パリ協定下では,2030年に石炭火力利用ゼロが要請される! ~Climate Analyticsによる新レポート

パリ協定下では,2030年に石炭火力利用ゼロが要請される!
~Climate Analyticsによる新レポート

http://climateanalytics.org/latest/paris-agreement-has-put-a-date-on-the-end-of-coal-fired-power

climateanalytics report 2016COP22期間中の2016年11月14日に、火力発電における石炭の利用全般の期限を迫るレポート『石炭火力発電を追い詰めるパリ協定 -Implications of Paris Agreement for coal use in the power sector -』が気候変動政策の分析を行う研究機関であるClimate Analyticsから発表されました。

 

 

 

 

石炭火力を段階的にゼロに

パリ協定が目標とする気温上昇を1.5〜2℃未満に抑えるということは、発電分野における石炭の利用にどのような意味を持つのでしょうか。Climate Analyticsは,エネルギーシステムモデルを使った調査・分析を行った結果から、最も費用対効果の高い方法でパリ協定の約束を達成するためには、日本を含む豊かなOECD諸国は2030年までに、中国は2040年までに、また、その他の国々も含め世界全体で2050年までに石炭火力をゼロにしなければならないと指摘しています。
またレポートでは、2050年までに石炭火力をゼロにする必要性がある中で、現在多数の運転中および建設中の石炭火力発電案件があり,それらからの累積排出量(発電量2308MW、排出量314Gt-CO2)だけでも既に世界の炭素予算(Carbon Budget)よりも2.5倍も高くなると推定されています。それだけでなく、日本も含めた世界各地でさらに1000基以上の新設建設の計画もあり、これらはパリ協定と相反することはもちろん、経済的かつ社会的に大きなリスクだと指摘しています。

レポートの要点(Key Findingsより)

  • パリ協定の気温上昇を1.5〜2℃未満に抑えるという長期目標を達成するためには、稼働中および計画中と状況にかかわらず、全ての国はこれからの数十年で石炭火力発電所をゼロにしなければならない。
  • 最も費用対効果の高い方法で石炭火力発電を段階的にゼロにしていくには、OECD諸国が2030年までに、中国は2040年までに、その他の新興経済国を含む国々も2050年までに石炭の利用をゼロにする必要がある。
  • OECD諸国とEUは早々に脱石炭政策を進め、世界の脱石炭政策をリードするとともに、公平な視点から開発地域からの排出削減に寄与すべく、開発途上地域おける軽減対策のために資金を回すべきである。
  • 世界各国の石炭火力発電所計画がこのまま進めば、パリ協定に反するだけでなく、経済的かつ社会的なリスクを負う。
  • 石炭の利用が現在計画されているように長期化すれば、今世紀後半のネガティブエミッションへの依存度が高まる。ネガティブエミッション技術にかかる様々な課題とリスクに備えて、世界各国が積極的かつ一致団結して行動することが求められている。
  • 既に石炭に代わる再生可能エネルギーの開発が進み、排出量削減だけでなく、クリーンな空気、エネルギーの安全性、独立性とアクセスの利便性など多くのメリットにより普及が拡大している。
  • 石炭は大気汚染の主要原因であり、露天掘り炭鉱は環境を破壊し、石炭輸入国は貿易バランスにおいて悪影響を受けるなどの問題もあり、実際に2015年の石炭生産は減少した。
  • 世界で石炭火力が建設され続けたとしても、世界の国々における石炭輸送量は減少するため、新規事業への投資意欲を減じ、会社の信用にも影響を与え、結果として負債が増え、石炭への投資は割の合わないものとなる。
  • 化石燃料への補助金を止め、再生可能エネルギーやエネルギー効率化を支援することで低炭素経済を構築する新たな選択肢を提供し、政府の気候変動対策を強化することは、同時に、座礁資産化のリスクを防ぎ、大口機関投資家の低炭素経済への関与を増やし、石炭に投資する危険から引き離すことになる。

日本の現状と果たすべき責任は

レポートでは、OECD諸国は率先して2030年までに石炭からの段階的撤退を進めるべきと指摘しています。日本はOECDの一員として2030年までに石炭火力ゼロを目指すべきですが、そのために残された時間はわずか13年しかありません。にもかかわらず、多数の既設石炭火力発電所に加え、48基もの新設計画(既に稼働開始した1基を含む)を抱えています。このパリ協定と全く矛盾した方針のままでいいはずはありません。
このレポートのメッセージは、日本でこそ真剣に向き合い,既設・新規ともの脱石炭へ舵を切ることが不可欠です。

参考

2016年11月14日、COP22(マラケシュ)開催中に行われた本レポートの発表プレスコンフェレンス『Implications of Paris Agreement for Coal Use 』は、Bill Hare(Climate Analytics)、Kaisa Kosonen (グリーンピース・インターナショナル)、Steve Herz (シエラクラブ)、Alvin Lin (NRDC:自然資源保護協議会)が列席のもとウェブ配信されました。

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