No Coal,Go Green!日本の海外石炭融資にNO!

日本の商社

日本は、いまだに国内外で多くの新規石炭火力発電所の建設計画に関与しています。それらの計画を動かしているのは、東京電力、中部電力、J-POWER(電源開発)といった電力会社だけでなく、日立製作所や東芝、三菱重工などの重電機器メーカー、さらに、丸紅、三菱商事、住友商事、伊藤忠商事といった総合商社です。世界が「パリ協定」で定めた目標に向けて脱炭素を進める中、明らかに逆行する石炭火力発電所の建設は世界からも注視されています。ここでは、日本の総合商社に焦点を当てて、事業実態を示します。

丸紅

日本の大手総合商社の1つとして多様な事業を展開している丸紅株式会社(以下、丸紅)は、世界各地で石炭の採掘、輸送インフラの整備、石炭火力発電所の建設・運営に関わっており、その規模は日本商社としては突出しています。Urgewaldの2019年の世界の石炭関連事業者リスト(Global Coal Exit List)の 69位にランクインしています。

*Global Coal Exit List:ドイツの環境 NGO であるウルゲバルト(Urgewald)が公開した世界の石炭事業に関与する企業を網羅したリスト。世界の機関投資家が、脱石炭をめぐる企業または金融機関からの投資撤退(ダイベストメント)を行う際、このデータベースを参照していると言われています。どのような日本企業が掲載されているかご覧ください。

https://coalexit.org/

世界中で石炭火力発電所を建設している丸紅

丸紅は、世界各地で100GWを超えるEPC(設計・調達・建設)事業を手がけており、そのうち40GWが石炭火力発電です。その上、現在も多くの独立系発電事業者(IPP)に関わっており、かつ、9ヶ国で新規の石炭火力発電所の建設を進めています。

問題視されている石炭火力発電所の建設計画

丸紅が関わっている石炭火力発電所建設計画の中には、現地の環境および地域社会への影響が大きいものや、建設に反対する住民との裁判に発展している計画などもあり、世界各地で問題視されています。現地住民の強い反対運動による事業の遅れも生じている上、欧米の銀行や投資家の中には丸紅からのダイベストメント(投資撤退)を進めるところも出てきています。各計画の詳細についてはファクトシート(事業名にリンクあり)をご覧ください。

国名 場所 事業名 発電容量 状況 稼働予定
1 インドネシア 西ジャワ州 チレボン1号機 660MW 稼働中 2012年
2 インドネシア チレボン2号機 1000MW 建設中 2022年
3 南アフリカ リンポポ州タバメシ タバメシ 630MW 計画中 2021年
4 ボツワナ パラピエ地区 モルプレB 300MW 撤退 (2020年)
5 ベトナム タインホア省 ギソン第2 600MW、2基 建設中 2022年*
6 日本 秋田** 秋田港(仮)
1号機、2号機
1300MW 計画中 2024年

補足

  • * ベトナムのギソン第2は、既に建設が開始されていますが計画の遅れにより運転開始予定時期が後ろ倒しになっています。
  • ** 2019年8月に「秋田港火力発電所(仮称)」の着工見送りが発表されました。

参考資料

サマリーシート: 「Why Marubeni: なぜ丸紅からダイベストメントする必要があるのか?」
案件ファクトシート:  1. チレボン(インドネシア)、2. パグビラオ (フィリピン)、3. タバメシ (南アフリカ)、4. モルプレ B (ボツワナ)、5. ギソン 2 (ベトナム)、6. 秋田港 (日本)

丸紅の石炭方針

方針記載文書 サステナブル・デベロップメント・レポート 2019
方針概要
  • 新規石炭火力発電事業には原則として取り組まない。ただし、BAT(Best Available Control Technology、最新鋭の技術で現時点ではUSCがこれに該当)の採用や政府方針と 合致する場合は取組を検討する。
  • 石炭火力によるネット発電容量を、2018年度末見通しの約3GWから2030年までに半減する。

2018年9月18日、丸紅はサステナビリティ経営推進の一環として、石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業に関する新たな取組み方針を発表しました。その内容は、新規の石炭火力発電事業は今後手がけず、また、自社の発電ポートフォリオにおける石炭火力発電事業によるネット発電容量を、2018年度末見通しの約3GWから2030年までに半減するというものです。しかし、その実態は、計画中の案件を中止するものではなく、半減の予定も自然減に近いと見られるもので、パリ協定の目標達成には程遠いものでした。翌年9月18日、脱石炭方針の発表から1年が経過しましたが、計画中・建設中の案件はそのまま継続しており、約3GWのネット発電容量を2030年までに半減させるとの計画の具体的な状況は明らかにされていません。

丸紅は太陽光や洋上風力発電など再生可能エネルギーの事業も実施しています。しかし、石炭火力発電事業および石炭関連事業から速やかに撤退しなければ、銀行や投資家からダイベストメントされるリスクはむしろ高まっていくと考えられます。

