ミャンマー住民が要請書の提出に来日-記者会見から公開セミナーまで-

2015年11月25日から11月30日まで、ミャンマーの市民社会・住民グループの4名が日本の政府機関・民間企業が関係する石炭火力発電所の建設に反対する要請書を提出するために来日しました。記者会見、書簡提出、国会議員との面談、セミナーというスケジュールに続き、11月29日の「アースパレード2015」にも参加しています。彼らの1週間の動きをまとめます。

ミャンマーにおける石炭火力発電所建設事業

ミャンマーには、日本企業が計画中の石炭火力発電所事業計が複数ありますが、そのうち3案件で地元住民が反対運動を起こしています。今回、それぞれの計画地域の代表が国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)の他、ミャンマーで建設に向けた調査を進めている日本企業に対し、石炭火力発電事業の促進・融資を行わないよう求める要請書を提出するために来日しました。彼らの発言を踏まえ、ミャンマーの住民が求める未来のエネルギーへの援助・投資について考えてみたいと思います。

日系企業がミャンマーで調査を進める3案件

場所 関連企業名と発電所規模
モン州 東洋エンジニアリング関連会社、超々臨界圧640MW×2基
エーヤワディー管区 三菱商事・J-POWER、亜臨界圧300MW×2基
タニンダーリ管区 丸紅、超々臨界圧900-1,000MW×2基

 記者会見

11月26日、参議院議員会館で開かれた記者会見では、ミャンマーで進められている3件の計画概要、および、現地での状況と反対理由につき各地域の住民が説明を行いました。計画地はいずれも豊かな自然に恵まれた土地であり、住民たちは自然と共生した暮らしを続けて来ました。しかし、住民不在で火力発電所の建設計画が進められる中、生活への悪影響が懸念される、事業の進め方に納得しかねる、環境破壊への影響が心配、国のエネルギー計画そのものに疑問があるなど、様々な理由で計画に反対しています。

■■ 発表要約 ■■

タンズィン氏(所属団体:Dawai Development Association: DDA)
ミャンマー政府は、増加するエネルギー需要を満たすためとして17か所の石炭火力発電所計画を進めているが、住民は中央が管轄する電力供給ではなく、地域主体の再エネの開発に対する支援を日本に望んでいる。

ニーマーウー氏(所属団体:Andin Youth)
モン州アンディンの石炭火力発電所建設計画に反対している。住民不在の進め方には怒りを覚えている。

モーチョートゥ氏(所属団体:Beautiful Beach Development Network: BBDN)
エーヤワディー管区内のガヨーカウン石炭火力発電所事業は環境破壊につながり、地域の飲料水の供給においても不安要素となっているため反対している。反対住民の署名を集め、建設反対を繰り返し訴えているが改善は見られない。

サングウェ氏(所属団体:Southern Youth)
タニンダーリ管区のタラブウィン火力発電所の建設は地域住民に利益をもたらさず、環境破壊の原因にしかならないとして計画に反対している。政治的に不安定な地域に発電所を建設することの危険性と、この地域特有の事情による土地収用に関する懸念を表明する。

■■ 発表および質疑応答から考える今後の活動 ■■

各地域で共通していたのは、住民は石炭火力発電所を必要としていないということです。ミャンマーには天然ガスがあり、その生産・輸出量は世界でも突出しています。自国生産できるガスを他国に販売し、代わりにガスよりも効率の悪い石炭を輸入してまで発電する必要があるのでしょうか。しかも、ミャンマー国内で発電した電力の多くを他国に売電する計画であり、発電所計画予定地で使われるものではないのです。
エネルギー需要や送配電のグリッドの整備状況などが日本とは全く異なるミャンマーに石炭火力発電所を建設することは、自然・環境破壊をもたらし住民にとっても害となる危険性の方が高いと懸念されます。日本の石炭発電技術は高性能だと言われていますが、公害対策技術については日本国内と同等の「クリーン」なものではなく、「現地基準」に適合したレベルの技術が施工されるにすぎないことは調査結果でも明らかです(No Coal Go Greenファクトシートを参照)。
住民たちは未来に向けたエネルギー政策への転換を求めています。住民が求めている開発とは異なる方向に支援することが、本当の支援なのでしょうか。記者会見でのメモはこちらをご覧ください。

石炭火力発電所建設に反対する住民の意思を踏まえ、今後の活動は以下のような点に留意して進めていく必要があると考えます。

  • 各発電所事業において現地で行われている調査の報告書等が現地住民の理解できる言語・様式で提供されるよう関連企業に対応を求めていく
  •  国内で生産する天然ガスによる発電や再エネで電力需要が賄えるかについて、より詳細な代替案の検討・提示を行う
  •  ミャンマーのエネルギー政策として、グリッドのない現状に合わせ、中央集約ではなく地方分散型の発電モデルを住民・市民社会の意見を踏まえながら考えていく

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ミャンマー住民・NGO 石炭火力の輸出にNO! (2015/11/26参議院会館での記者会見)の動画はこちら (制作:特定非営利活動法人 メコン・ウォッチ)

