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メガバンクはいつまで石炭に投融資するのか?

2018年12月、ポーランドのカトヴィツェで開催された国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)で、ドイツの環境NGOウルゲバルト(Urgewald)と国際環境NGOバンクトラック(BankTrack)らが発表した調査報告書には、新規石炭建設計画を支援している銀行と機関投資家が特定されていました。その中には、当然日本の3大メガバンクグループ(三井住友、三菱東京UFJ、みずほ)も含まれています。

石炭火力発電所計画への巨額融資

ウルゲバルトの報告書によると、2016年1月以降、235の民間銀行が石炭火力発電事業者の上位120企業に対して1010億USドルを超える直接貸付を行ってきました。その上位、最も多額の貸付を行っていたのは、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)で128億USドル、2位は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で99億USドルでした。これを含め、2016年から2018年に上位の石炭火力発電関連企業への貸付の30%は日本の民間銀行が行っていることが明らかになっています。日本の銀行は、世界の先進国のどの国よりも多くの石炭火力発電所の建設に関わっているだけでなく、2012年以降に計画された約40基の石炭火力発電所の新設を後押ししているのです。この数には、現在、既に建設が始まっているものもあります。

方針転換を迫られるメガバンク

しかし、現実には世界では石炭火力発電への投融資に厳しい目が向けられており、日本のメガバンクも無視できない状況になってきました。石炭火力発電への投融資を見直す動きが出始めたのです。2018年5月、三菱UFJフィナンシャル・グループは、邦銀としては最初に、石炭火力に関するファイナンスを慎重に検討すると発表。続く6月、三井住友銀行が高効率とされる「超々臨界圧(UCS)」方式でなければ原則融資を行わないとの指針を公表し、みずほフィナンシャルグループも同月、石炭火力向け投融資について厳しく審査するとした指針を表明しました。これら3メガバンクは、石炭方針を定期的に見直し、今後さらなる厳格化も検討すると報じられています。ただし、これらの石炭方針には抜け穴があります。高効率であれば、OECDのガイドラインに準じていれば、日本政府つまりは国際協力銀行(JBIC)などとの協調融資であれば……といった融資を可能とする例外が設けられているのです。日本政府がいまだに石炭火力を「ベースロード電源」と位置づけ、石炭推進を掲げている中では、大きな方針転換は見込めないということでしょうか。

一歩踏み出した銀行も

3メガバンクの方針に抜け穴があると指摘されている一方、一歩踏み出したのは三井住友信託銀行でした。2018年7月、三井住友信託銀行は、USC向けも含めて国内外の石炭火力発電所に対する融資を原則として取りやめることを統合報告書に明記しました。三井住友トラスト・ホールディングも同じ方針であることが報告書に記載されています。ただ、ここでもOECDガイドラインや環境負荷を考慮した場合、個別案件ごとに慎重な対応を行うとの例外を設けているのが残念なところです。

金融機関

銀行 発表 内容 問題点
三菱UFJ銀行FG 2018年5月 ファイナンスの可否を慎重に検討 高効率発電技術、CCSの採用を支持。OECD公的輸出信用アレンジメントに準ずる
みずほ銀行FG 2018年6月 与信判断

エネルギー効率、代替え技術などを検証して判断

三井住友銀行 2018年6月 新規融資についてはUSCまたはそれ以上の高効率案件に限定 USC以上であれば融資

新規のみを対象とする、政府支援のプロジェクトは例外として慎重に検討

三井住友信託銀行 2018年7月 新たな石炭火力発電プロジェクトは原則取り組まない OECDガイドライン、発電効率、環境負荷などを慎重に検討し個別案件ごとに対応

このほか、保険会社では、日本生命と第一生命が石炭火力発電に関するプロジェクトファイナンスへの融資を禁止すると発表しています。また、商社としては丸紅が他社に先駆けて新規石炭火力事業に取り組まないとの方針を発表しましたが、丸紅は商社の中でも最も大きな発電事業の設備容量を有している上、現在計画中および建設中の案件は対象外、さらにBAT技術(現在はUSCが該当)を採用し、国家政策に合致した案件については例外的に取り組みを検討するとしていることが、気候変動対策としては不十分であると指摘されています。

保険会社

保険会社 発表 内容 問題点
第一生命保険 2018年5月 海外石炭火力発電事業へのプロジェクトファイナンスに新規融資しない(禁止) 国内の石炭火力発電事業は除外
日本生命保険 2018年7月 石炭火力発電事業への新規投融資(プロジェクトファイナンス)を国内外で停止 石炭火力の否定するわけでなく、CCSを伴う新規石炭火力案件については投融資を検討
明治安田生命保険 2018年9月 同年10月から、石炭火力発電向けの新規投融資(事業融資)を内外問わず原則中止+石炭火力の整備を目的とした企業への投融資も停止 融資原則の例外としてUSCの新規融資は認める
国際的な流れに追いつけない日本の銀行

上表に記したように、2018年に3メガバンクが揃って石炭火力への融資基準を厳しくしたことは、小さな一歩として歓迎できるものではありますが、いずれも投融資を停止するところまでは踏み込んでいません。国際的な潮流を鑑みれば、まだまま甘い上に抜け穴があることで、どこまで実質効果が出るのか疑問です。

世界が脱石炭に向かう中、いつまでも石炭火力への融資を続ければ、国際的な批判にさらされるだけでなく、金融機関としての格付けが下がる可能性も捨てきれません。石炭火力への融資が大きければ大きいほど、投資家からの評価は低くなるのです。また、将来的に石炭火力発電所の稼働率が下がれば、座礁資産を抱えるリスクを負うことになります。世界では、仏BNPパリバや独ドイツ銀行、米JPモルガン・チェースなどの大手欧米金融機関が石炭火力への新たな投融資を全面的に停止または大幅削減をするなど、基準の厳格化と実施を進めています。保険大手も、仏アクサやスイスのチューリッヒ保険は石炭関連企業への投資を打ち切っています。環境を配慮する「ESG投資」が広がる中、石炭火力への風当たりは強くなる一方でしょう。この風は日本にも吹き始めています。メガバンク、それらに続く日本の民間銀行はいつまで石炭への投資を続けるのでしょうか。

関連リンク

  • 石炭火力を考える東京湾の会:【報告】みずほ、三菱UFJ、三井住友、農林中金の回答及び対応について(リンク
  • NGOレポート 『COP24:世界の石炭火力発電拡大のための民間銀行・機関投資家による投資実態が明らかに』(リンク

参考(NGOからの共同声明)

  • NGO共同声明:「わずかな進歩だが、パリ協定目標達成には不十分」 〜三井住友銀行が新融資方針を公開、石炭火力の制限示すも、”例外”に言及〜 (6月21日)(リンク
  • NGO共同声明:みずほFG新投融資方針策定、気候変動リスク管理に対する小さな前進。(6月14日)(リンク
  • NGO共同声明:「小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要」三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表(5月25日)(リンク
  • NGO共同声明:日本生命、日本の金融機関として初の国内外石炭火力発電プロジェクトファイナンス不参加決定ー環境NGOが歓迎(7月13日)(リンク