プレスリリース:
環境NGOの働きかけで機関投資家がSOMPOに対して気候変動エンゲージメントを実施
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
Insure Our Future
国内外の環境NGO5団体は、SOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPO)の大株主である金融機関50社に、同社に対してパリ協定の長期目標と整合化を図り、化石燃料事業への保険引受等からの撤退投融資を求めるエンゲージメントを求める要請書(1)を8月末に送付したところ、現在までに8社から回答があり、うち、同社に今後エンゲージメントを行うことに前向きであるとの趣旨を回答した金融機関は5社(日本の運用会社が2社、欧州の運用会社が3社)だった。
寄せられた回答の中には、機関投資家として、以前よりSOMPOに対しエンゲージメントを行っているが、同社がネットゼロ達成のための長期目標を掲げ、目標達成のための道筋を構築するよう、今後も引き続きエンゲージメントを行うとの趣旨の回答もあり、今回のみならずより継続的なエンゲージメントに積極的な姿勢も窺えた。また、SOMPOには引受先事業で影響を受ける先住民族のFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意)に関する方針がないことを問題視する金融機関もあった。
今回送付した要請書の中では、金融機関50社に以下の3点のエンゲージメントをSOMPOに対して行うよう求めた。
1. パリ協定の1.5度目標に整合する保険引受方針を策定
SOMPOは日本国内で大手の損害保険会社でありながら、SOMPOの保険引受方針はパリ協定の1.5度に整合していない。SOMPOの石油・ガスに関する方針は、保険引受の制限対象がオイルサンド及び北極圏監視評価プログラム(AMAP)地域のエネルギー採掘事業のみであり、限定的である。一方で、ゼネラリ、ハノーバー再保険、アリアンツ等の欧州の大手保険会社では、石油・ガスに関する保険引受の停止対象を上流事業のみならず、石油・ガスの輸送事業(中流)や発電事業(下流)に拡大しており、先駆的な取り組みが広がり始めている。ゼネラリについては、新規のLNGターミナルや石油・ガスパイプライン、石油・ガス発電所を含む全ての石油・ガスバリューチェーンの保険引受を停止する方針を設けている。
2. リオ・グランデLNG事業を含む新規化石燃料事業の保険引受を停止
SOMPOは、ガスの供給元であるガス田からの生産量だけで世界の炭素予算の10%を使い切ると言われている、米国テキサス州のLNG(液化天然ガス)輸出ターミナル事業であるリオ・グランデLNG事業の保険を引き受けたことが判明してる(2)。リオ・グランデLNG事業の事業者であるNextDecadeは、当初、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)の付帯を予定していたが、2024年8月に現時点で十分に開発が進んでいないとしてCCS事業の中止を発表した。三井住友銀行、ソシエテ・ジェネラル、クレディ・スイス、チャブは既にリオ・グランデLNGから撤退することを表明している。
3. FPICを含む先住民族の権利の尊重を方針化
SOMPOには、先住民族の権利に関する国際連合宣言で求められているFPICに関する方針がない。SOMPOが保険引受を行っているリオ・グランデLNG事業の事業者NextDecadeは、建設予定地周辺を伝統的に利用してきた、カリゾ・コメクルド族という先住民族との協議会を一度も開催したことがなく、FPICが取得されていない。一方、バミューダの保険会社であるアクシス・キャピタルは、FPICが取得されていない先住民族の敷地内における事業への保険引受を行わないという方針を既に設けている(3)。
以上の事から私たちは、SOMPOに対して、気候変動の深刻さを認識し、同社の保険引受および投融資方針をパリ協定の1.5度目標に整合すること及び、リオ・グランデLNG事業からの撤退を表明するよう引き続き求める。また、今回要請書への返答を行わなかった金融機関に対しては、今後SOMPOへのエンゲージメントを行うよう要請する。
脚注
- https://jacses.org/2475/
- リオ・グランデLNG事業の概要や問題点については、以下のファクトシートをご参照ください。https://jacses.org/wp_jp/wp-content/uploads/2019/10/f3f4587241d5a547e73247c7eea46d96.pdf
- https://www.axiscapital.com/docs/default-source/about-axis/axis-capital-human-rights-policy.pdf
本要請書に関するご返答・お問合わせ先
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org