インドラマユ農民が再び不当逮捕 日本政府・JICAは人権侵害のつづく石炭火力・拡張計画への支援を早急に停止すべき

昨年12月に事業に反対する農民らが一時不当逮捕されたインドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(国際協力機構(JICA)支援案件)ですが、9月24日、同農民らが再び不当逮捕されました。インドラマユ県警は、農民らがインドネシア国旗を上下逆に掲げたという「国旗侮辱罪」の嫌疑で捜査を続けており、9月21日付で農民らに召喚状を出していました。

24日、同事業への反対運動を続けている地元の住民ネットワーク JATAYU(インドラマユから石炭の煙をなくすためのネットワーク)のメンバーは、「インドネシア農民デー」を祝いながらも、インドラマユ県警前に集まり、仲間の不当逮捕を止めるよう抗議の声をあげました。しかし、県警側は10月13日まで20日間の勾留を決定。同農民らは現在、県警の留置所内に身柄を勾留されています。

 

 

 

 

 

 

写真:「インドラマユの環境のために闘っている農民 サウィンとスクマを犯罪者扱いせず、釈放して!」などと書かれた横断幕を持ってインドラマユ県警前で抗議を行なうJATAYUのメンバーら(2018年9月24日。現地より)

同事業・拡張計画(1000 MW×2基)は、JICAがすでに1号機について事前調査を行ない、現在も基本設計等を支援中です。JICAは今後、1号機建設に対する円借款を検討しようとしていますが、地元住民は唯一の生活の糧である農地や漁場を奪われると強く反対してきました。昨年7月には、住民3名が原告となり、同計画への環境許認可が地元政府により不当に発行されたと行政裁判所に提訴。その結果、昨年12月初めには住民の訴えが認められ、同計画への環境許認可の取消しが言い渡されています(同訴訟は現在、最高裁の判決待ち)。

住民らはこれまで、事業反対の横断幕とともに、インドネシア国旗を掲げながら、同事業の中止を求めてきました。今回、逮捕された2名の農民サウィン氏とスクマ氏も、昨年12月14日、同様に、継続して事業に反対している意思を見せるため、国旗と横断幕を自分たちの村に取り付けました。隣人の証言や証拠写真によれば、「国旗を上下逆に掲げた」という国旗侮辱罪は言いがかりであり、事業に反対する住民を黙らせようとする弾圧・嫌がらせの可能性が強いと言えます。

 

 

 

 

 

写真左:この日もJATAYUメンバーらはインドネシア国旗を横断幕とともに掲げて、仲間の釈放を求めた(2018年9月24日。現地より)
写真右:自分の村で国旗を掲げるサウィン氏(2017年12月14日。現地より)

事業に反対する住民らが、裁判や平和的な手段で抗議しているにもかかわらず、このような公権力による弾圧を受けるといった状況は、許されるべきではありません。また、こうした公権力による強硬な行為は、住民のなかに恐怖感を残し、少なからぬ住民が反対運動への参加を躊躇することにつながる可能性もあり、人権擁護の観点から大変憂慮されます。

日本政府・JICAはインドネシア政府に対し、日本が関与している事業地での人権侵害について、早急に強い懸念を表明するとともに、こうした事業への支援ができないことを明確に伝えるべきです。また、勾留されている農民の早急な無条件釈放と再発防止を含む、人権状況の早急な改善を求めるべきです。

以下、現地NGO インドネシア環境フォーラム・西ジャワのプレスリリース(和訳)です。
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2018年9月24日
プレスリリース
インドラマユ・ムカルサリ村の農民2名を自由の身に!

