STOP 日本の化石燃料融資にNO!

インドラマユ住民勝訴! インドネシアで日本支援の石炭火力 ― 今年2件目の許認可取消

インドネシア西ジャワ州インドラマユで国際協力機構(JICA)が支援してきた石炭火力・拡張計画(※)ですが、12月6日(水)、地方裁判所で環境許認可の取消判決が出されました。日本の官民がインドネシアで推進する石炭火力事業は、
各地で住民の反対運動が起きていますが、環境許認可が判決により無効とされたのは、今年4月のチレボン石炭火力・拡張計画(国際協力銀行(JBIC)融資)につづき、2件目となります。

 

 

 

 

 

(写真)バンドン行政裁判所前で住民勝訴の判決を聞き、歓喜する住民ら。「Tolak JICA(JICAに抗議)」のプラカードも見られる。

インドラマユの地元では、事業者であるインドネシア国有電力会社(PLN)が、同訴訟の公判中も事業予定地につづくアクセス道路の工事を強行するなか、事業に反対する農家らが「生活の糧である農地をこれ以上潰されまい」と何度も体を張って工事の進捗を食い止めてきました。判決日にも約150名の住民が、インドラマユ県の村からバンドン市までバスで約3時間の道のりを経て、裁判所前でのアクションに参加。住民勝訴の判決に皆が歓喜しました。まさに住民の勝利です。

 

 

 

 

 

 

(写真)警察や軍、チンピラの存在にも屈せず、事業者が強行しようとするアクセス道路の工事を止めようとする農民ら。

地元の農民・漁民らは、自分たちの生活の糧である農地や漁場が奪われ、健康被害も心配されるとし、新規発電所の建設に強く反対してきました。同訴訟は、今年7月5日に地元の農民3名が原告となり、不当に環境許認可を発行したとしてインドラマユ県知事をバンドン行政裁判所で提訴。8月から公判が続けられていました。

JICAは同事業・拡張計画(1000 MW×2基)のうち、1号機について事前調査・基本設計等をすでに支援しており、今回の判決で無効を言い渡された環境許認可等も、JICAのウェブサイトに掲載。これから1号機建設のための本体借款の供与を検討しようとしています。

今後、被告であるインドラマユ県、および、PLNがジャカルタ高裁に控訴し(注:PLNはすでに12月7日、控訴することを正式に表明済み)、訴訟はつづく見込みですが、日本政府・JICAは、住民の反対・懸念の声にしっかりと耳を傾けるとともに、環境許認可の無効という相手国の司法判決を重く受け止め、同事業にこれ以上の税金を投じぬよう、賢明な対応をとるべきです。

以下、現地NGOのプレスリリース(和訳)です。
——————————————————————————
インドネシア環境フォーラム(WALHI)
プレスリリース

2017年12月8日

住民の訴えを認め、バンドン行政裁判所が環境許認可の取消判決
インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(1000 MW×2基)

バンドン行政裁判所の判事らは、2017年12月6日(水)、西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(1000 MW ×2基)の環境許認可の取消判決を言い渡しました。

同訴訟は、ムカルサリ村とその周辺村の住民らでつくる「インドラマユから石炭の煙をなくすためのネットワーク(JATAYU)」のメンバーが、計画中の石炭火力発電事業について起こしたものです。

インドネシア環境フォーラム(WALHI)西ジャワ州は、ムカルサリ村に建設予定のインドラマユ石炭火力発電事業・拡張計画(1000 MW×2基)の手続き等に不備があると分析評価していました。同拡張計画における基本的な手続き等の不備には以下のような事項が含まれます。

1.インドラマユ県知事は、訴訟対象となっている環境許認可を発行する権限を有さない。本件における環境許認可の発行は法規定、すなわち、地方行政法の第27条第(1)項および第(3)項、そして同法付属文書IのY項1番に違反する。

2.インドラマユ県知事は、環境許認可発行の権限を有さないため、環境許認可の無効が宣言されなくてはならない。また、環境許認可の発行から派生するいかなる法的結果も一切ないものと考えられる。

3.環境実行可能性決定証書(SKKLH)がないまま環境許認可が発行されたが、環境保護と管理に関する2009年法律第32号の第36条第(2)項で要件とされているとおり、「環境許認可は環境実行可能性の決定に基づき発行」されなくてはならない。

4.環境許認可は影響を受けるコミュニティーの参加なしで発行された。これは、環境保護と管理に関する2009年法律第32号の第26条第(2)項の規定に違反する。

5.法的不備や誤り、文書や情報の誤用があるために相当な欠陥を孕んでいる環境アセスメント文書に基づいて、環境許認可が発行された。たとえば、初期の環境状況、また、重要な影響予測の質・量の決定、重要な影響の全体的な評価、環境モニタリグ・管理計画についてなど、さまざまな問題が見られる。

6.環境許認可の発行は、グッド・ガバナンスの一般原則に違反する。

上述の根拠は、被告の異議を一切認めないとした判事の決定と一致しています。判事らは、法的根拠が認められないので、今回の判決を下したとしています。また、判事らは、インドラマユ県知事によって発行された許認可が県知事の権限内のものではないと見なしました。もっと正確に言えば、投資ワンドア統一サービスに関する2015年指針第15号で規定されるとおり、インドラマユ県統合投資許認可サービス局の権限であるとしました。

WALHI西ジャワ事務局長のDadan Ramdanは、インドラマユ拡張計画の環境許認可が取消されたことは住民の勝利だと述べました。主な目標は、住民の生活の場所を奪い、将来にわたって健康を脅かす石炭火力発電所をこれ以上つくらせないことです。

また、法律扶助協会(LBH)バンドンのGugun Kurniawanは気候正義のための提言チームを代表して、次のとおり述べました。「今日の判事の決定は、住民の生計手段の喪失のため、西ジャワ州で進められている大規模事業を見直すよう、ジョコ大統領を譴責するものです。」

WALHI本部のDwi Sawungは、「インドネシアで日本が支援する石炭火力発電事業が、また法的問題に直面しました。日本はインドネシアの法規定を尊重し、論争を巻き起こしているインドネシアでの石炭火力発電事業から撤退することが求められています。インドラマユの他、日本が支援するチレボン石炭火力・拡張計画も法的問題を抱えています。」と述べました。

【連絡先】
Dadan Ramdan(WALHI西ジャワ事務局長)+62 812-2264-9424
Gugun Kurniawan(法律扶助協会バンドン)+62 813-2205-2016
Dwi Sawung(WALHI本部エネルギー・都市問題担当)
+62 815-610-4606,sawung@walhi.or.id
(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業2,000 MW(1,000 MW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(1,000 MW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。
すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、エンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を2013年3月に締結。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。

(以上)