【共同声明】「小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要」 三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表

「小さな前進、しかし具体的な取り組み内容の向上が必要」
三菱UFJの環境・社会ポリシーフレームワークの制定について環境NGOが評価を公表

国際環境NGO350.org日本支部 350.org Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
認定NPO法人 気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が5月15日に「MUFG 環境方針」「MUFG 人権方針」、そしてMUFGの取引先などに適用される「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」の制定についてプレスリリースを公開した。MUFG、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)からなる日本3大金融グループの中で 、融資・引受に関する広範な社会的並びに環境的保障措置を発表したのは、MUFGが初めてである。

私たちは、今回のMUFGの動きに大いに注目しており、環境社会配慮の方針の明確化は同グループの金融活動が引き起こしている気候変動、森林破壊、人権侵害などの問題にMUFGが向き合おうとしている姿勢として評価する。しかし、「パリ協定」及び「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」などの重要な国際的目標を実現するためには、具体的な取り組み内容を向上させることが必要だと考える。

MUFGを含め3大金融グループには、パリ協定に整合した事業戦略や明確な指標・目標を公表することが求められている。パリ協定の目標達成に向けて、まず取るべき行動は、国内外の石炭火力発電事業や石炭火力発電に関与する企業への新規融資・引受から撤退することである。MUFGの環境社会配慮の方針をより良いものとするためには、350.org Japanを始めとする7団体が「石炭火力発電事業及び石炭採掘事業への新規融資に関する要請」の中で挙げている具体的な要請に応じることが望ましいと私たちは考える(注1)。

私たちは、MUFGの環境方針において、気候変動への対応が重要な責務であると取り上げられていることを歓迎する。MUFG は「低炭素社会への移行を促進し、気候変動に対するリスクを低減するために」業務および商品・サービスの提供において、太陽光・風力等の再生可能エネルギー事業資金調達の支援や気候変動に影響を及ぼす可能性に考慮した対応や調査・研究を進めると宣言している。さらに、気候変動への取り組みにおいて、パリ協定、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言や責任投資原則(PRI)を始めとする国際的な協定やイニシアティブを支持することを明確にしている。

一方で、気候変動の主な要因となっている化石燃料に対して同グループは多額の投融資を行っており(注2)、MUFG 環境・社会ポリシーフレームワークでは化石燃料ファイナンスに関して十分な配慮が見られない。石炭火力発電セクターへのファイナンスに関して、「三菱 UFJ 銀行と三菱 UFJ 信託銀行は、石炭火力発電に係る新規与信採り上げに際しては、 経済協力開発機構(OECD) 公的輸出信用アレンジメントなどの国際的ガイドラインを参考に、石炭火力発電を巡る各国ならびに国際的状況を十分に認識した上で、ファイナンスの可否を慎重に検討します」と表明している。OECD 公的輸出信用アレンジメントは、支援対象を高効率石炭火力発電に絞る規定となっているが、国連環境計画(UNEP)は、パリ協定の1.5~2℃目標達成のためには、仮に高効率のものであっても、新たな石炭火力発電所の建設は許されず、既存の石炭火力発電所も廃止していく必要があると勧告している。また、炭素含有量が最も多い石油であるタールサンドを含め、その他の炭素集約度が高く財務上リスクのある化石燃料については一切言及がない。

また、気候変動及び生物多様性の損失の大きな要因である森林減少に関する内容は一定の評価ができるが、国際的基準を満たしていない。ラムサール条約指定湿地やユネスコ指定世界遺産へ負の影響を与える事業及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)に違反する事業へのファイナンスを禁止することによって気候変動の緩和にとって極めて重要である熱帯林と泥炭地の一部が保護されていることは評価できる。また、保護価値の高い地域へ負の影響を与える事業へのファイナンスに際して特に留意し、顧客企業の環境社会配慮の実施状況を確認することが明記されていることは一歩前進である。しかし、国連合意に基づく持続可能な開発目標(SDGs)や国際業界団体コンシューマー・グッズ・フォーラム(TCGF)などの動きとは合致せず、企業が森林減少ゼロを実施するため、広範に支持されている高炭素貯留アプローチ(HCSA)も言及されていないことは残念である。

人権方針について、ビジネスと人権に関する指導原則を含む国際的な人権基準を尊重することが明記され、児童労働や強制労働を行なっている事業に対するファイナンスを禁止していることは高く評価する。特に「国際的に認められた基準等と当該国の法令等との間に矛盾がある場合、国際的な基準等を尊重するための方法を追求します」との認識は重要である。その観点で、先住民族の権利に関する国際連合宣言も国際的人権基準として含むべきである。また、先住民族の地域社会へ負の影響を与える事業や非自発的住民移転に繋がる土地収用を伴う事業へのファイナンスに際して特に留意し、顧客企業の「環境社会配慮が、予想されるリスクまたは影響に比べて十分とは言えない場合には、ファイナンスを実行しない」と書かれていることは極めて重要である。この方針を元に、児童労働が指摘されてきた顧客企業のパーム油生産者や、先住民族の権利侵害が指摘されているタールサンド・パイプライン建設会社へのファイナンスの見直しなど、運用面での適切かつ速やかな対処を期待したい(注3)。

欧米では、複数の主要銀行が気候変動の原因である二酸化炭素(CO2)を最も多く排出する化石燃料関連企業、特に石炭関連事業や企業から投資撤退するダイベストメントをすでに進めている。欧州のING銀行、BNPパリバやドイツ銀行は新規の石炭火力発電事業に対する投融資を禁止している。さらに、多くの銀行は石炭火力発電に関与する企業への投融資も制限すると発表している。また、森林と泥炭地の保護に関してはHSBCやABNアムロをはじめ、欧州の主要銀行は森林減少ゼロに整合した方針を打ち出している。

私たちはMUFGを含む3大金融グループが、パリ協定とSDGsに整合するように、石炭や他の化石燃料及び森林破壊に対処する投融資方針を迅速に向上し実施していくことを期待している。

注釈:

注1:「石炭火力発電事業及び石炭採掘事業への新規融資に関する要請」では国際環境NGO 350.orgの日本支部(350.org Japan)は賛同団体とともに、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)および三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)に対して2018年9月12−14日に行われる世界気候行動サミット(Global Climate Action Summit)及び国連責任投資原則(PRI)年次総会前までに以下を求めている。1.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言にもとづき、温室効果ガスを大量に排出する分野への投融資状況を公開すること、2.世界の平均気温の上昇を摂氏2度未満に抑えるシナリオに整合した事業戦略や明確な指標や目標を公表すること、3.パリ協定の目標達成のため、石炭火力発電事業及び一般炭の採掘事業に関与する企業への新規融資を中止すること。
注2:RAN報告書 「化石燃料ファイナンス成績表2018」で、炭素集約度が高く財務上リスクのある化石燃料関連事業にMUFGが融資・引受していることを指摘している。MUFGは近年、石炭火力発電事業への投融資が世界5位で、石炭火力発電所開発では世界で2番目の大きな貸し手であると認識されている。また、米国で建設中のタールサンド・パイプラインの巨大プロジェクトを進めている企業の主要な資金提供者でもある。
注3:パーム油生産会社はインドフード社、 タールサンド・パイプライン建設会社はエンブリッジ社、トランスカナダ社、キンダーモルガン社。参照:RAN報告書「紛争パーム油のヒューマン・コスト(人的損失)」及び「化石燃料ファイナンス成績表2018」

お問合せ先:

350.org Japan :古野 Email: shin@350.org、棚尾真理絵: 090-2183-2113, marie.tanao@350.org