西ジャワ州インドラマユ石炭火力: 土地収用で合意強要 ― JICAに人権侵害の回避に向けた対応を求める緊急要請書提出(2016年12月29日)

インドラマユ石炭火力発電事業:JICAに人権侵害の回避に向けた対応を求める緊急要請書提出

現在、国際協力機構(JICA)の円借款供与が検討されている西ジャワ州インドラマユ石炭火力拡張計画(1,000MW)に関し、土地収用対象の地権者が土地売却の合意を強要されているケースがあるとの報告が現地から寄せられています。土地収用プロセスにおける軍・警察関係者の関与も確認されています。

現場でのこうした深刻な事態を受け、本日、FoE JapanからJICAに対し、土地収用プロセスにおける地権者への合意の強要や人権侵害を回避するよう、また、軍・警察関係者の関与を一切停止するよう、インドネシア側に早急に申し入れるよう求める緊急要請を行ないました。

以下、緊急要請書の本文です。(PDFリンク
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2016年12月29日

国際協力機構
理事長 北岡 伸一 様

インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
土地収用プロセスにおける人権侵害に関する緊急要請書

国際環境NGO FoE Japan

 国際協力機構(JICA)が2013年にエンジニアリング・サービス(E/S)借款を供与し、現在、本体工事開始のための「用地取得及び非自発的住民移転に係る計画策定支援」を行なっているインドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業に関し、土地収用対象の地権者が土地売却の合意を強要されているケースがあるとの報告が現地の住民ネットワーク、および、NGOより寄せられております。そうした土地収用プロセスにおける地元の軍・警察関係者の存在も継続して確認されているとのことです。私たちは、貴機構が『JICA環境社会配慮ガイドライン』(以下、ガイドライン)に沿って、「相手国等による適切な環境社会配慮の確保の支援」を行なっているにもかかわらず、こうした深刻な人権侵害が起きているとの現地からの報告について深い憂慮と遺憾の意を示すとともに、インドネシア政府、および、事業実施主体者であるインドネシア国有電力会社(PLN)に対し、土地収用プロセスにおける地権者への合意の強要や人権侵害の回避を貴機構が早急に申し入れるよう強く要請します。

私たちはこれまで本事業に関し、貴機構担当部との会合を複数回持ち、同事業の影響を受ける住民の意見・懸念やJICAガイドラインの遵守について、意見交換をしてきました。そのなかで、私たちから貴機構に強く指摘してきた現場での問題事項の一つに同事業に反対している住民や土地売却を拒否している地権者への人権侵害がありました。土地収用に係る住民協議会において地元の軍・警察関係者の同席が常態化しており、また、同事業に反対する住民ネットワークが村内や近隣都市などで抗議活動等を行なう前後に、地元の軍・警察関係者が住民リーダー等の各家を訪問し、同事業に反対せぬよう忠告・脅迫を行なうなどの状況がみられたためです。こうした状況は、住民の同事業に関する自由な意思表示や適切な参加の妨げとなる可能性は否めません。

これに対し、貴機構は今年11月29日の私たちとの会合のなかで、PLNに対し改善を求めた結果、現在は住民協議が公正なプロセスで進められており、また、今後も進められていく、さらに、軍・警察関係者の住民協議会への同席もなくなっているとの認識を示していました。地元の軍・警察関係者による住民リーダーの各家の訪問などの脅迫行為については、そうしたことがないか確認するとしていました。

しかし、現地の住民ネットワークJATAYU、および、彼らを支援している現地NGOインドネシア環境フォーラム(WALHI)西ジャワ州によれば、12月21~23日にかけて現地で行なわれた地権者向け協議会の場において、軍・警察関係者の存在がみられ、また、一方的に土地補償評価額が提示されたとのことです。同補償額に不満である地権者は合意を拒否し退室しようとしましたが、退室を許されず、約1時間の議論の末に、少なからぬ地権者が同補償額での合意書面に署名せざるを得なかったとのことです。

また、いかなる補償額でも土地売却を拒否すると決めている地権者のなかには、上記の協議会に参加していなかった地権者もいましたが、12月22日の夜間の時間帯に、パトロール郡ムカルサリ村のそうした地権者ら複数の各家をPLN、地元の軍・警察関係者が訪問しにきたとのことです。(注1)こうした行為について、土地売却を拒否している地権者らは脅威に感じており、精神的な圧力となっています。

このように、同事業に係る土地収用プロセスにおいて強要・脅迫など、深刻な人権侵害が起きている現状から、貴機構が認識しているように同事業が現在「公正なプロセスで進められている」とは言い難い状況にあります。このままでは、JICAガイドラインの規定する「コミュニティーの適切な参加の促進」は図られることもなく、強制退去のような抑圧的な形で同事業が進められてしまうことも危惧されます。

したがって、私たちは貴機構に以下の点を強く要請します。

i. インドネシア政府、および、PLNに対し、土地収用プロセスにおける地権者への合意の強要や人権侵害を回避するよう早急に申し入れること。また、今後、土地収用プロセス、および、同事業に係るいかなる住民協議プロセス等においても、軍・警察関係者の関与の一切の停止と住民の自由な意思表示、および、適切な参加を確保するよう早急に申し入れること。

ii. 上述した地権者への合意の強要、および、脅迫等のケースの詳細に関し、事実確認の精査を早急に行なうこと。精査にあたっては、PLN、および、インドネシア政府関連当局に対する確認のみでなく、人権侵害の当事者である住民、および、第三者への確認も行なうこと。また、精査の結果、強要・脅迫等の下で地権者が合意をしたことが明らかになったケースについては、当該合意について見直しを行ない、十分かつ適切な再協議を実施するよう、PLNに申し入れること。

iii. 上記の2点について、PLN、および、インドネシア政府関連当局の対応に改善が見られない場合には、同事業の本体工事への融資検討を中止すること。

住民ネットワークJATAYUからは、今月12月15日付で貴機構に対するレターが提出されており(「JICAは住民の反対の声を聞き、支援しないで!」 住民がレター提出)、住民の意見・懸念を理解するためにも、貴機構が直接現場を訪問し、住民への直接の聞き取りを行なうことが要望されています。貴機構は地元住民の懸念の声に真摯に耳を傾け、本事業において人権侵害を繰り返し起こしているインドネシア政府側に対し、毅然とした態度で臨むべきです。

本緊急要請書にご配慮いただき、迅速にご対応いただけるよう、よろしくお願い致します。

以上

Cc:  外務大臣 岸田 文雄 様
JICA 環境社会配慮助言委員会 各委員

連絡先

国際環境NGO FoE Japan(担当:波多江秀枝)
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986

動画(注1)

12月22日夜8時頃(インドネシア現地時間)にムカルサリ村で住民が撮影した現場の状況(動画 インドネシア語) 。
同日は、土地の売却を拒否している地権者の呼びかけに応じて、同村の住民リーダーらが駆けつけることができ、PLN等への対応を行なったが、土地売却への合意取得を強硬に進めようとしているPLN側による同様の各戸訪問が再び起こることが懸念される。

関連情報

詳しくは、JBICが支援する石炭火力発電所事業の概要と問題 第2部 各地の事業の問題及び地元住民・NGO等の取り組みーにインドラマユ石炭火力発電所としてファクトシートを掲載していますので、ご参照ください。