発信情報
日本から発信した要請
国外団体などから発信された要請
  • インドネシアRapel(Rakyat Penyelamat Lingkungan: People Environment Safer)がレターを提出(2019/9/18)(英語PDF・日本語PDF)
  • 350.org (Africa) が、丸紅が南アフリカで進めているタバメシ石炭火力発電事業につき進捗状況を公開するように求める手紙を提出(2019/4/11)(英語PDF)
  • インドネシア・チレボン石炭火力発電事業の現地住民支援を行っている市民団体ラペルおよび環境NGOのWALHI西ジャワが、要請書「Re: Ongoing Serious Impact on the Community and Our Continuous Demand to Stop the Cirebon Coal-fired Power Plant Project – Unit 1 and Unit 2 in West Java, Indonesia」を提出(2019/3/26)(英語PDF)*実際に提出したものにはラペル、WALHI代表の署名が付けられています
他団体や調査団体による丸紅の石炭事業に関する発表・報告書など
  • IEEFA Japan Briefing Note: (2019/3/12)
    Marubeni’s coal exit announcement a good first step but increased commitment needed(英語:Press Release)(IEEFA Briefing Note)
    IEEFA報告書:丸紅の石炭火力事業からの転換方針は最初の一歩だが、さらに踏み込んだ対策が必要(日本語案内)
    IEEFA Briefing Note: Marubeni Update Continuing Coal-fired Power Risks (IEEFA Briefing Note)
  • IEEFA報告書(2018年7月)(リンク)
    石炭火力大手の丸紅は世界的な再生可能エネルギーへの転換に応じなければならない(日本語PDF)
    Marubeni’s Coal Problem A Japanese Multinational’s Power Business is at Risk(英語PDF)
  • Urgewaldレポート(2018年10月)
    The 2018 Coal Plant Pipeline – A Global Tour (英語PDF)

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三菱商事

三菱商事は、『ESGデータブック2018』を2019年10月に改定し、原則、新規の石炭火力発電の開発を行わない方針を発表しました。さらに同2019年版では「石炭火力発電事業については、既に当社として開発に着手した案件を除き、新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針です。今後は、環境に配慮して事業推進を行う上で必要となるCO2排出削減に向けた将来的な技術動向(CCS等)や、2030年のエネルギーミックス達成に向けた進捗状況(含政策動向)を注視しながら、2℃シナリオ下でのシナリオ分析結果も踏まえた上で、石炭火力発電事業の当社持分発電容量の削減を目指します。」としています 。しかし、「既に当社として開発に着手した案件を除き」との注釈が付けられており、「2℃シナリオ下でのシナリオ分析結果も踏まえた上で」との文言に対し、不十分な対策となっています。これにより、ベトナム・ブンアン2石炭火力発電所、ビンタン3石炭火力発電所、福島県の勿来および広野発電所の、計4つの案件を新方針の対象外とし、今後も計画を継続するとしています。

三菱商事の石炭方針

方針記載文書 ESGデータブック 2019
方針概要
  • 既に着手した案件を除き、新規の石炭火力事業には原則として取り組まない方針を表明。
  • 技術動向や2℃シナリオ分析等を踏まえ、石炭火力発電の持分発電容量の削減を目指す。
  • 機器供給事業は、商業的に確立された最新かつ最高水準の低炭素技術を可能な限り採用。
三菱商事が計画中の4つの新案件
発電所名 発電規模 三菱商事持分容量推計 運転開始予定
1 ベトナム ブンアン2石炭火力発電所 600MW×2基 480MW 2024年
2 ベトナム ビンタン3石炭火力発電所 660MW×3基 388MW 2024年
3 日本 大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来) 543MW 217MW 2020年
4 日本 大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(広野) 543MW 217MW 2021年

注目されるベトナムの事業計画

ベトナムで建設計画が進むブンアン2石炭火力発電所(ハティン省)とビンタン3石炭火力発電所(ビントゥアン省)に、三菱商事は事業者として関与しています。当初、三菱商事との共同事業者であったCLP ホールディングス(香港に拠点を置く電力会社)は2019年12月に新規石炭事業関連からの撤退を表明。ブンアン2は、現在は三菱商事(40%)中国電力(20%)、そしてCLPが保有していた残りの40%について韓国電力公社(KEPCO)が出資を検討している状況です。また、同事業に融資を検討していた銀行団から、英国のスタンダード・チャータード銀行やシンガポールの銀行OCBCが脱石炭方針を示して撤退するなど、世界で脱石炭の動きが案件レベルに広がってきていることが伺えます。

