STOP 日本の化石燃料融資にNO!

インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業-日本の支援事業、住民勝訴直後に憂慮すべき人権状況の悪化

<進捗:12月18日午前2時時点>
現地からの報告によれば、日本時間12月18日午前1:50(現地時間17日夜11:50)頃までに3名とも無事にインドラマユ県警から保釈されたとのことです。しかし、こうした人権侵害の再発や状況が悪化せぬよう、日本政府に引き続き適切な対応を求めていきたいと思います。

12月6日に住民勝訴の判決が出たばかりのインドネシア・インドラマユ石炭火力・拡張計画ですが、同計画に反対してきた農民3名が12月17日の夜中1時、彼らの家にやって来た地元の警察に逮捕されました。罪状はインドネシア国旗を上下逆に掲げたという「国旗侮辱罪」。しかし、隣人の証言や証拠写真によれば、それは言いがかりであり、反対派住民グループや現地NGOは、3名の早急な釈放と公正な調査を地元警察に要求しています。

(写真)農地を突っ切る形で作られているアクセス道路の工事現場で事業の中止を求める住民らの抗議活動。横断幕とともにインドネシア国旗を掲げてきた。
(左=2017年7月25日、現地NGO撮影。右=2017年10月30日、FoE Japan撮影)

住民らは事業地につづくアクセス道路の工事をくい止めようと、これまでも、事業反対の横断幕とともに、インドネシア国旗を掲げながら、身体を張って同計画の中止を求めてきました。12月14日も、農民らは同様に、継続して事業に反対している意思を見せるため、国旗と横断幕を自分たちの村に取り付けたところでした。

(写真)警察や軍、チンピラの存在にも屈せず、事業者が強行しようとするアクセス道路の工事を止めようとする農民ら。(2017年11月29日。現地からの写真)

同事業・拡張計画(1000 MW×2基)は、国際協力機構(JICA)がすでに1号機について事前調査・設計等を支援し、これから1号機建設に対する円借款を検討しようとしていますが、農地や漁場など生活の糧を奪われると、地元住民が強く反対してきました。2017年7月には、住民3名が原告となり、同計画への環境許認可が地元政府により不当に発行されたと行政裁判所に提訴。その結果、今月初めには住民の訴えが認められ、同計画への環境許認可の取消しが言い渡されたばかりでした。

今回の地元警察による反対派住民の逮捕は、住民勝訴で勢いづく反対派への嫌がらせの可能性が強いと言えます。また、こうした公権力による強硬な行為は、住民のなかに恐怖感を残し、少なからぬ住民が反対運動への参加を躊躇することにつながる可能性もあり、人権擁護の観点から大変憂慮されます。

事業に反対する住民らが、裁判所で勝訴した後に脅迫や嫌がらせを受けるといった状況は、インドラマユ県の隣のチレボン県における石炭火力・拡張計画(丸紅とJERAが出資。国際協力銀行(JBIC)が融資)でも同様に報告されています。

日本政府は、地元住民が自由に反対の声をあげることができない、つまり、表現の自由など基本的人権や適切な住民参加が確保されていない状況にある事業への支援を決してすべきではありません。資金供与をすれば、人権侵害に加担していることと同じであり、現在の人権状況に満足しているという誤った認識を相手国政府や事業者に与える恐れもあります。

日本政府はインドネシア政府に対し、日本が関与している事業地での人権侵害について強い懸念を表明するとともに、再発防止を含む、人権状況の早急な改善を求めるべきです。

以下、現地NGOのプレスリリース(和訳)です。
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2017年12月17日

気候正義のための提言チーム プレスリリース
サウィン、ナント、スクマの釈放を!!インドネシア・西ジャワ州インドラマユのムカルサリ村で生活・環境のために闘ってきた農民3名が逮捕

インドラマユ発 ― 警察による横暴かつ横柄な行為が再発しました。2017年12月17日(日)午前1:15頃、インドラマユ県警の4名の警官が(西ジャワ州インドラマユ県パトロール郡)ムカルサリ村のプロクントゥル区に来て、そこに暮らす3名の農民を逮捕。理由は、国旗侮辱罪とのことでした。3名はインドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画に反対し、自分たちの生活や環境を守るための活動に積極的に参加してきた農民です。

ムカルサリ村の農民であるサウィン、ナント、スクマの逮捕は、インドネシア国旗を上下逆に掲げたという報告が引き金となりました。

もともと、2017年12月14日(木)午後4時頃、住民らは国旗とともに、インドラマユ石炭火力発電所・拡張計画(1000 MW × 2基)の建設に反対する横断幕を取り付けていました。しかし、同拡張計画に反対する住民の行いを快く思っていない関係者から、その翌日に国旗の向きが逆になっているとの報告があったとのことです。そして、その報告が日曜未明の住民らの就寝時間帯におけるインドラマユ県警官による強制的な逮捕につながったのです。

インドラマユ県警官4名は、サウィン1名の名前が書かれた逮捕状を持ってやって来ました。しかし、警官らは他の2名の農民スクマとナントも強制的に逮捕しました。ナントの妻によれば、警官は家の扉を蹴飛ばすなど、粗野な行動をとったとのことです。こうした行為は、職務における警官らの行為が明らかに横暴かつ横柄であったことを示しています。

横断幕や国旗の取り付けを手伝った住民らによれば、彼らは国旗を正しい向きに掲げていたとのことです。また、多くの他の住民らも同様にそれを目撃していました。したがって、国旗の赤と白の向きを故意に間違えたということはまず有り得ないことです。さらに、彼らが横断幕と国旗を取り付けたばかりのときに撮った写真も証拠としてあり、それを見ると、国旗は正しい向きに取り付けられています。

今回の出来事は明らかに住民に対する中傷です。警察はまた、彼らの権利のために闘っている住民を間接的に脅迫し、黙らせようとしています。調査のために未明に強制連行するのは、まったく職業人として適切な態度とは言えません。警察は全体像を一切見ず、誤った報告のみに耳を傾けています。

以上から、私たちはインドラマユ県警察署長に対し、サウィン、ナント、スクマの早急な釈放を要求します。私たちはまた、警官らに対し、違反者の逮捕、そして、国旗の赤色と白色を逆に取り付けたという誤った報告の画策者について、公正な調査を要請します。

インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(1000 MW×2基)は、日本の国際協力機構(JICA)が支援予定ですが、2017年12月6日、バンドン行政裁判所の判決で環境許認可の取消しが言い渡されたばかりです。
連絡先:
インドネシア環境フォーラム(WALH)本部
WALHI西ジャワ
バンドン法律扶助協会
インドラマユから石炭の煙をなくすためのネットワーク(JATAYU)

(以上)

(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
2,000 MW(1,000 MW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(1,000 MW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、エンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を2013年3月に締結。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。