G7気候・エネルギー・環境大臣会合を前に世界26カ国の市民が日本に抗議
日本が支援するLNG事業の被害を訴え
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
メコン・ウォッチ
国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
4月28〜30日にかけてG7気候・エネルギー・環境大臣会合がイタリアで開催されます。この直前の1週間、アジア・アフリカ・アメリカを含む世界7カ国の地元住民、市民団体が連帯し、液化天然ガス(LNG)事業への日本の投融資に対する抗議活動が実施されました。これらの抗議活動は、日本の支援するLNG事業が引き起こす環境および人権問題の深刻さを浮き彫りにし、「クリーン」と喧伝されるLNGがいかに多面的な被害をもたらすかを示しています。
(世界各地の抗議活動の写真はこちらに掲載されます)
日本は2022年のG7首脳会合で合意された、「2022年末までに排出削減対策の講じられていない化石燃料エネルギーセクターへの政府による新規の国際的な直接支援を終了する」という約束を守っていません。今年3月だけでもオーストラリア・スカボロガス田開発事業、メキシコのサン・ルイス・ポトシ及びサラマンカでのガス焚複合火力発電事業、ベトナムのブロックBオモン事業に対し、それぞれ金融支援を決定しています。また、化石燃料事業への金融支援は今後も数多く行われることが想定されます。
「ガスが『クリーン』で、エネルギー移行に必要な『トランジション燃料』である」という日本政府の主張に対し、日本のみならずフィリピン、インドネシア、タイ、バングラデシュ、アメリカ、モザンビーク、カナダ、オーストラリアで行われた抗議活動は、「#SayonaraFossilFuels(さよなら化石燃料)」と題した共通の横断幕を使用し、日本のLNG事業に対する投融資による現地コミュニティへの健康被害、生計手段への影響、生物多様性の喪失、強制移転、人権侵害など多岐にわたる深刻な問題に目を向けるよう訴えました。
また、LNG事業による健康・環境・人権問題を踏まえ、日本に対し化石燃料への投融資をやめるよう求める署名にはアジア太平洋、アフリカ、欧米等の26ヶ国95団体から賛同が集まっており、現在一般市民の署名の呼びかけが始まっています。
(日本のLNG事業への投融資によって引き起こされる世界各地での健康被害、生物多様性の喪失、人権問題等については、こちらの添付資料をご覧ください)
世界中の市民が特に懸念しているのが、日本の輸出信用機関である国際協力銀行(JBIC)によるLNG事業への金融支援です。フィリピンを拠点とする市民団体Center for Energy, Ecology, and Development(CEED)によれば、JBICはパリ協定以降、東南アジアで最も多額の資金支援を化石燃料であるLNG事業に提供している金融機関です*。
しかし、JBICが支援する事業の中には違法性をはらむものも数多く存在します。フィリピンのイリハンLNG輸入ターミナル事業では、土地転換令を取得せずに工事を開始したことで当局から工事の停止命令が出されました。昨年末には地元の漁民団体らがJBICに対し異議申立てを行い、JBICの環境ガイドライン担当審査役が今年2月末に現地調査を実施しており、『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』の違反の有無を確認中です。調査報告書は6月末までには出される見込みです。JBICは、地元住民の訴えに真摯に耳を傾け、環境・人権上の問題の大きいLNG事業への支援を停止すべきです。
そして、日本は2022年のG7合意を守り、28日からのG7気候・エネルギー・環境大臣会合において野心的なコミットメントを行ない、「さよなら化石燃料」を確実に早期に実現する合意が結ばれるよう尽力すべきです。
先住民族Wet’suwet’enの世襲制酋長であるナモク酋長(カナダ)は、 「銀行が行うことは、地球上のすべての人に影響を与えます。あなたの決断と投資は、この地球上のすべての人の未来に影響します。将来の世代のために、注意深く、献身的に、賢明な決断そして銀行としての取引をしてください。」
漁師でラヨーン・クリーンエネルギーのコーディネーターであるマノップ・サニット(タイ)は、 「LNGターミナルの建設は、ラヨーン県の地元漁師にとって重要な漁場である若い水生動物の生息地や沿岸生態系に悪影響を与えています。さらに、マプタプット・フェーズ3を含む港湾の海面埋め立てと拡張は、漁業に直接影響を与えます。化石燃料は私たち地域社会の権利を侵害しており、化石燃料への資金支援は今すぐ止めなければなりません。」
