No Coal,Go Green!

【プレスリリース】債券保有者もJICAに働きかけ「バングラデシュとインドネシアの石炭火力発電事業への支援停止を」

【プレスリリース】
債券保有者もJICAに働きかけ
「バングラデシュとインドネシアの石炭火力発電事業への支援停止を」

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
BankTrack
Anthropocene Fixed Income Institute(AFII)

3月25日、世界12ヶ国の29団体は、国際協力機構(以下、JICA)債の発行主幹事及びJICA債を保有している金融機関39社に宛てて、JICAの支援が見込まれるバングラデシュのマタバリ石炭火力発電事業フェーズ2(以下、マタバリ2)及びインドネシアのインドラマユ石炭火力発電事業(以下、インドラマユ)について、支援停止に向けたエンゲージメントをJICAに対して行うことを求める要請書を送付しました。この要請書について、現在までに、JICA債保有者14社から回答があり、内3社はJICA及び債券インデックス・プロバイダーとエンゲージメントを行なったと回答し、1社は今後JICAとのエンゲージメントを検討すると回答しました。他の回答は、受領確認のみでした。

約1ヶ月後の4月、JICAが政府保証外債(※1)及び国内財投機関債(※2)の発行を発表し、その際に「本債券による調達予定の資金は、本機構の有償資金協力業務に充当する予定です(但し、石炭火力発電事業への出融資を除きます)」と明記しました。その理由についてJICAに確認したところ、一部の債券保有者から石炭火力発電事業の支援可能性についてJICAに問い合わせがあったためであると述べました。このことは、JICAが債券保有者からのエンゲージメントを受け、それに応えたことを示しています。

しかし、JICAの発表で受ける印象とは対照的に、JICA債から調達した資金は、同機関の有償勘定で管理され、マタバリ2及びインドラマユへの有償資金協力は同勘定から出金されます。したがって、上記の記述は、JICA自身による資金の割り当てにすぎません。

バングラデシュにおいて、JICAはすでにマタバリ石炭火力発電事業フェーズ1(以下、マタバリ1)に融資をしているのに続き、マタバリ2の建設に向けた準備調査の実施を支援しています。インドネシアでは、インドラマユの基本設計などにJICAが融資を続けており、本体工事への融資も見込まれています。

5月18日に国際エネルギー機関(IEA)が発表した報告書「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」によれば、発電によるCO2排出量は先進国では2030年代に、新興国・途上国では2040年頃までに総計でゼロにする必要があります(※3)。そのため、マタバリ2やインドラマユ等の新規化石燃料発電を支援することは、2050年ネットゼロ目標と整合性が取れていません。

JICA債は国連の持続可能な開発目標(以下、SDGs)の達成に貢献する目的で発行され、「SDGs実施指針改定版」(2019年12月改定)ではSDGs達成に向けた日本政府の具体的施策の一つとして位置付けられています。しかし、前述の2事業は、SDGsの目標13(気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る)に逆行し、目標16(持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する)も、ないがしろにしています。

JICAの2案件への継続的な支援は、各国のクリーンエネルギーへの移行に向けた取り組みを弱体化させています。2021年2月、バングラデシュ政府は輸入石炭のコスト上昇および海外の投資家からの財政支援の減少により、9つの新規石炭火力発電所(発電容量計7,461MW)を廃止することを決定しました(※4)。また、在バングラデシュ中国大使館は、バングラデシュ財務省宛てに書簡で「炭鉱や石炭火力発電事業など大気汚染を招く事業への投資は検討しない」との意向を伝えました(※5)。インドネシアのインドラマユに対するJICAの支援は、カーボンニュートラルの目標を達成するために、2023年より後は新たな石炭火力発電所の建設を停止するという同国の計画を軽視しています(※6)。

この6月13日、G7首脳は、「政府開発援助、輸出金融、投資、金融・貿易促進支援等を通じた、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の2021年末までの終了に今コミットする」(※7)との合意を発表しました。それにも関わらず、日本政府とJICAはマタバリ2及びインドラマユへの新たな支援を依然止めようとはしていません。

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)のプログラム・ディレクターである田辺有輝は、「JICAが新規石炭火力を支援した場合、債券保有者はJICAを投資対象から除外する可能性があります。将来的な資金調達を確実なものにするために、日本政府とJICAは、これらの石炭火力発電事業2案件を支援しないことを表明する必要があります。」と述べています。

BankTrack の気候キャンペーナーである Henrieke Butijn は、「一部の金融機関がバングラデシュとインドネシアの2つの石炭火力発電事業への関与の可能性についてJICAとエンゲージしたのは良いことです。しかし、エンゲージメントが失敗し、JICAがこれらの事業を支援した場合、金融機関はJICAを金融サービスの対象から除外する必要があります。IEAが発表した Net Zero by 2050 のレポートは、新規化石燃料事業の余地がないことを改めて確認しています。銀行は責任を負い、この現実を認めない機関に対して資金を提供しないようにする必要があります。バングラデシュとインドネシアのコミュニティは、良い環境を享受する権利があります。」と述べています。

Anthropocene Fixed Income Institute (AFII) の創立者である Ulf Erlandsson は、「結局は、JICAの投資家は石炭に資金を提供しており、多くの場合、彼ら自身の投資方針と矛盾しています。今後、投資家はJICAに対して、債券が石炭資産に配分されることを防ぐために効果的な措置を講じることを要求するか、JICAへの資金供給を完全に止めなければなりません。」と述べています。

脚注

※1:https://www.jica.go.jp/press/2021/20210421_30.html
※2:https://www.jica.go.jp/press/2021/20210430_30.html
※3: International Energy Agency (IEA), (2021), Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector, pp. 114, IEA, Paris, https://iea.blob.core.windows.net/assets/0716bb9a-6138-4918-8023-cb24caa47794/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector.pdf.
※4: https://www.climatechangenews.com/2021/02/25/bangladesh-scraps-nine-coal-power-plants-overseas-finance-dries/
※5: https://www.ft.com/content/30840645-58d2-4da5-be05-f476623677d2
※6: https://news.mongabay.com/2021/05/indonesia-says-no-new-coal-plants-from-2023-after-the-next-100-or-so/?utm_medium=Social&utm_source=Facebook&fbclid=IwAR1v9nsyna52Hjt3HkIl9KbijEh0qRn1qJQ7NnHJeZ5bFU9h3uNMMjqs38g#Echobox=1620825089
※7:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100200083.pdf (和訳)

本件に関するお問い合わせ先

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
プログラムディレクター、田辺有輝
メール:tanabe@jacses.org