インドネシア・西ジャワ州チレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への 日本の公的融資停止を求める国際要請書(40ヶ国171団体賛同)を日本政府に提出

5月18日、日本の官民が推進するインドネシア・西ジャワ州のチレボン石炭火力・拡張計画(1,000 MW)、および、インドラマユ石炭火力・拡張計画(1,000MW)について、国際協力銀行(JBIC)と国際協力機構(JICA)がこれ以上、公的融資を供与しないよう求める国際要請書(40ヶ国171団体および3個人が賛同)を日本政府に提出しました。

5月15~18日には、インドネシアから両案件に反対する現地住民を支援するインドネシア環境フォーラム(WALHI:FoEインドネシア)のスタッフや弁護士ら3名が来日しており、同国際要請書は同NGOから財務省、外務省、JBIC、JICAに各々手交されました。
  

 

 

 

(写真)左から財務省、外務省、JBIC、JICAにそれぞれ国際要請書を提出するWALHIスタッフ

両案件については、住民が生計手段への影響や健康被害を懸念し、深刻な人権侵害にもかかわらず、抗議活動や訴訟を含む、さまざまな手段で事業の中止を求めています。

昨年、地裁が両案件について、住民勝訴の判決を出しましたが、法廷闘争も依然続いています。チレボンの住民は、自分たちが知らぬ間に発行された2つめの環境許認可について取消しを求めていましたが、その請求が地裁によってこの5月に棄却されたことを受け、高裁に控訴したところです。インドラマユの住民も、2018年4月に高裁が自分たちの請求を退けたことを受け、最高裁に上告したばかりです。

同国際要請書では、このような状況を受け、チレボンおよびインドラマユの住民の粘り強い反対運動への支援を表明し、日本政府、JBIC、JICA等に対して、住民の意見を尊重し、日本の公的融資を両案件のためにこれ以上使うことのないよう求めました。また、日本がこうして石炭関連事業に融資し続ければ、パリ協定に沿って世界が劇的な炭素排出削減を行っている努力を蔑ろにすることに他ならないため、日本は気候変動対策の観点から国際社会のより厳しい批判に晒されることになると警鐘を鳴らしました。

5月15~18日の来日中、WALHIのスタッフおよび弁護士らは、以下にある写真のとおり、記者会見や院内勉強会(詳細はこちら)、セミナー(詳細はこちら)、JBIC前での抗議アクション、また、財務省、外務省、JBIC、JICAとの各会合で、現場の状況や住民訴訟の経過について説明。日本政府が住民の望まない石炭火力発電事業への支援を早急に止めるよう強く求めました。

(写真左)環境省記者クラブでの記者会見(写真右)JBIC前での抗議アクション
 

 

 

(写真左)参議院議員会館での院内勉強会(写真右)セミナー

 

 

 

以下、要請書本文の和訳です。(原文は英語になります。)

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英語原文PDF)(和訳PDF

2018年5月18日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
外務大臣 河野 太郎 様
経済産業大臣 世耕 弘成 様
環境大臣 中川 雅治 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 近藤 章 様
国際協力機構 理事長 北岡 伸一 様
日本貿易保険 代表取締役社長 板東 一彦 様

件名:日本政府はインドネシア・西ジャワ州チレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への融資を停止すべき

世界各国からの以下の署名団体は、日本が推進している汚染を伴う石炭関連事業から自分たちの生活や環境を守るために決してあきらめることなく、運動を続けているインドネシア西ジャワ州チレボンおよびインドラマユのコミュニティに対し、強い支援の意を表明します。日本政府は、深刻な人権侵害にもかかわらず、抗議活動や訴訟を含む、さまざまな手段で反対の意を示し続けているコミュニティの意見を尊重すべきです。私たちは、JBICとNEXIがこれ以上、チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(1,000 MW)を支援しないよう、また、JICAがインドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(1,000 MW)に対する融資を拒否するよう要請します。

私たちは、パリ協定が2015年に採択され、また、2016年に発効されたにもかかわらず、海外での新規の石炭火力発電所の建設を推進する役割を果たしている日本に対し、深い憂慮の念を抱いてきました。

世界中で急速に進む脱炭素化の動きと「効率のよい」石炭火力発電所の輸出を続けるとする日本の方針の相違は、今や顕著です。たとえば、日本の公的金融機関であるJBICとNEXI、および、日本の民間銀行団は昨年、中ジャワ州タンジュンジャティB石炭火力発電事業の再拡張計画(2,000 MW)、および、上述のチレボン石炭火力発電事業・拡張計画に対し、フランスの民間銀行が自身の石炭融資を削減する公約に沿って両計画への(融資)銀行団から撤退した後も、支援を決定しました。こうした動きは、つい最近の今年4月、イギリスの民間銀行が銀行団から撤退したにもかかわらず、JBICと日本の民間銀行団が融資供与を決定したベトナム・タインホア省ギソン石炭火力発電事業・拡張計画(1,200 MW)でも見られました。報道によれば、日本はインドネシアとベトナム以外にも、ミャンマー、フィリピン、モンゴル、バングラデッシュ、ボツワナ、南アフリカ、エジプトなどを含む世界各地で、より多くの新規石炭火力発電事業に関与する計画とのことです。

