【NRDC新レポート発表】 パワーシフト:G20各国における国外向け公的資金は石炭から再生可能エネルギーへシフトしている

2017年12月3日、自然資源防衛協議会(Natural Resources Defense Council: NRDC)が新たなレポート『Power Shift: Shifting G20 International Public Finance from Coal to Renewables』を発表しました。このレポートには、パリ協定の発効から1年が経過する中、依然として再生可能エネルギーよりも石炭に多くの投資を行っている国がある中で、エネルギーシフトを進める国や国際金融機関が出てきている現状が記されています。そして、汚ない石炭エネルギーから、風力や太陽光などのクリーンなエネルギーへのシフトに向けて、さらなる加速が必要とも指摘しています。

G20各国政府および国際金融機関は、エネルギー関連に多額の投融資を行っています。2013年から2016年の3年間にG20各国が国外の石炭関連事業に投じた金額は、380億USドルにも上りました。それに対し、再生可能エネルギーに投じられた額は250億USドルに留まっています。残念ながら、今後のエネルギー関連への投資計画も同様の状況にあり、石炭関連が280億USドル以上、再生可能エネルギーがわずか140億USドルと、大きな開きがあります。再生可能エネルギーのコストが下がっていることと、石炭に起因する深刻な健康被害や環境破壊を鑑みれば、各国政府は公的な資金をこれ以上海外の石炭関連事業に投じるべきではありません。パリ協定は、将来の脱炭素社会に向けて進むことを求めています。G20各国の金融機関は、クリーンエネルギーへの移行を牽引することができる立場にあるのに、いまだに石炭から抜け出せていないのです。次に本レポートでまとめられた10の要点を示します。

NRDCレポートの10の要点

1.
石炭関連事業を支援する国々:2013年から2016年の3年間にG20各国および国際金融機関が国外の石炭関連事業に投じた金額は380億USドルにも達しており、同期間の石炭関連事業投資額が最も多い上位5カ国は、中国(150億USドル)、日本(100億USドル)、ドイツ(40億USドル)、ロシア(30億USドル)、韓国(20億USドル)であった。この5カ国だけでG20 全体が石炭関連事業に投じる金額の89%を拠出している。また、G20各国が重要な役割を担っている国際金融機関による石炭関連事業への投融資は30億USドルに上り、これは全体の8%に相当している。

2.
再生可能エネルギーを支援する国々:同期間にG20各国が国外の再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱など)事業に投じた額は250億USドルだった。金額の大きな順に並べると、ドイツ(40億USドル)、アメリカ(30億USドル)、日本(30億USドル)、フランス(10億USドル)、中国(6億USドル)となっていた。この5カ国による投融資額は、G20 が再生可能エネルギーに投じた金額の46%に当たる。また、国際金融機関は130億USドルの資金を投じており、再生可能エネルギー事業への投融資の50%に相当する。

3.
今後の石炭火力対再エネ投融資:今後の計画においても、G20の多くの国が石炭関連事業に対し280億USドル以上の投融資を検討しているのに対し、再生可能エネルギーはわずか140億USドルとなっている。

4.
これからも石炭関連事業を進める国々:将来の石炭関連事業に多くの額を投じようとしている上位5カ国は、中国(130億USドル)、日本(90億USドル)、韓国(30億USドル)、インド(10億USドル)、オーストラリア(10億USドル)である。投融資額が公開されていないが、ドイツ、アメリカ、イタリア、ロシアも石炭関連事業への投融資を行うと推測される。

5.
有望な石炭の支援先:G20各国は2013~2016年の石炭関連事業の支援対象として、ベトナム(9ギガワット:GW)、インドネシア(9GW)、インド(6GW)、モロッコ(2GW)、モンゴル(2GW)を中心とした国々を挙げている。

6.
南・東南アジアにおける石炭:南アジアおよび東南アジアでは、G20各国の金融機関が多額の資金を石炭関連事業に投じるため、石炭関連への投融資と再生可能エネルギーへの投融資のバランスが悪くなっている。これらのG20 各国が投融資する石炭火力発電所計画は、受入国の政府官僚および電力事業者によって支持されていることもあるが、現地コミュニティの反対運動に直面することも多く、より厳しい大気汚染基準を求められることも増えている。にもかかわらず、G20 各国は、発展途上国が石炭から再生可能エネルギーに移行することを手助けすることよりも、石炭火力発電所の計画に関わる電力会社や発電機・タービンメーカー、工事請負会社などを支援することを続けている。

7.
金融機関の責任は重い:G20各国の金融機関の中には、再生可能エネルギー事業よりも石炭関連事業に多くの資金を投じている輸出信用や保険金融がある。多国間開発銀行は、石炭と再生可能エネルギーの両方を支援しており、G20の公的金融機関の支援先も同様に混在している状況である。中には、再生可能エネルギーへの投融資に限定している金融機関もあるが、日本の国際協力銀行(JBIC)や(入手可能な公的情報に基づけば)中国国家開発銀行は、パリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)に示された世界が目指す目標に反して、遥かに多くの金額を石炭関連事業に投じている。全ての国がパリ協定およびSDGsの公約を守るため、G20各国は世界経済を牽引する国として特別な責任を有している。そのG20各国が石炭への投融資を続けることは、2017年にドイツ・ハンブルクで開かれたG20サミットで採択された「G20ハンブルク首脳宣言」を直接的に弱体化させることを意味する。

