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エネルギー基本計画見直し大詰め:石炭は依然”ベースロード電源”

 2017年8月から、日本のエネルギーの中長期的な方向性を示す「エネルギー基本計画」の見直しについて、経済産業省の審議会「基本政策分科会」で検討されてきました。政府は今年2018年の夏には閣議決定するとし、5月19日、基本政策分科会でまとめた「第5次エネルギー基本計画(案)」に対するパブリックコメントも始まりました。

 エネルギー基本計画は、およそ3年毎に見直しを行うこととされており、前回2014年に閣議決定されてから4年が過ぎました。この間、パリ協定が2015年に採択され、16年に発効していますので、日本で脱石炭をめざし、再生可能エネルギー中心の未来に舵切りする大きなチャンスでした。しかし、計画(案)では、現行の計画を踏襲し、特に石炭については、めまぐるしく世界情勢が変わっているにもかかわらず、依然として「ベースロード電源」として位置づけられています。多くのNGOや市民がこの計画に対して反対の声をあげつづけていますが、そうした意見は全く反映されていません。「第5次エネルギー基本計画(案)」は以下のように問題だらけです。パブリックコメントは6月17日(日)までとなっています。

 

2030年電源構成の達成を目指す

 「日本は資源に乏しい」という点を強調する日本政府の根幹には、多様な電源をバランスよく利用することで海外に依存するリスクを減らそうという考えがあります。現在、2030年に向けた電源構成比率(エネルギーミックス)は、石炭26%、LNG27%、原子力22~20%、そして再生可能エネルギー(再エネ)が22~24%)となっています。

 2011年の福島での原子力発電所の事故を受け、未だ多くの人たちが避難生活を強いられる中、原発事故に対する反省は全くみられません。それどころか非現実的だとされた原子力20~22%も見直さずにこれを「実現するため」の計画案としてまとめられました。また、再エネについては、世界的にコスト低下の流れが続いていることもあり、はじめて「主力電源化」を目指すという文言が入ったものの、全体を読むと、長期的にみても「低炭素電源」としては原子力に依存する方向性を強くにじませる内容となりました。以下のグラフにはその側面が強く示されていると言えるでしょう。本気で再エネを主力電源にする気があるとは思えません。
出典:資源エネルギー庁第5次エネルギー基本計画案概要資料より

<http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/pdf/basic_policy_subcommittee_002_01.pdf>

 

石炭は依然としてベースロード電源

 全体のエネルギーミックスが変わっていないということは、石炭の比率もそのまま26%を維持しています。相変わらず、「高効率」といわれる技術を用いて「環境負荷を低減する」という誤解を招く表現が用いられています。しかも、「長期を展望した環境負荷を低減する」として、長期的に使い続ける方向まで案には加筆されています。”最新鋭”とされる石炭火力発電の技術は石炭ガス化複合発電(IGCC)ですら、CO2排出量は石油火力よりも多く、高効率天然ガス火力発電と比較すると約2倍となります。 また、計画案では、「熱量あたりの単価も化石燃料の中で最も安い」という位置付けもかわっていませんが、今はすでにLNGの価格が低下し、石炭が上回っていることから、現状を反映しているとは言えません。

 過去数年の間で、石炭を巡る世界情勢は大きく変化しました。投資の引き揚げ、すなわちダイベストメントの動きは更に活発になり、石炭事業はリスクが高まっています。また政策面でも、先進諸国の中には脱石炭を宣言する国もでてきました。これらの背景には、パリ協定の発効や、代替案となる再エネ技術の飛躍的進歩などがあります。このように世界は活発に脱炭素社会へ向けて動き出しているにもかかわらず、日本は石炭に固執しようとしています。石炭が座礁資産になるというリスクが顕在化する今、これに固執することはむしろ日本の産業界全体にとっても悪影響をもたらすといえるでしょう。

 

水素利用推進の背景に石炭

 今回の「第5次エネルギー基本計画(案)」では、これまで以上に「水素」があちこちにちりばめられており、実に131箇所に登場します。CO2を排出しない未来の選択肢として注目されている水素技術を革新技術として強調しているのですが、水素の原料にも石炭を含む化石燃料が用いられています。

 水素利用については、既にガソリン車の代わりとしてFCV(燃料電池自動車)が実用化されています。現在、さらなる技術開発が進められており、2030年頃には、国内の水素需要に応じた商用サプライチェーンの構築を目指すとしています。しかし、その水素利用には、最も低品質な石炭である褐炭をガス化し水素を製造、その過程で発生するCO2をCCS(回収・貯留)することで“CO2フリー“水素の利用を推進する計画が含まれています。化石燃料由来の水素であるにもかかわらず、利用する際にはCO2を排出しないため「環境に優しい」エネルギーとして売り出そうとしています。この水素製造プロセスは、褐炭の輸入元であるオーストラリアなどが有望視されています。このような化石燃料由来の水素は、脱炭素技術とは言えません。

