STOP 日本の化石燃料融資にNO!

インドネシア住民・NGO原告団の来日活動報告 「日本は違法・有害・供給過剰なチレボン石炭火力で住民の生活を壊さないで!」 ―記者会見、関連省庁等との会合、アクション、セミナーなどで訴え

12月4~9日にかけて、日本の官民が推進するインドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(※)について、12月4日に「再」環境訴訟を起こしたばかりの住民・NGO原告団3名が来日。住民の生活を壊すだけでなく、違法判決が一度出ており、さらに供給過剰・電気料金の高騰を引き起こす恐れのある事業を日本がこれ以上支援しないよう、記者会見、関連省庁等との会合、アクション、セミナーなど、さまざまな形で訴えました。

(写真)12月6日朝の出勤時間帯に国際協力銀行(JBIC)前で抗議アクション。インドネシアから来日中の3名に日本のNGOも加わり、チレボン石炭火力・拡張計画に対する融資の撤回を訴えた。

 

 

 

 

以下、彼らの来日中の動きを写真で紹介するとともに、3名それぞれの主張を簡単にまとめました。

<来日した3名の紹介>

  • リキ・ソニア氏:チレボン石炭火力発電事業1号機の建設時、2007年から反対運動を続けてきた住民グループRAPEL(ラペル。環境保護民衆)の青年リーダー。
  • シャウリ・デリムンテ氏:RAPELメンバーの住民訴訟を支援する「気候正義のための提言チーム」の弁護士で、バンドン法律扶助協会(LBH)に所属。
  • ドウィ・サウン氏:RAPELを支援してきた現地NGO・WALHI(ワルヒ:インドネシア環境フォーラム)のスタッフで、エネルギー・都市問題を担当。

<記者会見>

12月5日、環境省記者クラブにて記者会見を開催。部屋はほぼ満員となり、住民と弁護士が、同会見の前日に提訴したばかりのチレボン石炭火力・拡張計画に関する新しい訴訟について熱心に説明しました。また、住民の反対・懸念や6ヶ月の調査要請、そして、住民の権利や訴訟リスクを無視し続ける国際協力銀行(JBIC)を糾弾。JBICが自身のもつJBIC環境ガイドラインを守り、同拡張計画への融資を撤回するよう訴えました。

 

 

 

 

メディア掲載情報
・NHK 2017年12月6日 「日本融資のインドネシア石炭火力発電所 住民が抗議」
・しんぶん赤旗(紙面) 2017年12月6日 「インドネシア石炭火発拡張計画 融資を撤回して 住民やNGOが会見」

<抗議アクション>

12月6日朝の通勤時間帯にJBIC前(左上写真)で、また、6日正午の昼の時間帯に財務省前(その他の写真3枚)で、それぞれ街灯抗議アクションを行ないました。インドネシアから来日した3名がそれぞれチレボン石炭火力・拡張計画の問題点を訴えるとともに、日本政府・JBICに住民の権利を尊重し、違法な拡張計画への融資を撤回するよう、改めて訴えました。


 

<住民訴訟原告団・来日セミナー 「違法・有害・供給過剰」なインドネシア・チレボン石炭火力の実態―日本の官民によるインフラ輸出と環境社会問題を考える―>

12月7日夜、東京・渋谷の地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)に約30名の参加者が集い、住民・弁護士・NGOからの話に熱心に耳を傾けました。質疑応答の時間には、インドネシア全体の電力事情に関心が集まり、相手国政府の保証の下、日本の官民が大型石炭火力発電所の輸出を続け、利益獲得が確実となっている一方、インドネシアの国家予算や一般市民の生活を圧迫している実態に目が向けられました。

※当日のセミナーの内容は、こちらの動画でご覧いただけます。
FFTV インドネシア・チレボン石炭火力発電の実態/JBIC日本国際協力銀行は撤退を

 

 

 

 

 

<関連省庁との会合における3名の主張・説明>

上記の活動の他、3名は来日中、丸紅とJERA(中部電力と東京電力の合弁会社)が出資するチレボン石炭火力・拡張計画の事業者に約7.3億ドルもの融資を行なうJBIC、そのJBICの監督官庁である財務省、また、経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針の日本連絡窓口(NCP)とそれぞれ会合を持ちました。

