チレボン石炭火力発電所の拡張計画 漁民による西ジャワ州政府への訴訟 公判開始(2017年1月11日)

国際協力銀行(JBIC)が融資を検討しているインドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(1000MW。総事業費約20億ドル)に関し、先月、地元住民(原告6名。住民弁護団は17名で構成)が「不当に環境許認可が発行された」と西ジャワ州政府に対する行政訴訟を起こしていた件について、1月11日、バンドゥン行政裁判所が公判を開始しました。

裁判所

 

西ジャワ州バンドゥン行政裁判所での初公判の様子。住民弁護団(左)と西ジャワ州政府への審理が行なわれた。
(2017年1月11日。WALHI撮影)

 

 

 

遠景

チレボン石炭火力拡張計画(2号機)の事業予定地と周りに広がる塩田。アクセス道路の整備や土地造成作業が一部で始まっている。
(2016年10月。WALHI西ジャワ撮影)

 

 

今後 2、3ヶ月、毎水曜に公判が開かれ、同事業における複数の環境法違反について審理がなされる予定です。初回の公判では、住民弁護団と西ジャワ州政府が出席。次回以降は事業者(丸紅、中部電力が出資する現地企業)への聴取も始まるとのことです。

同事業は既設の1号機(660MW)について、先月11月10日、地元住民らがJBICに対する異議申立書を提出。小規模漁業や塩づくりなど生計手段への深刻な影響を指摘しました(同異議申立ては予備調査中)。住民らは2号機の拡張計画が進めば、さらに被害がひどくなると懸念し、拡張計画の中止を求めています。また、現在、同拡張計画については、JBICや日本の民間銀行団とともに融資を検討中の仏・クレディ・アグリコル銀行、および、蘭・ING銀行が融資撤退に動く可能性も出ています。

生計手段への影響という現地住民からの懸念、環境法違反という法的問題、また、気候変動への影響の観点から国際社会で進む脱石炭の流れ――同拡張計画を取り巻く状況を真摯に受け止め、日本の官民も同事業からの撤退を検討すべきです。

以下、現地NGOのプレスリリース(和訳)になります。
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【プレスリリース】

2017年1月11日
インドネシア環境フォーラム(WALHI:FoEインドネシア)

(FoEインドネシア(インドネシア環境フォーラム:WALHI)によるプレスリリースの和訳)

プレスリリース
2017年1月11日

チレボン石炭火力発電所の拡張計画 漁民による西ジャワ州政府への訴訟 公判開始

バンドゥン発、1月11日 ― バンドゥン行政裁判所は本日、チレボン石炭火力発電所2号機の建設で影響を受ける住民による訴訟について、公判を開始します。
同発電所はチレボン市からそれ程遠くない西ジャワ州の沿岸に位置するカンチ地域で計画されています。西ジャワ州政府は、同発電所の建設に伴う地元の環境や生計手段への明らかな悪影響の可能性から、環境許認可を見直し、取り消すよう求められています。同訴訟は12月6日、「気候正義のための法律家チーム」によって弁護された住民環境保護(RAPEL)を代表する6名の原告によってバンドゥン行政裁判所になされたものです。

環境許認可(番号660/10/19.1.02.0/BPMPT/2016)はチレボン石炭火力発電所の拡張計画(1,000 MW)を進めるために必要な許認可の一つで、2016年5月11日に発行されました。この新規発電所は204.3ヘクタールの土地収用が必要で、チレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)によって操業されます。同訴訟によれば、この環境許認可は手続きや十分な要件を満たせておらず、多くの法律に違反しています。

1,000 MWの同石炭火力発電所はチレボン事業の拡張案件ですが、依然として同事業の融資調達に至っていない状況にもかかわらず、建設の初期段階にあります。
WALHIによれば、議論を呼んでいる石炭火力発電事業(訳者注:タンジュンジャティB石炭火力発電所の拡張計画)のなかには、フランス大手のソシエテ・ジェネラル銀行が今年初めに認めたように、融資撤退する銀行も出ており、(チレボン拡張計画への融資を検討中のフランス大手)クレディ・アグリコル銀行も遅からずこうした融資撤退の動きに続く可能性があります。