ベトナムは、気候変動影響を受けやすい国の一つでもある上、近年の経済発展にともない工業化が進む中で、環境汚染、特に大気汚染が深刻化しています。

世界的に再生可能エネルギーのコストが急激に低下していることにより、石炭火力発電所の優位性が失われつつあることにも注視すべきです。英金融シンクタンクCarbon Trackerは、ベトナムでは早くて2022年には、新規の太陽光発電所を建設する方が既存の石炭火力発電所を稼働するよりも安価になると分析しており、新規の石炭火力への投資だけでなく、既存の石炭火力の経済性も問うべきだと述べています。パリ協定ではベトナムを含めた途上国も温室効果ガスの削減努力が求められています。現在計画中の石炭火力発電所が建設され、稼働することになると、その後数十年に亘る運転期間中のCO2大量排出が固定化されてしまい、途上国の気候変動対策に大きな影響を及ぼすこととなります。

このような状況において、三菱商事がこれから新規の石炭火力発電事業を展開しようとしていることは、脱石炭の流れに逆行し、環境汚染を悪化させて住民に健康被害を及ぼすだけでなく、経済的なリスクと気候変動対策におけるリスクをベトナムに課すことになると懸念されます。

福島での計画

三菱商事は、2016年8月2日、広野IGCCパワー合同会社(Hirono IGCC Power GK)、勿来IGCCパワー合同会社(Nakoso IGCC Power GK)を設立し、福島県内に2つの大型石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証計画を進めています。既に建設が進んでおり、勿来が2020年、広野が2021年に運転を開始する予定です。(勿来IGCCは2020年に試運転を開始)

事業者は、IGCCを「発電効率と環境性能が向上した次世代のクリーンコールテクノロジー」だとしていますが、如何に高効率とはいえ、それでもLNG火力に比べると約2倍のCO2を排出し、汚染物質の排出量を見ても、決して「クリーン」な技術とは言い難いものです。さらに、IGCCは建設コストが通常の石炭火力発電所に比べて2割程度高いと言われており、経済的に競争力がないことが示されています。

参考:気候ネットワーク レポート「世界中で失敗が続く IGCC (石炭ガス化複合発電) 高コストで、大量のCO₂を排出」(PDF)

隠されたコジェネ

三菱商事の『ESGデータブック 2019』によると、同社の国内外における石炭火力発電事業は計669MW(2019年9月末時点での持分容量)とされていますが、これ以外にも「脱炭素・低炭素エネルギー関連」と位置付けたコジェネレーション案件の中に3件の石炭火力事業が含まれています。本来はこれらも石炭火力発電事業として計上し、その上ですべての持分容量を開示した上で、脱炭素社会に向けた具体的な削減策の検討が望まれます。

コジェネレーション案件

国名 発電所名 持ち分容量(Net) 燃料
日本 MC塩浜エネルギーセンター 98 MW ガス・石炭
日本 MCMエネルギーセンター 52 MW 石炭・バイオマス混焼
日本 水島エネルギーセンター 56 MW 石炭
計206 MW
参考資料
  • サマリーシート: 「Why Mitsubishi Corp.: なぜ三菱商事からダイベストメントする必要があるのか?」
発信情報
日本から発信した要請
  • 【共同声明】三菱商事の石炭火力発電方針に対するNGO共同声明書(2019/10/21 )
  • 【プレスリリース】 石炭火力を推進する三菱商事の主要株主及び融資銀行 51社に対して ダイベストメントを求める要請を送付(2020/03/23)

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住友商事

2019年8月、住友商事は「統合報告書2019」を発表しました。同報告書の中では、今後、石炭火力発電事業と炭鉱事業の新規開発を行わない方針が発表されていますが、他社同様に計画中・建設中の案件は進行中です。

住友商事の石炭方針

方針記載文書 統合報告書 2019
方針概要
  • 石炭火力発電事業の新規開発は行わない。ただし、地域社会の経済や産業発展に不可欠で、国際的な気候変動緩和の取り組みや動向を踏まえた日本及びホスト国の政策に整合する案件は個別に判断。
  • 2035年目途に持分発電容量ベースで、石炭比率50%→30%等。

同報告書には、2035年を目途に持分発電容量ベースで、石炭の比率を50%から30%に、ガスを30%から40%に、再エネを20%から30%にし、「石炭火力発電事業については、新規の開発は行わない」と記しています。にもかかわらず、「地域社会における経済や産業発展に不可欠で、国際的な気候変動緩和の取り組みや動向を踏まえた、日本国およびホスト国の政策に整合する案件は、個別に判断する」との例外規定を設け、ベトナムにおけるバンフォン石炭火力発電事業を「この方針に基づき取り組んでいる案件」と位置づけています。

発電所名 発電規模 住友商事持分容量推計 運転開始予定
1 インドネシア タンジュン・ジャティB石炭火力発電事業・再拡張 1,000MW×2基 2021年(2017年3月着工)
2 ベトナム バンフォン1石炭火力発電事業 660MW×2基 2023年(2019年8月着工)

日本から発信した情報

  • 【共同声明】住友商事の石炭方針に対するNGO共同声明 (2019/08/21)
  • 【要請書提出】環境NGO5団体、住友商事に対し、ベトナム・バンフォン石炭火力発電事業の中止を要請 (2018/08/08)

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