8.
石炭事業への投融資を制限する政治的判断が受け入れられている:2017年1月、G20 の中の幾つかの国々は、OECD輸出信用アレンジメントに加盟する国として、将来の石炭火力発電事業への金融支援を制限する政策を採択した。このことは,これからの石炭火力への支援を抑制していくだろう。再生可能エネルギーは、発電コストが急激に低下していることにより、石炭火力に対し競争力を持つようになっており、さらに、石炭に起因する健康被害や気候変動への影響のすべてを加味すれば、石炭に勝ることになる。

9.
再生可能エネルギーへの多国間支援は石炭への支援を上回る勢いで増加中:

10.
再生可能エネルギーへの二国間支援はゆっくりとだが増加中:過去3年以上の間に、G20の中に大規模な再生可能エネルギー計画の優れた実行可能性に気付き、資金の流れをシフトする金融機関が出始めた。G20 の二国間金融機関にも多くの国で再生可能エネルギーへの支援にほとんどの投融資をシフトする動きが出ている。ここには、アメリカの海外民間投資公社(Overseas Private Investment Corporation: OPIC)やドイツ復興金融公庫(KfW)も含まれている。さらに、国外で多くの石炭火力発電事業への投融資を行っている機関(中国開発銀行、日本の国際協力機構および国際協力銀行など)もポートフォリオに再生可能エネルギーへの支援を含めるようになってきている。

再生可能エネルギーにシフトすべき理由

世界中で再生可能エネルギーによる発電コストが下がっており、石炭火力発電所を下回ることもあります。2016年の国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告書によれば、技術の進歩や大規模発電施設への重点的な投資を行う国(中国、ドイツ、アメリカなど)におけるスケールメリットが功を奏し、2009年以降の価格は太陽光発電が約80%、風力発電が30~40%下落しました。
地球が直面している気候変動を鑑みれば、地球規模の温室効果ガス排出を削減し、クリーンエネルギーを供給するためのエネルギーシフトは必要不可欠です。
G20 の中には、このエネルギーシフトに貢献している国もあり、中国は、2013~2016年の3年間で国内の再生可能エネルギーに3660億USドルを費やしました。これは全世界の合計の30%に相当します。二番目に投資額が大きかったのはアメリカ(全体の18%)、その後に日本(12%)とイギリス(7%)、ドイツ(6%)が続いています。

国外への投資の評価

国内の再生可能エネルギーへの投融資状況とともに、国外ではどのような事業に公的資金を使っているのか調べることも重要です。このレポートでは、G20各国が発展途上国に向けて行っている公的投融資の内容にも踏み込んでいます。国内対策同様に国外の再生可能エネルギー事業を支援しているのかを見た結果、G20各国による国外の再生可能エネルギー事業への支援は増えてはいるものの、石炭から再生可能エネルギーへの投融資のシフトをさらに進めていく必要があることが明らかになりました。

報告書に示された今後に向けた提案

この報告書では、G20各国の状況と気候変動対策における責任と担うべき役割を踏まえ、以下3点を提案しています。

  • G20各国政府は、金融機関にすべてのエネルギー関連投融資のデータを公開するように求めること。
  • G20各国政府は、石炭以外にエネルギーアクセスを確保する手段のない低所得国などの非常に限られた案件を除き、国外の石炭火力発電事業への公的資金供与を早急に停止すること。
  • G20各国政府は、パリ協定およびSDGs、G20ハンブルク首脳宣言に則して、公的金融機関にクリーンエネルギー事業への投融資を優先するよう指導すること。

気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)では、カナダとイギリスが提唱した石炭火力発電所の段階的廃止を進める連合組織「脱石炭へ向けたグローバル連盟」が発足しました。しかし、この連盟には本レポートに記した石炭への投融資が大きな国々(中国、日本、韓国、ドイツ、アメリカ)は参加していません。さらに、アメリカのトランプ政権は気候変動を認めず石炭の使用を促進させることを狙っています。一方、中国は再生可能エネルギーの開発において他国との連携を強化しており、韓国では政策決定者が韓国の輸出信用機関が国外の石炭事業に投融資することに疑問を抱き始めています。もっとも新しく主要な国際金融機関であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、石炭への投融資を行っている反面、エジプトの再生可能エネルギー事業を承認しました。
この報告書とデータは、現在、G20各国が再生可能エネルギー事業に対するよりも多くの投融資を石炭関連事業に行っており、今後の計画でも同様の傾向が見られることを示しています。しかし、最新の開発状況には、石炭関連事業から再生可能エネルギーへの急速なシフトの兆しが見え始めているのではないでしょうか。

筆者紹介

HAN CHEN
International Climate Advocate, International and Climate & Clean Air programs

ダウンロード・関連リンク

レポート本文 POWER SHIFT: SHIFTING G20 INTERNATIONAL PUBLIC FINANCE FROM COAL TO RENEWABLES(英文リンク
著者Han Chenによるブログ Power Shift: New Report on International Coal vs. RE Finance(英文リンク