STOP 日本の化石燃料融資にNO!

【 NGO緊急声明】JERAは豪州・バロッサガス田事業から撤退を! ~国際協力銀行(JBIC)・民間銀行も融資契約締結を見送るべき~

NGO緊急声明:JERAは豪州・バロッサガス田事業から撤退を!
~国際協力銀行(JBIC)・民間銀行も融資契約締結を見送るべき~

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ

12月8日、日本の電力大手JERA(東京電力と中部電力の合弁会社)が、オーストラリアのバロッサガス田の権益12.5%を取得したことを発表しました(※1)。私たち環境NGOは、本事業がパリ協定の1.5度目標に整合しない上、「先住民族の権利に関する国連宣言」等で定められている影響を受ける先住民族の「十分な情報が提供された上での自由な事前の合意(FPIC)」が得られていないことから、JERAに対して本事業からの即時撤退を要請します。

5月に国際エネルギー機関(IEA)が発表した報告書「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」(※2)によれば、2050年までにネットゼロを達成するには新規の化石燃料採掘事業へのファイナンスを即時に停止する必要があるとしています。つまり、バロッサガス田のようなガス採掘事業を新たに開発する余地はありません。

JERAは、「JERAゼロエミッション2050」を掲げ、2050年時点で国内外の事業から排出されるCO2の実質ゼロに挑戦すると約束しています。近隣のバユ・ウンダンガス田を利用した炭素回収貯留(CCS)も検討されています。しかし、国際的なシンクタンクのエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)によれば、バロッサガス田は他のオーストラリアのガス田と比較して単位当たりの炭素排出量が最も多い事業であり(※3)、仮にCCS設備を設置したとしても約3割の排出抑制しか達成できないと推計されています(※4)。したがって、同社のゼロエミッション目標の達成を大きく阻害する可能性が高い事業であると言えます。ガスは石炭と同様に座礁資産リスクを抱え、そのスピードは石炭よりも早くなるとも言われています(※5)。

また、バロッサガス田からのパイプラインは、ティウィ諸島の先住民族であるTiwi族が生活を営んできた地域からわずか6kmの距離に設置されるため、海洋環境、生計手段、文化など先住民族への影響が懸念されています。「先住民族の権利に関する国連宣言」等では、影響を受ける先住民族の「十分な情報が提供された上での自由な事前の合意(FPIC)」を得ることが国際水準となっていますが、本事業では先住民族との協議すらほとんど行われていない状況が明らかとなっており、人権の観点からも大いに問題です。

Tiwi族のAntonia Burke氏は「ここでどんな事業を行うのか誰も知らせてくれません。Tiwiとの協議を全く行わずに事業を行うのは大きなリスクになります」と発言しています。また、Marie Munkara氏は「国際協力銀行(JBIC)及び日本政府はバロッサガス田事業に反対する私たちの声を聴くべきです」と表明しています。他にも多くのTiwiの人々が事業への懸念や反対の声を上げています。

本事業は、政府出資100%の公的金融機関であるJBICが、日本の民間銀行とともに融資を検討しています。損害保険会社の保険引受も想定されます。影響を受ける先住民族のFPICを取得していないことは、『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』や民間銀行が融資の際に遵守するべき国際環境人権規範である『エクエーター原則』にも違反しています。また、本事業は民間銀行の2050年ネットゼロへのコミットメントとも整合しません(※6)。したがって、JERAに対する撤退要請に加え、JBIC、民間銀行、損害保険会社に対しても、本事業の融資契約や保険引受を行わないよう要請します。

脚注
  1. https://www.jera.co.jp/information/20211208_809
  2. https://www.iea.org/reports/net-zero-by-2050
  3. https://ieefa.org/wp-content/uploads/2021/03/Should-Santos-Proposed-Barossa-Gas-Backfill-for-the-Darwin-LNG-Facility-Proceed-to-Development_March-2021.pdf
  4. https://ieefa.org/wp-content/uploads/2021/10/How-To-Save-the-Barossa-Project-From-Itself_October-2021_3.pdf
  5. https://ieefa.org/stranded-asset-risks-for-gas-investments-climbing-quickly/
  6. https://www.unepfi.org/net-zero-banking/members/

本件に関するお問合せ先

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺 tanabe[@]jacses.org