Don’t go back to the 石炭〜石炭火力発電に反対 |石炭発電|石炭火力発電|反原発

神戸製鋼の石炭火力増設計画 住民らに情報を秘匿?問われる説明姿勢

2017年、神戸製鋼の不正問題が日本の産業界を揺るがしたことは、記憶に新しい。同社の品質検査データ改ざん問題は、製品だけにとどまらず、神戸市灘区に建設を計画している石炭火力発電所の環境影響評価(環境アセスメント)にも及んだ。兵庫県は、一連の不正問題を受け、審査中であった「準備書」について、データの改ざん等の不正行為がないのか、大気汚染物質の排出予測データなどの再検証を行うことを決定し、10月16日に予定されていた環境影響評価審査会の部会が一時延期された(10月11日発表)。その後、12月14日に井戸敏三知事は定例の記者会見において、兵庫県が神戸市と連携して進めていた検証作業について「提出された基礎データに不正はなかった」と見通しを述べた。これを受け、12月28日には、審査の再開へ向け、兵庫県環境影響評価審査会総会が開かれ、一連の検証作業について委員に説明が行われた。しかし、検証は十分とは言えるものではなかった。検証は第三者の事業者が行うのではなく、神戸製鋼社内の環境防災部を事務局とする、コベルコ科研をはじめとした従前の事業者らによる「自主検証」であった。内容も、実際の測定値からの転記ミスや意図的な誤転記があったかどうかの検証にとどまっており、第三者による検証は、検証体制のみに対する評価であり極めて限定的なものであった。環境測定を遡って証明することはほぼ不可能であることから、地元団体からは、アセスメントのやり直しを求める声明が出された[1] 。事業者の社会的信頼が失墜している中で、従前の事業者を中心とする検証体制については、兵庫県環境影響評価審査会委員からも疑問の声があがっている。

■ 住宅地に建設される石炭火力発電所

神戸製鋼が進めている製鉄所敷地内(高炉跡地)に石炭火力発電所を建設する計画に対し、地域住民および市民団体などによる反対運動が続いている。2021年度の商業運転開始を目指して増設される発電所の規模は130万kW(65万kW×2基)、現在稼働中(70万kW×2基)のものと合わせれば270万kW(計4基)におよぶ[2] 。建設地は住宅地から400メートル程度しか離れておらず、1キロ圏内には住宅だけでなく学校などの公共施設がひしめいている。しかし、問題は立地だけにとどまらない。神戸製鋼の説明姿勢にも問題があった。

2017年夏に開かれたアセスメントに基づく住民説明会において、住民らが大気汚染物質の濃度ではなく、総排出量の増減に関する説明を求めたのに対し、神戸製鋼は4回の説明会全てで回答を拒み続けた。その後、住民らの要請を受けた神戸市環境影響評価審査会の委員が資料提出要請をしたことにより、やっと神戸製鋼から大気汚染物質の総排出量の変化が開示された。その結果は、石炭火力発電所の増設により「総排出量が大幅に増える」可能性があることが示されており、「周辺への環境影響を低減する」という従来の説明と大きく食い違うものだった。こうした環境影響への情報を秘匿したとも疑われる説明姿勢に、地元住民らは不信感を抱いている。昨年8月20日に開催された、神戸市主催の公聴会では、39人の公述人全員が、環境悪化が強く懸念されるとして、計画反対を表明している。

周辺は、大気汚染公害に長年悩まされた地域であり、いまだに環境回復の途上にある。そうした地域に、大気への環境影響が大きい石炭火力発電所を建設することについて、日増しに懸念の声が広がっている。なお、同社は2006年にも製鉄所から排出される煤煙の測定データを改ざんしたことがあり、数十年に渡って住民らの信頼を裏切り続けていたことから、徹底した不正検証を望む声は当然である。

■いまどき石炭を推進するのは日本だけ

石炭火力発電所は、汚染物質だけではなく、二酸化炭素排出源としても問題がある。石炭の二酸化炭素排出量はLNG(天然ガス)と比べて約2倍。パリ協定の締結以降、世界中で二酸化炭素排出量を削減する策を模索し、多くの先進国は石炭火力発電から撤退を表明している。脱石炭に向かう潮流の中、いまだに石炭火力を国内外において推進しているのは日本だけであり、COP23においても厳しく糾弾された。中川環境大臣も就任当初から「厳しい対応をする」と意見表明している。神鋼は、こうした批判をかわそうとしたのか、審査会における議論が終盤に差し掛かった2017年9月に突然、追加の温暖化対策として下水汚泥の混焼(バイオマス扱い)や、水素供給の実施を発表した。しかし、この変更についても住民への説明が行われていない。さらに、発電所からのCO2総排出量692万トンに対して1,200トン(0.017%)の削減と限定的な効果に過ぎず、このような施策を温暖化対策と呼ぶことはできない。

■公害調停に乗り出した住民

これまでの説明姿勢、周辺環境の悪化を懸念する住民の不安は不正問題でさらに増幅された。住民や環境団体、研究者によって構成される「神戸の石炭火力発電を考える会」は、2017年夏から開始された環境影響評価(環境アセス)の準備書1,400ページを読み解き、兵庫県・神戸市・芦屋市に対して問題提起を行ってきたほか、住民向けの学習会を重ねてきた。その結果、準備書に対する意見の数は1,000を超えた。また、同会は地元住民らに、公害紛争処理法に基づく公害調停を呼び掛け、申請人の募集を開始。2017年12月14日に神戸神鋼およびコベルコパワー神戸、売電先の関西電力の三者を相手取った公害調停を兵庫県公害審査会に申し立てた。第一次申請人として255人。現在、第二次申請人を募集している。調停においては、大気汚染や温排水による海への影響、温暖化対策への影響を中心に、掛かる資料の公開とともに環境アセスのやり直しを求めている。しかし、公害調停は相手側が話し合いに応じない可能性もある。住民側は、神戸製鋼が話し合いに応じない場合、発電所の建設や運転の差し止め訴訟も検討すると強い姿勢を示している。国内の計画において、法的手段による計画反対の訴えは、仙台の住民グループが起こしたものに続く2例目となる。

■今後の行方に注視

兵庫県・神戸市におけるデータ検証結果の報告が1月中に行われ、県主催の公聴会が2月3日に芦屋市で開催される。公聴会での住民意見はとりまとめられ、兵庫県知事意見の意見に反映される予定となっている。神戸製鋼は、地元有力企業として住民らの訴えにどのように対応するのか。住民らの厳しい視線は同社だけでなく、関係自治体の対応にも注がれている。

注釈

  1. https://kobesekitan.jimdo.com/press-release2017-12-28/
  2. 現在稼働中の発電所の建設に際しても、住民らは周辺環境の悪化が懸念されることから、反対の声があがっていた。

 

参考

神戸の石炭火力発電を考える会ホームページ(リンク
神戸市(法対象事業)神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画に係る環境影響評価手続(リンク