JBICの投融資について

ファクトシート2:公的金融機関(JBIC、NEXI、JICA)による
石炭火力発電事業への投融資実態

更新:2018年11月2日 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝

1.公的金融機関の概要と役割

  • IMG_1442海外の石炭火力発電事業を支援している日本の公的金融機関には以下の3機関がある。
    国際協力銀行(JBIC):海外の資源獲得や日本企業の国際競争力の強化等を目的として設立された政府出資100%の金融機関で、輸出先企業や海外事業を行う日本企業等に融資や保証を行っている。財務省国際局が主管している。
  • 日本貿易保険(NEXI):日本企業が行う輸出入、海外投資、融資に伴うリスクをカバーする保険を提供しており、政府が全額出資している。
  • 国際協力機構(JICA):日本の政府開発資金援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行う外務省所管の独立行政法人。

 

2.公的金融機関による海外石炭火力発電への投融資実態

2003年以降のJBIC、NEXI、JICAによる石炭火力発電事業へ投融資件数は、それぞれ28件、19件、7件だった。また投融資額に関してJBICは約134億ドル、JICAは37億ドル、NEXIの付保額は47億ドルとなっている。(表1参照)

1JBICNEXIJICAの投融資承諾件数、投融資額(2003年~2018年)

投融資承諾件数 投融資額(NEXIの場合は付保額)
JBIC 28件 134億ドル
NEXI 19件 37億ドル
JICA 7件 47億ドル

表にある金融機関別の投融資件数は、投融資する石炭火力発電事業が重複する場合も含む。よって、JBIC、NEXI、JICAの3機関の投融資件数は34件であり、その総発電容量は約36GW であった。34件の内訳は、ベトナム11件、インドネシア9件、インド8件、モロッコ2件など。34 件の推定年間CO2 排出量は約2.2億トン[1]で、日本国内の年間CO2 排出量[2]の約2割に相当する。

[脚注]

[1] マサチューセッツ工科大の報告書「The Future of Coal」の算出データ(500MWの石炭火力発電所の年間CO2換算排出量は約300万トン)を使用。http://web.mit.edu/coal/
[2] 環境省「2016年度温室効果ガス排出量確報値」のデータ(13億700万トン)を使用。https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/results/index.html

3.公的金融機関による海外石炭火力発電への投融資の比較

2017年12月3日に自然資源防衛協議会(Natural Resources Defense Council: NRDC)が発表した『Power Shift: Shifting G20 International Public Finance from Coal to Renewables』[3]によると、2013年から2016年の3年間の石炭関連事業投資額は、中国が最も多く150億ドル、次いで日本は100億ドルだった(図1参照)。ただし、中国では日本の大手民間銀行の役割を公的金融機関が担っていることもあり、単純に中国よりも日本が少ないとは言えない。

図1:国際的な石炭関連事業(採掘等を含む)への公的支援の比較(2013年~2016年)- 拡大するには図をクリック

[脚注]

[3] 自然資源防衛協議会(Natural Resources Defense Council: NRDC)『Power Shift: Shifting G20 International Public Finance from Coal to Renewables』https://www.nrdc.org/resources/power-shift-g20-international-public-finance-from-coal-to-renewables

4.JBICが支援した海外石炭火力発電設備の効率性

JBIC が支援した石炭火力発電設備と同時期に世界で建設された発電設備の燃焼技術を比較したところ、表2の通りとなった。結果、JBIC が支援した設備の効率は、世界平均を下回っていることが明らかとなった。日本政府は、日本が支援する石炭火力技術は高効率であると主張しているが、実際には異なっていることが明らかである。

2JBIC が支援した石炭火力発電設備と同時期に世界で建設された石炭火力発電設備の燃焼技術の比較
2010 年以降に完成もしくは計画された発電設備)[4]

JBICが支援した設備 世界で建設された設備
亜臨界圧 31% 29%
超臨界圧 62% 36%
超々臨界圧 7% 29%
その他/不明 0% 6%

また、南アジア・東南アジアで運転中・建設中・計画中の超臨界圧(SC)と超々臨界圧(USC)の石炭火力発電用ボイラーのうち、日本、中国、韓国、インド、ロシアから提供される設備容量を比較したのが、表3である。日本が支援しないと他国が低効率の設備を支援するので日本が支援するべきとの論調があるが、日本のみが高効率の発電設備を提供しているわけではないことは明らかである。

3:南アジア・東南アジアで運転中・建設中・計画中の超臨界圧(SC)と超々臨界圧(USC)の
石炭火力発電用ボイラーのうち、日本、中国、韓国、インド、ロシアから提供される設備容量(単位:
MW[5]

日本 中国 韓国 インド ロシア
超臨界圧 10,090 55,650 11,300 40,320 1,980
超々臨界圧 2,000 2,680 2,680 1,320 0

[脚注]

[4]気候ネットワーク、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、国際環境NGO FoE Japan、CoalSwarm、Friends of the Earth US、シエラクラブ「石炭はクリーンではない」(2015年4月24日 調査レポートへのリンク)を参照。

調査レポート「石炭はクリーンではない―検証:日本が支援する海外の石炭火力発電事業」を発表

[5]「石炭の公的支援:日本のせいで OECDは新興国に後れをとることになるのか?」(2015年10月15日プレスリリースへのリンク)を参照。

【プレスリリース】 環境NGOが報告書を国際共同発表 「石炭への公的支援:日本のせいでOECDは新興国に後れをとることになるのか?」

5. JBICが支援した海外石炭火力発電設備の公害対策

石炭火力発電は気候変動への悪影響に加えて、大気汚染も深刻な問題である。JBIC が支援した石炭火力発電設備のSO2 除去技術と微粒子(PM)除去技術を調査したところ、JBICが支援した石炭火力発電設備のうち、約半分で脱硫装置が設置されていないことが明らかとなり、約8割で、繊維フィルターや低温電気集じん機などの適切な微粒子除去技術が使われていないことが明らかとなった。[6]

また、日本国内の石炭火力発電所とJBIC が支援又は支援検討中の石炭火力発電所の公害対策を比較したところ、JBIC 支援案件の発電所における排出濃度が国内の発電所のものよりも非常に高い傾向にあることが明らかとなった(「添付資料2:JBIC 支援(予定)の海外の石炭火力発電所と日本の石炭火力発電所との環境対策技術比較」を参照)。

[脚注]

[6] 気候ネットワーク、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、国際環境NGO FoE Japan、CoalSwarm、Friends of the Earth US、シエラクラブ「石炭はクリーンではない」(2015年4月24日 調査レポートへのリンク)を参照。

調査レポート「石炭はクリーンではない―検証:日本が支援する海外の石炭火力発電事業」を発表