WALHI(インドネシア環境フォーラム)のキャンペーン部門責任者、ファニー・トリ・ジャンボレ(インドネシア)は、「 西ジャワ州のジャワ1ガス発電所、中スラウェシ州のドンギ・スノロLNG、西パプア州のタングーLNGなど、JBICが支援するインドネシアのガス事業は、著しい環境破壊を引き起こし、人々の生計手段の損失あるいは喪失をもたらし、先住民族や地域コミュニティを強制移転させています。地球沸騰時代の最中、環境と人権に多くの悪影響を及ぼす化石ガス事業に対して日本が支援し続ける理由はありません。」とコメントしています。
Asian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD)のコーディネーター、リディ・ナクピル(フィリピン)は 「日本は、アジアを気候危機に陥れるための長く汚い道に導くのをやめるべきです。JBICはガス事業によって、グローバル・サウスのコミュニティを苦しめてきました。私たちは日本の化石燃料への資金支援を拒否しなければなりません。」と述べています。
Coastal Livelihood and Environmental Action Network (CLEAN)の代表 ハサン・メヘディ(バングラデシュ)は、 「日本のエネルギー投融資が不必要な化石燃料事業を推進することで、バングラデシュを債務の罠に陥れています。LNG火力で発電される電力は、国産燃料由来の電力よりも10倍も高く、バングラデシュの地域社会にとって法外な値段です。その上、JBICは、LNGを含む統合エネルギー・電力マスタープラン(IEPMP)の誤った気候変動対策に資金支援することを目指しています。このことは、JBICがバングラデシュにおいて汚れたエネルギーの拡大に傾倒していることを示唆しています」と述べています。
EEC Watchのリサーチ・ディレクター、ソムナック・ジョンミーワシン博士(タイ)は、「タイ国民の電力料金の引き下げに役立つ方法は、タイにおける(真の)再生可能エネルギーの発電比率を高める一方で、現在タイの発電燃料の大半を担っている天然ガスや輸入LNGへの依存度を下げることです。さらに、天然ガス価格は国外の要因によって変動するため、タイでは誰もコントロールできません。このエネルギー転換の恩恵は、地球が沸騰する時代において、タイを持続可能な電力システムへと導くでしょう」とコメントしています。
Texas Campaign for Environmentの副事務局長、ジェフリー・ジェイコビー(アメリカ)は「日本とJBICが世界的なガスインフラに数十億米ドルを投資することは、テキサス州、ルイジアナ州、米国南部メキシコ湾岸地域全体における環境人種差別、地元漁業の破壊、大気・水質汚染、経済的不平等、さらには気候変動に起因する壊滅的な災害に投資することと同じです。日本はLNGにコミットすることで、2022年にLNG施設が爆発したテキサス州フリーポートや、LNGが町に来てから漁獲量が大幅に減少したと漁師たちが報告するルイジアナ州キャメロン群の人々に、何世代にもわたって害をもたらすことを宣告しているのです。本当にそれだけの価値があるのかとJBICに聞きたいです」と述べています。
FoE Japanのキャンペーナー、長田大輝は 「日本はJBICを通じて、LNGはクリーンでアジアに必要と喧伝し、化石燃料ガス産業に何十億ドルもの資金を注ぎ込んでいます。しかし、LNGは全くクリーンでないどころか有害です。JBICが投融資する世界中のLNG事業は、地域社会の漁民や農民の生計を破壊し、健康被害、人権侵害、海洋生物多様性の損失をもたらしています。その点でLNGは極めて有害です。化石燃料ガスへの融資は、2022年末までに化石燃料への公的支援を停止するというG7でのコミットメントを日本が破っているということにもなります。日本は化石燃料ガスに別れを告げるときではないでしょうか」とコメントしました。
Oil Change Internationalのシニアファイナンスキャンペーナーの有馬牧子は「段階的な脱化石燃料が必要な今、日本はアジア全域で、そして世界規模でガスの拡張を推進しています。先月、日本はベトナム、オーストラリア、メキシコの新規ガス事業に27億ドル以上の資金支援を承認し、海外の化石燃料事業に対する公的資金支援を廃止するというG7の約束を破りました。日本は特に、アジア・ゼロ・エミッション共同体構想を通じてアジアでのガス拡大に積極的ですが、これは日本企業の利益を図るためのグリーン・ウォッシングに過ぎません。日本は、化石燃料への資金支援を廃止するというG7のコミットメントを遵守し、地域社会や地球に害を与える事業を支援することをやめるべきです」
*Center for Energy, Ecology, and Development. 2023. REPORT – Confronting a Fossil Future: Stopping the Gas Detour in Renewable-Rich Southeast Asia.
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