 政府はこのような化石燃料由来の水素技術を『水素基本戦略』のなかに盛り込み、官民挙げて開発に取り組んでいます。第5次エネルギー基本計画の中でも「あらゆる選択肢」の一つとして水素が掲げられています。また、再生可能エネルギーについても火力に依存しているとし、水素・蓄電池と組み合わせることで脱炭素化電源としています。わざわざ、再エネのコストを押し上げるようなことをする必要性はありません。

 

実現にはほど遠いCO2対策技術

 褐炭からの水素製造の際に、また国内の石炭火力発電所を稼働する際に、それらから排出される大量のCO2はどうするのかという問題は避けられない問題です。これに対して政府は2つの技術を検討しています。一つは、CO2回収貯留技術(CCS)です。この技術は、排出されるCO2を回収し、地中の奥深くに貯留する技術です。もう一つは、CO2回収・有効利用・貯留(CCUS)です。CCSのように貯留するだけではなく、発生したCO2を別の形で利用するための技術です。例えば、化学品の生産や、CO2を燃料に変換する藻の育成によるバイオ燃料としての利用が考えられています。これらは今後、研究開発が期待されていますが、課題もあります。一つはコストの面です。新技術の導入には莫大な初期投資が必要となり、わたしたちの税金からも一部支出されています。もう一つは、技術的な問題です。仮に地中に貯留できたとしても、その量は限られます。また、何か起きて地中から放出されたときに一気に温暖化が進むリスクを伴うといった点からも大きな課題が残ります。法規制の面でも整備を進めていかなくてはいけません。さらには、地震大国日本において、地中にCO2を安定的に貯留することができるのでしょうか。国民からの理解を得るまでには時間がかかるといえるでしょう。このように、実用化までに課題が山積しているCCSの開発を免罪符に、石炭火力の利用推進を国内外で行う姿勢には大きな問題があります。パリ協定のもと排出ゼロが求められているなかで、削減策がなおざりになってしまう懸念があります。

これからのエネルギー政策

 今回の見直し案の中で、再エネの主力電源化を明記したことは一つのステップと言えます。しかし、主力電源化とは100%を意味しているのでしょうか。具体的に数値として何%を目指すのか書かれていません。これだけ国内外の情勢が大きく動いているにもかかわらず、エネルギーミックスに修正が加えられないことは、先見性のない判断と言わざるを得ないでしょう。世界の流れからも国民世論からもかけ離れたこの判断が「見直し案」として閣議決定されてしまう可能性があります。

 また、エネルギーについての議論の場では国内に化石資源が少ないことが事あるごとに取り上げられています。それにより、あたかも石炭の利用は必然であるかのような表現が随所に見られます。しかし、地域分散型の小規模な再エネという選択肢が広がっていることを考えると、資源の有無だけではなく制度的な問題とも向き合っていかなくてはいけないことは明らかです。「資源に乏しい」ことが石炭をはじめとした環境負荷の高い電源に頼る言い訳にはなりえません。エネルギーの地産地消を政策面からも支援していく体制を敷く必要があるといえるでしょう。

 エネルギー基本計画では原発・石炭依存型の社会からの脱却をかかげ、省エネルギーや再生可能エネルギーへとダイナミックに転換する方向性が示されるべきです。そして最もCO2の排出が大きい石炭については、早急に利用停止を明示すべきでしょう。現状のままでは、パリ協定で定められた2℃未満目標はおろか、政府自身が掲げている温室効果ガス80%削減の目標すらも達成できない状況に自らを追いやってしまいます。締約国である以上、そして地球を共有する一国家である以上、石炭からは撤退するという責任ある行動を取るべきです。その代替案として、高い再エネ導入目標を具体的に定め利用拡大に向け尽力していく必要があります。

 現在、国内の石炭火力発電所計画の大半が、「エネルギー基本計画」において石炭がベースロード電源に位置づけられていることや、エネルギーミックスで26%と示されていることを根拠に計画が進んでいます。すなわち、エネルギー基本計画における石炭の位置づけは石炭計画を進める事業者にインセンティブを与えてしまっているといえるでしょう。石炭事業が際限なく進められている日本の現状を根幹から変えていくためには、エネルギー基本計画を変える必要が有るのです。現在実施中のパブリックコメントは、国民の意見を政府に伝えるチャンスです。またこの見直し期間を機に、周りの人々ともエネルギーについて考え議論する時間をもち、わたしたちのエネルギーの未来について考えてみましょう。

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