チレボン石炭火力発電所1号機は、地元住民の生計手段に多くの悪影響をもたらしました。拡張計画が進めば、小規模漁業、小エビ採り、貝採取、テラシ(小エビのペースト)作り、塩づくりに従事するより多くの住民が生計手段を失うリスクに陥ります。カンチ・クロン村のほぼすべての住民が、生計手段を沿岸の自然資源に依存してきました。多くの種類の貝類、魚類、エビ類、そして、その他の生物種を見つけるのがどんどん難しくなってきています。チレボン発電所1号機による損害と環境破壊はカンチ住民に悪影響を及ぼしており、2号機の建設で状
況は悪化するでしょう。また、同事業はすでに社会的紛争を引き起こし、地域コミュニティーの社会的つながりを悪化させています。

事業者であるCEPRは、訴訟が起こされてから、(原告)個々人に連絡をとり、動機や意図を探ろうとしています。しかし、原告らは凛として、既存の発電所によって、すでに生計手段や生活の場に影響を受けてきた漁民として、自発的に動いたと回答しました。

「チレボン拡張計画に対して発行された環境許認可は、漁業やエビ採りに従事してきたあらゆる住民が生計手段のなくなった状態で放置されてしまうという事実を看過しています。環境アセスメントの全手続きが覆され、非常に議論の多い同事業を支持する形になってしまっています。たとえば、環境アセスメントは地方レベルで出された指針があるにもかかわらず、最終的には州政府レベルで扱われました。」とWALHI(インドネシア環境フォーラム:FoEインドネシア)都市・エネルギー問題担当のDwi Sawungは述べました。

WALHI西ジャワ州のキャンペーン・提言コーディネーターであるWahyu Widiantoは、ジョコ・ウィドド大統領によって推進されている35,000 MWの発電計画が、空間計画に係る自治体条例の違反をもたらすことになっていると指摘しています。

「同発電所計画と関連インフラは同チレボン地域の場所を利用することになりますが、空間計画に係る自治体条例の第19条4a項に明確に違反しています。同条例では、同事業はアスタナジャプラ郡の区域内のみに立地することとなっていますが、拡張計画は、同郡以外の地域にも立地することになっているからです。それらの地域には小規模漁業、エビ採り、そうした関連セクターに従事する住民がいますが、同発電所によって同地域は奪われることになります。そうした住民らは計画のなかで考慮されていません。」とWidiantoは明らかにしました。

チレボン県議会は、チレボンの自治体空間計画の見直しプロセスを完了しておらず、空間計画に係る条例には、依然として一切修正も変更もなされていない状況になっています。したがって、同事業は現行、明確に違法な状態にあると考えられます。また、チレボン空間計画に関する自治体条例(2011年第17号)は戦略的
環境アセスメントを検討し、環境社会や地元の生計手段に悪影響を及ぼす可能性のある沿岸地域で、大型のインフラ開発をすることがないよう勧告しています。
さらに、環境管理法(2009年法律第32号)では、空間計画を遵守していない商業活動の環境アセスメントは評価も認可もされないと明記されており、この点で、チレボン拡張計画の現在の環境アセスメントは無効、あるいは、違法であると考えられます。
このプレスリリースに関する連絡先:

Dwi Sawung – Campaign Manager for Urban and Energy Issues, WALHI
08156104606 – sawung@walhi.or.id
Wahyu Widianto
Campaign and Advocacy Coordinator, WALHI West Java – 081320423076

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(※)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業について
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。
総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、Indika Energy(25%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、中部電力(10%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約20億米ドルにのぼり、うち8割程度について、現在、JBIC、韓国輸銀、日本・フランスの民間銀行団が融資を検討中。現場では本格着工に向け、
アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められている。2020年に運転開始見込み。

詳細(ファクトシート)は「ファクトシート3:日本の公的資金が支援する石炭火力発電所事業の概要と問題」よりインドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業をご参照下さい。(リンク