●チレボン住民の主張概要(リキ・ソニア氏)
住民からは、1号機の建設により、すでに小規模漁業や貝採取、塩づくりなど住民の生活に甚大な被害が及んでいることの他、特に、最初の訴訟を開始後、警察・軍や事業者からの反対派住民グループに対する嫌がらせや脅迫が頻繁に起き、自分たちの仲間のなかにも怖がって活動や会合に参加しなくなった住民がいるなど、人権侵害の深刻化について注意喚起がなされました。
また、JBICが自分たちの反対・懸念の声には真摯に耳を傾けず、事業者の行なう生計回復プログラムへの参加を促す発言を繰り返していることへの失望を表明。改めて、最低6ヶ月の現地調査をJBICが自ら行なうとともに、同拡張計画への融資判断の見直しを求めました。

●チレボン訴訟担当弁護士の説明概要(シャウリ・デリムンテ氏)
弁護士からは、初回の訴訟(2016年12月提訴2017年4月判決)の後から今回の訴訟に至るまでの経緯について説明がなされました。
まず、被告である西ジャワ州が4月21日に控訴。その司法手続きが続いている最中の6月に事業者が環境許認可の改訂申請。その後、司法判断を待つようにとの現地NGOの意見書(6月12日)に回答もせず、住民・NGOを2回の話し合いの場(6月16日および7月6日)にも呼ばぬまま、西ジャワ州が行政手続きを進め、新たな環境許認可を7月17日に発行―この非常に不透明なプロセスがインドネシアの法規定にも違反しているとして、12月4日にバンドン行政裁判所への提訴を行なったとの説明がありました。
また、訴状ではこの他、一度取消された許認可の改訂手続きは無効である点、前回の判決で違反と判断されたチレボン県空間計画の修正が依然必要である点、グッド・ガバナンスの原則に違反している点、そもそも環境アセスメントの分析・評価に不備がある点などの問題があげられており、今後、公判で審議が行なわれていくことになるとのことです。
今後は、バンドン行政裁判所で1月から公判が始まり、4月頃には判決が下されるとの見通しが示されました。

●住民の支援をしてきた現地NGOの説明概要(ドウィ・サウン氏)
現地NGOからは、チレボン石炭火力発電所も位置するジャワ・バリ電力網系統における電力供給過剰の状態、インドネシア国有電力会社(PLN)の債務状況の悪化と最近の電力料金の高騰、また、大気汚染基準の改訂の動きなど、インドネシア全体の視点から大型石炭火力発電所の問題点が示されました。
まず、ジャワ・バリ系統の発電設備容量は約34,000メガワット(MW)である一方、ピーク需要は約25,500MW程度ですでに供給予備率が30~40%もある現状を説明。今後、計画どおりに発電所の建設計画が進めば、向こう10年間で40~60%もの供給予備率に達するとのデータがPLNからも出されており、政府内部で電力計画の見直しが必要との見方が広まっている状況が明らかにされました。
また、民間の独立発電事業体(IPP)とのテイク・オア・ペイ条項を含む電力購買契約(PPA)の下、発電した電力を全量買取らなくてはならないPLNが深刻な債務リスクを抱えており、クロスデフォルトの可能性を懸念する財務大臣が、エネルギー鉱物資源大臣および国営企業大臣宛てに内々に電力計画等の見直しなどを提言したリーク文書(2017年9月19日)、および、エネルギー鉱物資源省・電力総局がPLN宛てにPPAの見直しを要請した文書(2017年11月3日)を出していることを紹介しました。
さらに、高い供給予備率とPPAの下、利用されない多くの余剰電力も電気料金に上乗せされているため、今年6ヶ月で料金が2倍以上になった経験を共有。JBICなど銀行団がインドネシア財務省の保証の下、PLNの債務リスクを考慮しなくてもよい一方、インドネシアの一般家庭の家計を直撃している現状に警告を発しました。
大気汚染基準については、インドネシアの基準が他国と比較して非常に緩い状況であることが示され、現在、環境林業省が改訂作業中であることが紹介されました。特に水銀は、インドネシアでこれまで一切規制がなかった状況から、水銀に関する水俣条約の内容に準じ、インドネシアでも各国と同水準の規制が適用されることがすでに決まっている点について説明がなされました。また、今年中には、すべての大気汚染物質について新しい基準が決まる見通しであり、現在、建設中のチレボンのような発電所も新たに対策を迫られる可能性もあるとの見方が示されました。
(※)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、JERA(10%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、IMECO(18.75%)、Indika Energy(6.25%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約22億米ドルにのぼり、うち8割程度について、JBIC、韓国輸銀、日本・オランダの民間銀行団が融資を供与する(JBICはうち7.31億ドル)。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められており、2021年に運転開始見込み。

関連サイト

ファクトシート3:日本の公的資金が支援する石炭火力発電所事業の概要と問題(リンク
インドネシア・チレボン石炭火力発電事業(外部リンク