Don’t go back to the 石炭〜石炭火力発電に反対 |石炭発電|石炭火力発電|反原発

環境アセスを難なく通過?パリ協定や地元住民の意思とは逆行して突き進む横須賀火力発電所計画

(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機の石炭火力発電所建設計画の環境アセスメントが終盤を迎えている。2018年11月15日に株式会社JERAが評価書を提出しており、30日には経済産業省が評価書の変更を要しない「確定通知」を提出したのである。通常確定通知が出るまで1ヶ月かかるところ、その半分のスピードという速さである。

世界的には石炭火力を2030年にはゼロにしようという動きが強まる中、パリ協定に逆行するこの事業計画に対して、何の異論も出さずに容認する経済産業省、そして、その通知を受けて何もリアクションをしない環境省の態度は、改めて日本の環境アセスメントの欠陥を浮き彫りにした。この後、12月18日から2019年1月25日まで事業者による評価書の縦覧期間が設けられているが、これに対して住民が公式に意見を提出できる場は用意されていない。このままいけば、縦覧期間を終えた後、経済産業省に工事計画が提出され、着工となる。

最速スピードで進んだ横須賀火力の環境アセスメント

横須賀火力発電所計画は、2013年に定められた「火力発電所リプレースに係る環境影響評価手法の合理化に関するガイドライン」に基づいて環境アセスメントが行われている。このガイドラインは、環境アセスメントを「簡素化」「迅速化」するために設けられたもので、通常(新設の場合)の環境アセスメントよりも1年強も短縮することを目指してつくられているのだ(1)。ガイドラインが適用されれば、気象状況・濃度状況の調査や海生生物の調査の省略が可能となるなど、事業者にとっての手間を省くことができる。

環境アセスメントの実施にあたって、このガイドラインを適用するには、リプレース後の発電所からの「温室効果ガス排出量」「大気汚染物質排出量」「水質汚濁物質排出量」「温排水排出熱量」の低減が図られることが条件とされている。横須賀の場合、かつて石油を燃料としていたところを石炭に変更することで温室効果ガスの排出係数は増えるし、そもそも2010年にはほぼ既存の火力発電所が動いていなかったことを鑑みれば、火力発電所からの大気汚染が発生していない8年間を過ごしている地元の人にとっては、2023-24年に相次いで稼働を開始する計画など完全に「新設」と同じ状況である。それにもかかわらず、この計画では「リプレースガイドライン」が適用された。そして、2016年4月22日に配慮書が受理、同年10月は方法書公表、2017年3月に経産大臣の通知が発出されて、2018年1月には準備書が出て、年内に経産省の確定通知まで出てしまうという、まさに石火のごとく環境アセスメントが進められてきたのである。もう一つの問題は、リプレースガイドラインが適用されたことで、新規設備の環境アセスメントの手続き中に、既存設備の解体工事をアセスせずに実施できるため、地元でもしっかりと説明がなされないままに、解体工事が着々と進んでいるのである。

解体作業が進み、3本だった煙突が2本になった横須賀火力発電所

JERAは「東電改革」の1丁目1番地。横須賀火力は親方日の丸事業!?

もともと横須賀火力発電所は東京電力の発電所だったが、現在の計画は、東京電力から株式会社JERAに移行している。JERAは東京電力福島第一原子力発電所事故後に東京電力と中部電力の合弁会社として設立された会社で、国の肝いり企業といえる。というのも、現在の東京電力ホールディングスの筆頭株主は54%のシェアを持つ原子力損害賠償・廃炉等支援機構で、事実上、国の管理下にあり、JERAに関しては、国が提言をまとめた「東電改革提言」で「燃料・火力事業で先行して共同事業体を設立した JERA の完全統合は、必要不可欠」と示されるなど、JERAの成功が東電改革の成功だと言われているからである。

JERAは、事業において「燃料上流・調達から発電に至るまでのバリューチェーン全体を統合するとともにグローバルなレベルでの投資活動を行うことにより、事業規模と事業領域を拡大し、投資収益を追求」するとあり、要するに化石燃料(主にLNGと石炭)の火力発電事業に関する調達、輸送、発電までを一貫してグローバルに展開することで、ビジネス拡大をねらっているのである。そして、2019年4月からは、「東京電力フュエル&パワー株式会社および中部電力株式会社の燃料受入・貯蔵・送ガス事業および既存火力発電事業等を承継」することになっている。ちなみに、現在JERAの石炭取扱規模は世界全体で3500万トンにものぼる(2)

