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IEEFA報告書:丸紅の石炭火力事業からの転換方針は最初の一歩だが、さらに踏み込んだ対策が必要

2019年3月12日、エネルギー経済・財務分析研究所(Institute for Energy Economics and Financial Analysis 、以下IEEFA)は、新しい報告『更新報告:石炭火力発電事業に関与するリスクを背負い続ける丸紅(原題:Read the Briefing Note Marubeni Update: Continuing Coal-fired Power Risks)』を発表し、その中で丸紅が迅速に新しいエネルギー技術を取り込めなければ、機関投資家はリスクにさらされたままとなる、と指摘しています。

丸紅は、同社の発電ポートフォリオから温室効果ガス排出量を低減させるべく、石炭火力発電事業によるネット発電容量を、2018年度末見通しの約3GWから2030年までに半減させることに加え、再生可能エネルギー発電事業に積極的に取り組み、再生可能エネルギー電源の比率を、ネット発電容量ベースで現在の約10%から2023年までに約20%へ拡大するとの方針を発表しました。しかし、この方針の発表後も、丸紅は日本国内および国外(途上国8カ国)において約12ギガワット(GW)におよぶ時代遅れの石炭火力発電事業を推進し続けており、脱石炭を促進する世界の潮流に乗ることなく機関投資家をリスクに晒し続けています。

IEEFAの報告書は、丸紅の進める事業は、出資銀行の融資撤退、保険に加入できない 、契約解除の兆候、法的な逆風、地域の反対運動、クリーンな再生可能エネルギー技術の価格低下など、さまざまな問題に直面していることを指摘しています。

著者であるサイモン・ニコラス氏は、今や途上国もクリーンエネルギーへの移行を目指しているとした上で、石炭火力発電はますます時代遅れとなり、丸紅は早急に状況の変化を受け止めて石炭関連事業を削減すべきだと述べています。また、丸紅には再生可能エネルギーで事業を拡大するチャンスがあるとして、丸紅が新たなクリーンエネルギー技術に向かうよう同社のエネルギー事業の再編成を加速させれば、将来の電力市場に生き残り、かつ、再生可能エネルギーコストが確実に下がることや、座礁資産リスクが上昇することなど不測の事態に陥るのを避けることができるでしょうとも述べています。

いまや、国際的な金融機関が次々に石炭部門への投融資から撤退しています。日本企業の中からも、石炭からの撤退を表明する企業が出てきました。2018年後半、三菱商事および三井物産は、保有するすべての炭鉱の権益を売却する方針を決定。2019年2月には、伊藤忠商事が、新規の石炭火力発電事業の開発および一般炭炭鉱事業の獲得は行わないと表明しました。さらに3月11日には、双日が一般炭炭鉱の売却に合意したと発表しています。金融機関では、2018年7月、三井住友銀行が新規の石炭火力発電所のプロジェクトファイナンスへの融資を取りやめると表明し、かつてアジアの石炭火力発電所に多大な支援をしていた英国のスタンダードチャータード銀行も新設の石炭火力発電所を対象とするファイナンスを早急かつ世界的に中止すると発表しました。

本報告の共著者であるティム・バックリーは、日本の輸出信用と海外開発機関にも、国外のエネルギー開発において温室効果ガスの排出が低く、価格が持続的に下がっている(デフレ状態にある)再生エネルギーに移行する動きが出始めていると言います。

このような石炭から脱却する動きが見え始めているにもかかわらず、丸紅は石炭火力発電設備への経済支援を続け、会社の評価を落とす危険を犯しています。丸紅の主要株主は、世界でも最大級の石炭火力発電所の建設に関わり続けることによる経済リスクと会社の評価に関わるリスクへの警戒を高めているのです。企業としての適応力と指導力が試されています。

※ IEEFAについて:エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は、エネルギーと環境に関連した金融・経済問題の国際的な研究・分析を行う。IEEFAの使命は、多様性、持続可能性、収益性に富むエネルギー経済への移行を加速させることである。(リンク

リンク先

IEEFAプレスリリース:IEEFA Japan: Marubeni’s coal exit announcement a good first step but increased commitment needed(リンク

報告書全文:Read the Briefing Note Marubeni Update: Continuing Coal-fired Power Risks, Read the Briefing Note(PDF