対する意見を表明する機会も、ましてやその補償水準を知る機会すらも与えられていません。同様に、漁民や日雇い農業労働者が彼らの生計手段や収入機会の喪失に対する措置を知る機会も確保されていません。これは、「非自発的住民移転及び生計手段の喪失に係る対策の立案、実施、モニタリングにおける影響を受ける人々の適切な参加」や「住民移転計画の公開」を要件とするJICA環境社会ガイドラインの致命的な違反です。

上述したインドネシアにおける4つの事業はすべてジャワ島に位置しており、計画どおり実施されると合計6,000 MWの発電容量になります。一方で、ジャワ・バリ系統の電力予備率の余剰分はすでに32.34パーセントに達していると報告されています。ある政府の報告書では、現在、建設中のすべての発電所が完成すれば、2019年にはジャワ・バリ系統の電力予備率の余剰が63 パーセントに達しうると述べています。 これは、インドネシア政府が経済成長率を過剰に見積もったため、電力需要が予測したほど伸びてきていないためです。したがって、これらの石炭火力発電事業が一義的に一般市民向けの発電であり、貧困層へのエネルギー・アクセスの解決に向けたものであるのか、また、より賢明な代替案の選択が可能ではないか、徹底した分析がなされるべきです。

インドネシアのコミュニティーは日本の融資する石炭火力事業のために、土地収奪や環境悪化、人権侵害、地域社会の分断の犠牲となり、すでに巨大すぎる苦難を強いられてきました。私たちは、日本政府が西ジャワ州のチレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への融資を早急に拒否するよう要求します。日本は石炭関連事業への融資を止め、地域の大気や水を汚染することなく、また、気候変動も助長することのない電気へのアクセスを増進するクリーンかつ持続可能な再生可能エネルギー計画に転換していくべきです。

Cc: 丸紅株式会社 代表取締役社長 國分 文也 様
株式会社JERA 代表取締役社長 垣見祐二 様
伊藤忠商事株式会社 代表取締役社長 岡藤 正広 様
電源開発株式会社(J-POWER) 取締役社長 渡部 肇史 様
住友商事株式会社 取締役社長 中村 邦晴 様
関西電力株式会社 取締役社長 岩根 茂樹 様
株式会社みずほ銀行 取締役頭取 林 信秀 様
株式会社三井住友銀行 頭取兼最高執行役員 國部 毅 様
株式会社三菱東京UFJ銀行 頭取 小山田 隆 様
三井住友信託銀行株式会社 取締役社長 常陰 均 様
三菱UFJ信託銀行株式会社 取締役社長 池谷 幹男 様
農林中央金庫 代表理事理事長 河野 良雄 様
株式会社新生銀行 代表取締役社長 工藤 英之 様
韓国輸出入銀行 総裁 Lee Duk-Hoon 様
Mr. Philippe Brassac, Chief Executive Officer, Credit Agricole S.A.
クレディ・アグリコル銀行 東京支店 代表者 Antoine Sirgi 様
Mr. Ralph Hamers, CEO and chairman Executive Board, ING Group
アイエヌジーバンクN.V. 東京支店 代表者 Yuichi Hirasawa 様
Mr. Piyush Gupta, Chief Executive Officer, DBS Bank Ltd
DBS銀行東京支店 支店長 伊藤 広史 様
Mr Samuel N. Tsien, Group Chief Executive Officer, OCBC Bank Ltd
オーバーシー・チャイニーズ銀行東京支店 代表者 Bernard Lloyd Fernando 様

(以下、47ヵ国280団体署名)

要請書ダウンロード

(日本語)日本政府はインドネシア・西ジャワ州チレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への融資を拒否すべき(PDF)
(英語:全280団体の署名が記載されたものは英語の原文になります)Japanese Government must Reject Financing the Cirebon and Indramayu Coal-fired Power Plants, West Java, Indonesia(PDF)

これら2か所(チレボンとインドラマユ)の地域住民は、既設の発電所からの影響に加え、隣接地への拡張計画により土地収奪や環境悪化、人権侵害、地域社会の分断の犠牲となっています。また、今から温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所を建設・稼働させることは、パリ協定の下で世界が取り組んでいる温室効果ガス排出削減努力を蔑ろにする行為です。

発電所拡張計画概要

名称 インドラマユ石炭火力発電所 チレボン石炭火力発電所
場所 西ジャワ州インドラマユ県 西ジャワ州チレボン県
発電規模 2,000MW(1,000MW×2) 1,000MW
発電技術 超々臨界圧(USC) 超々臨界圧(USC)
事業実施者 インドネシア国有電力会社(PLN) チレボン・エネジー・プラサラナ(CEPR)
融資機関 国際協力機構(JICA)
1号機建設事業本体に対するインドネシア政府側の正式要請を待って、円借款供与を本格的に検討予定
国際居力銀行(JBIC)を含む銀行団による協調融資-検討中
JBIC/韓国輸入銀行/民間銀行(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友、ING、Credit Adricole)
運転開始予定 2021年(1号機)、2024年(2号機) 2020年

■インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
2,000 MW(1,000 MW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(1,000 MW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、エンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を2013年3月に締結。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。

■インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、Indika Energy(25%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、JERA(10%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約20億米ドルにのぼり、うち8割程度について、現在、JBIC、韓国輸銀、日本・フランスの民間銀行団が融資を検討中。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められている。2020年に運転開始見込み。

※プロジェクトの詳細については、各プロジェクトごとの事業の概要をご覧ください。