STOP 日本の化石燃料融資にNO!

JBIC審査役が本格調査を開始 ―インドネシア・チレボン石炭火力発電事業による 生活被害に苦しむ住民の異議申立て―(2017/2/8)

国際協力銀行(JBIC。日本政府100%出資)が融資を供与したインドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業(※1)について、2月7日、現地住民3名は、JBIC「環境ガイドライン担当審査役」(以下、審査役)から異議申立手続の正式な開始を知らせる通知書(2017年2月6日付)を受領しました。住民らは同事業に関する異議申立書を審査役に提出し、既存の発電所1号機(660 MW。丸紅出資)によって生計手段への深刻な影響を受けてきたと主張していました。

20161110_%e3%83%81%e3%83%ac%e3%83%9c%e3%83%b3_%e4%bd%8f%e6%b0%91jbic%e7%95%b0%e8%ad%b0%e7%94%b3%e7%ab%8b%e3%81%a6 20161110_%e3%83%81%e3%83%ac%e3%83%9c%e3%83%b3_%e4%bd%8f%e6%b0%91jbic%e7%95%b0%e8%ad%b0%e7%94%b3%e7%ab%8b%e3%81%a6%ef%bd%b0photo2

今後、審査役は約3ヶ月間、『環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン』(以下、ガイドライン)の遵守・不遵守にかかる事実等について本格的な調査を行ない、JBIC経営会議に報告書を提出することになります。

参照: JBICウェブサイト「異議申立の受付・手続進捗状況」(リンク

2016年11月10日、チレボン石炭火力発電事業の影響を受けてきたコミュニティーの連合であるラペル(Rapel:Rakyat Penyelamat Lingkungan。住民環境救助)を代表し、住民3名がJBICジャカルタ事務所にて異議申立書を提出しました。同異議申立書で住民らは、「1号機の建設によって沿岸地域の環境が破壊されたため、漁獲量が減少したり、貝が採れなくなった。」「1号機の石炭貯蔵場から塩田に飛来してくるばい塵のため、塩の質が落ちた。」など、さまざまな収入源に依存できた同事業の以前に比べ、生活が困窮化している状況を訴えています。

JBICはこれまで、こうした訴えを住民のレターなどで知らされてきましたが、「同事業に問題は見られない」との姿勢を繰り返し示してきました。この点について、住民は同異議申立書のなかで、JBICがガイドラインに規定されている「(JBIC)自らの調査を実施」することもなく、また、事業者も「具体的な指摘事項の精査」を「透明でアカウンタブルなプロセスにより」行なっていないとして、ガイドラインの違反を指摘しています。また、JBICの融資がなければ、同事業の推進は難しかったとし、発電所1号機が引き起こしたコミュニティーへの悪影響について、JBICが融資者としての責任をとるべきであると主張しています。

参照: 2016年11月10日プレスリリース(リンク

住民らは、さらなる現場での被害を食い止めるためにも、1号機の運転中止と計画中の2号機(1,000 MW。丸紅、JERA出資)の建設中止を事業者に要請するとともに、2号機に対する融資供与の検討を早急に止めるようJBICに求めてきました。チレボン石炭火力発電所2号機は、環境許認可の違法性が指摘されており、2016年12月には異なる住民らによる行政訴訟も起こされています。現在、同訴訟に関する公判が依然続いている状況です。

参照: 2017年1月11日プレスリリース(リンク

また、チレボン2号機は、気候変動に悪影響をもたらす石炭を燃料とするため、同発電所への融資を検討中の日本、フランス、オランダの銀行団に対し、早急に融資検討を止めるよう求める声が国際市民社会からもあげられています。

参照: 2016年11月17日プレスリリース(リンク

JBIC審査役は、異議申立書のなかで指摘されているような各住民の生活悪化の状況を理解するため、同事業の影響を受ける地域を直接訪問し、現場の状況を注意深く調査するとともに、小規模漁民や製塩従事者、農民を含む現地住民の声にしっかりと耳を傾けるべきです。また、審査役は、影響を受ける住民の生活悪化を長引かせてきた一因とも考えられるガイドラインの不遵守に関し、独立かつ徹底した調査を確実に行ない、JBICの実施面に関する確固とした提言を行なうべきです。

(※1)インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業
1号機は、丸紅(32.5%)、韓国中部電力(27.5%)、Samtan(20%)、Indika Energy(20%)の出資するチレボン・エレクトリック・パワー社(CEP)がインドネシア国有電力会社(PLN)との間で30 年にわたる電力売買契約(PPA)を締結。総事業費は約8.5億米ドルで、融資総額5.95億ドルのうちJBICが2.14億ドルを融資した。2012年に商業運転が開始されている。2号機は、丸紅(35%)、Indika Energy(25%)、Samtan(20%)、Komipo(10%)、JERA(10%)の出資するチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)がPLNとの間で25年にわたるPPAを締結。総事業費は約20億米ドルにのぼり、うち8割程度について、現在、JBIC、韓国輸銀、日本・フランスの民間銀行団が融資を検討中。現場では本格着工に向け、アクセス道路の整備や土地造成作業などが進められている。2020年に運転開始見込み。

本件に関するお問い合せ

WALHI(FoEインドネシア)(担当:Sawung)
インドネシア携帯:+62 8156104606  E-mail:sawung@walhi.or.id WALHI西ジャワ(担当:Wahyu Widianto)
インドネシア携帯:+62 813 204 230 76 E-mail:wahyuwidianto153@gmail.com 国際環境NGO FoE Japan(担当:波多江)
ミャンマー携帯:+95 997 245 6434  E-mail:hatae@foejapan.org

関連情報

「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインに基づく異議申立手続要綱等」について(リンク
FoEプレスリリース(リンク