(インドネシア・西ジャワ州インドラマユ県パトロール郡)ムカルサリ村プロクントゥル地区の2名の農民に対する刑事事件が、2018年9月24日、インドネシア農民デーの最中にも続いています。2名の(犯罪者扱いされている)犠牲者は、インドネシア国旗を上下逆に掲げたとの罪状で、インドラマユ県警の捜査官らから召喚令状を受領。2018年9月24日(月)に出頭するよう求められました。

(農民が犯罪者扱いされている)本件は2017年に端を発し、いまだに続いているものです。このケースの経緯を見れば、これがただの策略であることがわかります。(警察への)通報者も誰であるか定かではなく、証拠とされているものも多くの人にとって奇妙なものです。2名の農民は、良心のない輩から「犯罪者扱い」という人権侵害を受けている犠牲者です。インドネシア農民デーにあたって、2人は彼らの家族、そして、農民としての日々の生活から引き離される脅威を伴う法的手続きに直面するのではなく、農民にとっての記念すべき日を味わえるべきです。彼らが愛するインドネシアという国で、こうした法的手続きに晒されるのは残念なことです。

(犠牲者の農民の一人である)サウィン氏は彼の認識について、こう述べています。
「私は自分が国旗を掲げたときのことを正確に覚えています。私は色の見分けがつかないわけでも、愚か者でもなく、私が掲げた国旗は上下逆さまではありませんでした。もし私が間違った向きで国旗を掲げていたとすれば、私と一緒にいた住民らが私を叱ったことでしょう。私が、私のことをよく思わない輩による「犯罪者扱い」の犠牲となっていることは明らかです。特に、私がこの村で新たに(インドラマユ)石炭火力発電所が建設される計画を望んでいない住民の一人であるためです。私は、いかなる場においても、このような告発に挑む覚悟ができています。私は国旗を間違った向きで掲げたことは一切ありません。」

(同じく犠牲者の農民の一人である)スクマ氏は、こう述べています。
「私はサウィン氏とともに自分の村内で、紅白の色の国旗を掲げました。その国旗が上下逆ではなかったことを目撃している住民が他にもいたことを覚えています。また、私たちには、(そのときに)サウィン氏が正しい向きで紅白の国旗を手にしている写真があります。国旗を掲げた翌日、その国旗が上下逆になっているという報告があり、また、その国旗は消えてなくなっていました。私は国旗の色が上下逆になり、どこかへ行ってしまったことに驚き、奇妙に思いました。私はこのようなことで逮捕されるのを中傷だと強く感じています。」

(WALHI)西ジャワの政策提言スタッフであるワヒュディン・イワンは、次のように述べています。
「本件は、手続として警告や注意が履行されてきていたとしていても、非常に稀有なケースだと言えます。というのも、国旗を上下逆に掲げたことについて、二人の犠牲者は一切認めないと繰り返し主張してきたからです。また、二人は今日まで、国旗を間違った向きで掲げたことは一切なく、既存の法規範に反する目的も一切なく、国家の象徴をおとしめるような意図も一切なく、国家に物申したことも一切ないと述べています。今回の刑事事件が虚偽に過ぎないことは明らかです。国家に反する意図を有しているとして自らを侮辱するような作為的な意思を犠牲者が持っていないと私たちは考えます。」

こうした「犯罪者扱い」のケースは、(2017年12月初めに)インドラマユのムカルサリ村の住民らがバンドン行政地裁で勝訴した後に始まりました。サウィン氏とスクマ氏のケースで持ち出された刑法の条項は、長年使われてこなかったものです。同計画に反対している他の農民も犯罪者扱いされているケースがあります。住民が反対している同石炭火力発電事業・拡張計画には、日本の国際協力機構(JICA)が資金供与を行なう予定です。同計画に対する環境許認可はバンドン地裁で取り消されましたが、政府側が控訴したため、現在、最高裁の判決待ちとなっています。

私たちはインドラマユ県警、および、検察官に対して、以下を要求します。
1. 二人の農民について、不当逮捕を止めること
2. 二人の農民に対する不当な法手続きを止めること
3. 二人の農民の容疑者という状態を早急に解き、二人の自由を確保すること

連絡先:
WALHI西ジャワ 政策提言スタッフ

(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
2,000 MW(1,000 MW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(1,000 MW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、エンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を2013年3月に締結。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。

追記

今回の現場での深刻な事態を受け、9月25日、NGO 3団体より外務省・JICAに緊急要請書を提出しました。緊急要請書はこちら(PDF