日本の官民の銀行がこうして石炭関連事業に融資を行なうことは、パリ協定に沿って、世界が劇的な炭素排出削減を行っている努力を蔑ろにするものです。パリ協定の平均気温上昇に関する長期目標を実現するためには、新規の石炭火力発電所の建設はもはや許されないと理解されています。日本は早急に方針を転換し、パリ協定の批准国としての責任を果たすべきです。さもなければ、日本は国際社会からのより厳しい批判に晒されることになるでしょう。

上述のチレボンおよびインドラマユにおける石炭火力発電事業は、地域住民が強い反対を続けていることから国際的な関心を集めてきました。影響住民は生計手段や健康への悪影響など、環境社会面での懸念を伝えてきました。また、以下のとおり、JBIC、NEXI、JICAがそれぞれ有する環境社会配慮ガイドライン(以下、ガイドライン)への違反も指摘されてきました。

第一に、両事業とも、環境許認可に致命的な法的不備を伴っています。各々のコミュニティは行政訴訟を起こし、地元政府が同事業に対して不当に環境許認可を発行したと主張しました。そして、地裁はチレボンの件について2017年4月、インドラマユの件について2017年12月に、それぞれ環境許認可の取消しを宣言しました。

(しかし)このコミュニティ勝訴の判決にもかかわらず、法廷闘争は依然続いています。チレボンのコミュニティは、自分たちが知らぬ間に2017年7月に発行された2つめの環境許認可について取消しを求めていましたが、その請求が地裁によって今月棄却されたことを受け、高裁に控訴したところです。インドラマユのコミュニティも、2018年4月に高裁が自分たちの請求を退けたことを受け、最高裁に上告したところです。JBIC、NEXI、JICAは、裁判所による最終判決が確定するまで、両事業への支援を行なうべきではありません。環境許認可の取消しが法的に確定した場合、「相手国の政府等が定めた環境に関する法令の遵守」や「環境許認可証明書の提出」を要件とするガイドラインに両事業が明確に違反することになるからです。また、開発利益が優先され、環境を保護するための法令が形骸化している現状について、コミュニティを支援している弁護団やNGOらが警鐘を鳴らしていることについても留意すべきです。

第二に、このように訴訟が継続されていることは、チレボンおよびインドラマユにおける事業にコミュニティが継続して反対している証左の一つです。つまり、両事業について、ガイドラインで要件としている「社会的合意」が確保されていないことは明白です。

第三に、地元の農民や漁民に対して、彼らの生計手段を改善、もしくは、少なくとも回復するための適切かつ効果的な対策が欠如しています。たとえば、チレボンで事業者が提供した漁網は、小規模漁業者の生計手段を回復するために効果的ではなく、それどころか、地域社会の分断をもたらすものです。同様に、インドラマユの小作農や日雇い農業労働者に対して提供するとされている家畜は、失うことになる農地に取って代わるものではありません。そうしたプログラムは、コミュニティの生計手段に及ぶ甚大な影響に対する的確な解決策とはなりません。コミュニティが必要なのは、漁業のための健全な沿岸域の環境であり、農業のための灌漑の整った肥沃な土地です。この状況は、「プロジェクト実施主体者等は、移転住民が以前の生活水準や収入機会、生産水準において改善または少なくとも回復できるように努めなければならない」と規定するガイドラインに明確に違反しています。

最後に、声をあげているコミュニティのメンバーに対する人権侵害が軽視されてはなりません。特に、インドラマユで続いているコミュニティーを犯罪者扱いする状況は、憂慮すべきです。2017年12月には、3名の地域住民が地元警察によって不当逮捕され、釈放されたものの依然として容疑者扱いの状況は変わっていません。また、その他の地域住民(上述の訴訟の原告の一人を含む)も今年4月から逮捕・勾留されています。こうした状況は、インドラマユだけでなくチレボンでも、コミュニティに萎縮効果をもたらし、自由な意見表明を妨げる可能性があります。両事業において、ガイドラインが要件としている「影響住民の意味ある参加」が確保できないことが非常に懸念されます。

末筆とはなりますが、私たちは、ジャワ・バリ系統の電力予備率に関して注意喚起します。同系統の電力予備率の余剰分はすでに32パーセントに達しています。最新のインドネシア政府の報告書では、2027年まで、同系統の電力予備率の余剰は29 パーセントに維持されうると述べています。インドネシア全域における2017 年の電力需要の伸び率はわずか3.57 %で、経済成長率の伸びとは一致しませんでした。また、両伸び率ともに、推定計画値を大幅に下回っていました。地球規模の気候や地域住民の生活・環境を犠牲にしてまで、チレボンおよびインドラマユの両事業が必要であるかは大いに疑問です。

私たちは、チレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への支援を日本政府がこれ以上行なわないよう再度要請します。日本は石炭関連事業への融資を止め、地域の大気や水を汚染することなく、また、気候変動も助長することのない電気へのアクセスを増進するクリーンかつ持続可能な再生可能エネルギー計画への支援に転換していくべきです。
Cc: 丸紅株式会社 代表取締役社長 國分 文也 様
株式会社JERA 代表取締役社長 垣見 祐二 様
株式会社みずほ銀行 取締役頭取 藤原 弘治 様
株式会社三井住友銀行 頭取兼代表取締役 髙島 誠 様
株式会社三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 三毛 兼承 様
韓国輸出入銀行 頭取 Sung-soo Eun 様
Mr. Ralph Hamers, CEO and chairman Executive Board, ING Group
アイエヌジーバンクN.V. 東京支店 代表者 Yuichi Hirasawa 様
(以下、40ヵ国171団体署名)

【連絡先】
国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986