しかし、パリ協定で1.5℃目標を目指す社会、将来的には脱炭素社会を目指す中において、火力部門で、ましてや石炭で今後のグローバルな事業展開を狙うところこそが、グローバルな感覚からズレていると指摘せざるを得ない。

横須賀の計画は住民不在で進む。計画を知らない人は8~9割

横須賀では、2017年2月に市民団体「横須賀石炭火力発電所建設計画を考える会(以下「考える会」)」が発足している。考える会の様々な活動展開によって、方法書が公表された2016年秋に行われた事業者説明会にはごく僅かだった参加者が、2018年1月に行われた準備書の事業者説明会では、会場があふれるほどの参加者が集まり、なぜ石炭火力なのか追求する質問が続出。反対意見を述べる声が大きく、市民の関心が高まっていることを表していた。また、神奈川県が今年6月に行った公聴会においても、18人の陳述人の意見はすべて反対であった(3) 。なお、この公聴会に出席できる人は計画地から半径3km圏内の町内の住民に限定され、横須賀市民であっても陳述人の対象にならないなど、かなり地域的な限定があったことも書き添えておきたい。

しかし一方で、今年9月に1000人を対象に実施された横須賀火力発電所の建設計画についてのアンケート調査では、75%の人が知らないと回答している。またその内訳をみてみると、横須賀で計画について知らないと回答しているのが64.9%だったのに対して、横浜市金沢区では87.9%、逗子市では86.2%、葉山町では92.1%と、横須賀市外では一段と認知度が下がる結果になった。やはり建設計画があること自体、大半の人には知られていなかったのだ。それもそのはずで、大手メディアにはほとんど報道などされてこなかったという現実があるからで、事業者も環境アセスメントを実施しながらも、積極的な広報などしてこなかったからである。

当然ながら、この発電所ができて影響を受けるのは横須賀市民に限定されるわけではない、PM2.5など大気汚染物質の拡散は関東一円で広がることが予測されているし、気候変動問題に関しては、地球規模で影響が出ているのだ。より広範囲の人たちに周知するのが、事業者としての責任であろう。

考える会が頻繁に地元でのセミナーを開催してきたことで、今横須賀を超えた地域での広がりができている。2018年9月移行、逗子市、三浦市、鎌倉市など三浦半島の近隣市でもセミナーを開催。今ようやく横須賀市外でもこの問題に関心を持ち始めた人が増えてきたのである。

今ならまだ引き返せる。住民への徹底した説明を

考える会では、この秋から改めてJERAに対して計画中止を求める「署名」をスタートさせた。署名では、まず第一に、石炭火力は気候変動を加速させ、大気汚染を引き起こす「元凶」であるとして、「大気汚染物質を排出し、長期間に亘って大量の二酸化炭素(CO2)を排出すること」や「年間726万トンものCO2を排出する横須賀の石炭火力発電所の建設は『パリ協定』の削減目標達成から大きく逸脱する」と訴えている。

また、第二に、この事業計画が「国内の電力需給を考慮しても必要ないことは明らか」としつつ、「水銀などの重金属、PM2.5、大気汚染物質による地域住民の健康被害のリスクを高めること」を指摘し、「太陽光や風力など環境によりやさしい持続可能で“クリーンな自然エネルギー”」へのシフトを求め、JERAが大手電力会社の社会的責任を果たし、横須賀火力発電所建設計画の中止を決断することを要望している。

横須賀の計画は、住民への説明が不十分だ。特に周辺自治体では9割近くの人が計画を知らないのである。JERAはその社会的責任として、工事計画に進むべきではない。少なくとも住民とのコミュニケーションを深め、計画再検討の時間をとるべきだろう。

ネット署名はこちらから。

横須賀の石炭火力発電所建設問題を考える会の署名アクション

横須賀の石炭火力発電所建設問題を考える会の署名アクション


脚注

(1)環境省「環境アセスメントの迅速化・明確化」https://www.env.go.jp/council/02policy/y0212-01/mat04_5.pdf
(2)JERAの事業「燃料事業」http://www.jera.co.jp/business/fuel/
(3)(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機建設計画に係る環境影響評価準備書及び条例環境影響評価準備書についての公聴会記録http://www.pref.kanagawa.jp/docs/ap4/documents/201806koutyoukaikiroku.pdf