要請書提出

以下の政府機関・企業に対し、72のミャンマー市民社会団体ネットワークが署名した要請書を提出し、意見交換を行いました。
11月26日 三菱商事
11月26日 JICA
11月27日 東洋エンジニアリング(書簡提出のみ、面談は拒否)
11月27日 丸紅
11月27日 JBIC(書簡提出のみ、面談は拒否)

IMG_9640_JBIC前訪問先の中でTTCLの筆頭株主である東洋エンジニアリングからは面談などを一切拒否されたため話を聞いては貰えず、同本社受付窓口に書簡を提出するのみとなりました。
面談が行われた関連企業は、一様に住民の反対の声や現地での諸状況(政治・社会・文化的なものを含む)を十分に把握しているとは言えない状況でした。住民の訴えおよび懸念につき、現地企業等に依存しない自らの状況確認(実際の現地調査を含む)を行い、住民の声に基づいた賢明な対応・判断が望まれます。

要請書等はこちら(PDF)

 

各発電所計画の事業概要はこちら(PDF)

  •  ミャンマー・アンディン石炭火力発電事業概要(日本語PDF)
  •  ミャンマー・ガヨーカウン石炭火力発電事業概要(日本語PDF)
  •  ミャンマー・タラブウィン石炭火力発電事業概要(日本語PDF)

 

セミナー「村の未来は石炭火力発電では創れない」

2015年11月27日(金)18:10-から青山の地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)にて、セミナー「村の未来は石炭火力発電では創れない」-ミャンマー各地から日本へのメッセージ-を開催し、各地の写真などを示しながらの発表が行われました。

■■ 発表要約 ■■

1.日本が海外で支援する石炭火力発電の問題とミャンマー電力計画への日本の関わり(土川氏)
日本と世界各国の石炭火力への支援についての概要を示すとともに、日本から海外に輸出される石炭技術の公害対策における問題点を指摘。

2.ミャンマー市民社会から日本への要請書「ミャンマーと石炭:日本の関与とミャンマー市民からのメッセージ」(タンズィン氏)
現地での状況報告を踏まえ、石炭火力発電所の建設への反対意思を表明。発電所建設候補地が国境付近にあることへの理由も踏まえ、国のエネルギー政策の問題を指摘。国内に起こっている石炭火力発電所建設への反対運動と住民の要望を発表。

3.日系企業が石炭火力発電事業を計画中の各地から日本に対するメッセージ

1)モン州よりニーマーウー氏
東洋エンジニアリングの関連会社であるTTCLが進める石炭発電所建設によって、伝統的な地元住民の生活に悪影響を与えることを懸念している。村民は現在の生活に満足しており、石炭火力は要らない。TTCLの強引な事業の進め方は住民を無視しており、住民は建設計画に反対している。

2)エーヤワディー管区よりモーチョートゥ氏
エーヤワディー管区内に三菱商事が計画しているガヨーカウン石炭火力発電所の建設により、村の自然が破壊されることを恐れている。住民たちは1日4時間電気があれば事足りる生活をしている。立地的に飲料水の確保が難しい土地でもあり、環境を守るために発電所建設への反対運動を行っている。

3)タニンダーリ管区よりサングウェ氏
タニンダ―リ管区内に丸紅が計画しているタラブィン石炭火力発電所に対して懸念を抱いている。同管区はミャンマー政府とカレン族による政府による二重支配が行われている土地であり、政治的に不安定なので、この土地に発電所を建設することはリスクが大きい。地域の状況を踏まえて建設計画には反対している。

■■ セミナー発表と質疑応答で浮かび上がった問題点 ■■

  • ミャンマーの送配電グリッドは整備されていないため、中央集約型よりも地方分散型のエネルギー供給が望まれている。
  • ミャンマー国内に建設される新しい石炭火力発電所で作られる電力もその多くは国内での利用には使われず、輸出にまわされる可能性が高い。
  • ミャンマーでは土地所有権が曖昧で、土地収用において問題が起こることが見越される。
  • ミャンマー政府とカレン民族政府(KNU)の二重支配が及ぶ地域がある。

■■ セミナーの報告と発表資料はこちら ■■

 

アースパレード参加

2015年11月28日、日比谷公園野外音楽堂で開かれた集会に参加し、会場でもミャンマーにおける日本の支援による石炭火力発電所建設反対を訴えました。集会に続くパレードにも同行し、多くの参加者とともに日比谷から銀座を抜ける約1.7キロの距離を行進しながら気候変動のない未来に向けてのメッセージを発信しました。

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By YEN SNAING / THE IRRAWADDY | November 27, 2015

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しんぶん赤旗 2015/12/6(日本語

20151128_Eleven Daily_Coal_Letter submitted to Embassy※ 複数のミャンマー語のメディア(Kamayut Media, BBC, DVB)や新聞(Daily Eleven, 2015/11/28)でも取り上げられました。